オーナーとして最も経済的に頭を悩ませるのが「空室」です。
「空室が少ない=入居率が高い(稼働率)」ということから逆算すると、なるべく満室期間を増やして、入居率を上げていくことがオーナーの共通目標です。
では、オーナーのパートナーである賃貸管理会社によって入居率は変わるのでしょうか?
まずは「入居率」という考え方からみていきましょう。
入居率(稼働率)の計算方法は?
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基本の計算式は「1-(空室戸数÷管理戸数)」です。
例えば、「1-(空室10戸÷管理100戸)=0.9」となりますので、入居率は90%です。
「〇年〇月〇日時点の入居率」であればこの計算で合っています。
一方で、その時点が「最も満室に近い時点」と「最も空室の多い時点」では全く異なる結果となります。
そのため、本来なら「(空室10戸÷管理100戸)」を「空室総日数÷(管理戸数×365日)」とし、年間平均で計算しなければ適切な入居率は計算できません。
例えば、空室10戸が全て30日間だった場合は、以下となります。
B:管理100戸×365日=36500日
→「1-(300日÷36500日)≒0.9918」
となりますので、入居率は99.18%です。
余談ですが、この「戸数」は住居や店舗、事務所等を指します。
しかし、母数を増やすために管理戸数に駐車場やバイク置場なども含めているケースもあります。
空室期間の控除とは?
基本の計算式はどの不動産会社も同じですが、実は「計算根拠」が全く異なります。
そのうちの代表的なものが「空室期間の控除」です。
品川区を対応している大手管理会社の例を紹介します。
①株式会社クレアスレント
「入居率は30日以上の空室を元に算出」と記載があります。
②株式会社日本財託
「入居者が退去し内装工事が終わった段階で空室」と記載があります。
③株式会社フュディアルクリエーション
「14日以上の空室を元に算出」「竣工後3ヵ月以内の新築物件は対象としておりません」と記載があります。
つまり、入居率の計算には決まったルールがなく、各社が自由に計算しているのが実情です。
これらは一例ですが、実際には控除期間や計算式を明示していない場合が多いです。
その場合は、かなりの控除期間が隠れている可能性も考えられます。
空室期間とは「いつまで」なのか?
控除期間は空室を「”いつから”とするのか」という内容でしたが、本当に着目したいのは「”いつまで”なのか」です。
通常であれば、「空室期間の開始日」から「契約開始日(賃料発生日)」までを空室期間とします。
しかし、「成約日(契約締結日)」までを空室期間としているケースもあります。
成約日から契約開始日まで1か月以上の期間があるケースも考えられるので、適切な計算結果とはなりません。
残念ながら、そこまで明確にしている例はないため、入居率はあくまで参考値に過ぎません。
弊社の実際の入居率

では、実際に弊社の実際の実績をもとに、計算式が異なるとどのくらい差異が生まれるか見ていきましょう。
弊社では4つの計算式を公表しています。
会社概要
2025年8月から2026年7月までの年間実績(事業年度)では、以下のようになります。
①解約日~契約開始日:98.22%
解約日の翌日から契約開始日(賃料発生日)までで、何の控除もしないと「98.22%」となります。
②解約日~契約開始日:98.87%
次に、フルリフォームを行うと数か月を要しますので、その期間のみ控除しています。
一方で、原状回復の工事期間は含んでいますので、その場合は「98.87%」となります。
なお、この場合の平均空室期間は「39.5日」となります。
③募集開始日から契約開始日:99.07%
弊社では、すぐに内見できるコンディションであれば退去直後に募集を開始します。
しかし、クリーニングが終わった後でないと内見時の印象が良くない場合は工事直後に募集を開始します。
そのように、状況により「募集開始日」を起点にすると「99.07%」となります。
この場合の平均空室期間は「32.5日」となります。
④募集開始日から成約日:99.57%
しかし、終点を「成約日(契約締結日)」に前倒しすると、「99.57%」と大幅に上昇し、平均「14.9日」となります。
上記のまとめ
上記をまとめると、以下のようになります。
①解約日~契約開始日:98.22%
②解約日~契約開始日:98.87%(39.5日/平均)
※フルリフォーム期間のみ除き、原状回復工事期間は含む
③募集開始日から契約開始日:99.07%(32.5日/平均)
④募集開始日から成約日:99.57%(14.9日/平均)
つまり、98.22%~99.57%と1.35%の開きが出てきます。
弊社では2025年8月1日時点で受託済みだった管理物件125戸で計算していますので、この差は空室期間619日になります。
これが大手のように数千戸室や数万戸室に相当すると、どのくらいの差になるのでしょうか?
入居率を上げる「空室対策」の提案と取り組み

入居率に最も大きく影響するのはやはり「空室対策」です。
空室対策にはすぐ出来るもの、時間を掛けて行うもの、費用が掛かるもの、無料で行えるものなど多岐に渡ります。
最近はオーナーの勉強会などが全国で開催されていますが、本来はプロとして賃貸管理会社が様々な空室対策を調べたり、編み出したりして、オーナーに提案していくことが求められます。
また、内見時も客付業者に任せっきりの「現地対応」「鍵取り」ではなく、「立会」で鍵を開けて終わりでもなく、「立会」で賃貸管理会社が自ら物件の魅力を丁寧にアピールするか否かで成約率にも影響するため、賃貸管理会社によって入居率には大きく影響します。
特に「現地対応」は、大手管理会社や中小企業でも大多数が採用している内見方法です。
それにはリスクも伴いますので、ぜひこちらの記事もご参照ください。
内見方法「現地対応」のリスク~賃貸オーナーが知っておきたい募集現場の実態~
入居率を上げる「テナントリテンション」

私が空室対策以上に大事だと考えているのは「テナントリテンション」です。
既存の入居者の入居期間を延ばし、退去を減らしていくという考えやその手法です。
つい「空室を埋めること」に目が行きがちですが、退去がなければ空室も発生しないため、オーナーにとって最も魅力的な取り組みです。
しかし、残念ながら多くの賃貸管理会社ではテナントリテンションは行いません。
なぜなら不動産会社にとっては「入退去するときが最も儲かる」からです。
ちゃんと既存の入居者の満足度を高めていくことができれば、平均の居住年数は延びていきますので、その分だけ空室が減って入居率が高まっていきます。
そのための手法は様々ありますが、共用部分の維持管理や入居者トラブルの未然防止と早期解決は基本中の基本で、意外とそれができてない賃貸管理会社も多く見かけます。
テナントリテンションについては以下の記事で解説しています。
満室の次に行う空室対策「テナントリテンション」とは?
賃貸アパート・賃貸マンションの空室率

空室率については総務省統計局の公開している「住宅・土地統計調査」、公益社団法人日本賃貸住宅管理協会の「日管協短観」、株式会社タスの空室率TVIなど様々な指標がありますが、いずれにしても人口減少に伴って空室が増加していく傾向は各地でみられると思います。
東京都の場合、特に23区はしばらくの間空室率が一気に増加することはないかもしれませんが、私が肌身で感じているのは「選ばれる物件」と「選ばれない物件」の差が徐々に激しくなってきているように感じます。
最後に

賃貸管理会社がいかにオーナーに対して空室対策を提案して一緒に取り組み、テナントリテンションによって退去を減らしていくかに努めていけば、入居率は各段に向上します。
私が賃貸管理しているオーナーでは、何も控除せずに年間の「入居率」は99%を超えている方も多数いらっしゃいます。
また、「自分の建物は築年数が古いので、新築には勝てない・・・」と考えるオーナーもいます。
しかし、新しいや設備や高いグレード感は、住んでもすぐに慣れてしまいます。
結局は設備が新しい、グレードが高いなど建物自体の「ハード面」は慣れてしまい、長期入居に影響しません。
大事なポイントは、
・何かあったらすぐ対応してくれる
・近隣に迷惑を掛ける入居者が住んでいない
・普段から維持管理に努めている
・オーナーや賃貸管理会社の対応が心地よい
など、「ソフト面」が充実した物件ほど長期入居の実績が多いと感じています。
それらを考えると、ソフト面を充実させられるか否かは賃貸管理会社の影響が非常に大きいため、入居率にも大きく影響します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


