賃貸市場の中でもマイナスポイントになりがちな要素として、一般的には「駅から遠い」「和式トイレ」「和室」など様々挙げられますが、代表的なものが「築古」です。
前記の和式トイレや和室も築古物件の特徴で、老朽化に伴って様々な問題が発生してきます。
しかし、家主としては築古であっても満室経営を目指す必要がありますので、築古物件ではどのような空室対策が求められるのかみていきましょう。
まずは「あと何年存続させるか」を考える
築古物件の空室対策といえば「フルリフォーム」や「リノベーション」が定番ですが、一歩止まって考えた方がいいです。
なぜなら、「あと何年存続させるか」を考えてからでないと、費用対効果が悪くなる可能性があるからです。
例えば、500万円の工事費を掛けて2LDKをフルリフォームし、賃料12万円から15万円に増額して賃貸できるとした場合、500万円の投資に対して毎月3万円のリターンが得られます。
その場合、表面利回りは7.2%となりますので、投資効率は良い方ではありませんが、築30年を経過した建物をあと30年存続させるといった場合は、設備類の寿命を考慮すると必要な投資と考えられます。
しかし、10年後に建て直すとなった場合、投資分は結局回収できずに取り壊すことになってしまいます。
単純計算すると、360万円(36万円×10年間)-工事費500万円=マイナス140万円ですが、実際は経過年数により賃料減額なども考慮する必要があります。
場合によっては「何もしない」ということも選択肢に入れる必要があります。
リフォーム代の投資効率を考えるときの注意点
もし、先ほどのような例があったとして、不動産会社から「賃料が15万円で貸せれば、年間180万円の収入になるので、利回り36%となり、約3年で回収できます!」という提案があったとき、安易に乗らないように注意しましょう。
何もせず12万円で賃貸できるとすれば、それらを比較すると以下のようになります。
A:何もしないで賃料12万円
12万円×120か月(10年)=1,440万円
B:500万円でリフォームして賃料15万円
15万円×120か月(10年)=1,800万円
1,800万円-500万円=1,300万円
「A:何もしない」方が得ですよね。
ただし、同時に注意するべきは「設備の寿命」です。
築30年であれば、あと10年は何とか持たせることができるかもしれません。
しかし、築40年であれば、何もしないであと10年は給水管や設備類の寿命があるためかなり厳しいでしょう。
つまり、「あと何年存続させるか」を決めてから逆算して、何もしないのか、最低限リフォームするのか、大幅にリフォームするのかを考えなければいけません。
お金をかけない空室対策
まずはよくある対策方法としてリフォーム・リノベーションについて触れましたが、「空室対策=お金がかかる」という訳ではありません。
では、築古物件におけるお金をかけない空室対策とはどのようなものがあるのでしょうか?
ちゃんと募集されているか確認する
もはや空室対策でも何でもないのですが、意外とこれだけで解決する場合が多いです。
インターネットで「SUUMO」を開き、ご自身の物件に当てはまる最寄り駅や条件などを入れてみてください。
この時点で出てこなければ、以下の可能性があります。
・そもそも掲載されていない
・「バストイレ別」「室内洗濯機置場」などの設定が漏れている
・その他条件や入力事項に誤りがある
無事に出てきた場合、詳細画面を見てみましょう。その際、よくある例としては以下のようなものがあります。
・写真が全然載っていない
・写真は載っているがクオリティが低い
・「部屋の特徴・設備」が最低限しか入力されていない
これらを指摘して直してもらうだけでも1か月以内に決まるケースは多々あります。
DIY可能物件にする
DIYとは、自分自身で改修を行うことを指し、国土交通省では賃貸住宅の流通促進の一環として、DIY型賃貸借のガイドラインや契約書式例を公開しています。
DIY型賃貸借に関する契約書式例とガイドブックについて
ただし、借主が何でもやっていいという訳ではなく、「壁や床、天井などの表装は借主が家主の事前承諾を得ることを条件にDIYして良い」とするだけで、訴求力は各段に高まります。
例えば、この記事を執筆した時点で「SUUMO」の品川区・目黒区全域で物件を検索すると95,887件ヒットしてきました。
そして、こだわり条件にある「DIY可」というチェックボックスに入力しただけで、たったの22件になってしまいました。つまり、4,358分の1となり、圧倒的な競争力を得ることができます。
実例として、目黒区の築49年の物件は半年以上空室でしたが、私が空室募集の依頼を受けてDIY可を提案して募集したところ、1か月以内に成約しました。
余分なリフォーム費用は全くかけず、設計デザイン系のお仕事をされている方がご契約いただけました。
住居以外の用途も検討する
アパート・マンションだからといって、住居で賃貸しなければいけない訳ではありません。
私が過去に参加した勉強会では、共同トイレの風呂無しアパートを事務所として賃貸して満室にした事例がありました。
また、私の実体験として倉庫で賃貸した事例、古物商のSOHO利用(住居兼事務所)で賃貸した事例など様々です。
「リノベーション」とは大幅な改修工事をイメージされる方が多いですが、本当は「用途や機能を”変更”して付加価値を与えること」なので、改修工事をしなくても別の用途を提案するだけで成り立つと私は考えています。
ただし、住居専用以外の用途で賃貸した場合、不特定多数の出入りがあると他の入居者とのトラブルや防犯面に問題が出る場合があるので気を付ける必要があります。
また、消費税課税対象になること、固定資産税・都市計画税が増額される可能性があることなど、税務上の様々な注意点もありますが、「空室=収入ゼロ」よりマイナスになることはほとんどないので、前向きに検討しましょう。
最後に
どんな物件でもアイデア一つで満室にすることは可能です。
そのためには、家主自身が考えて様々な事例を調べることも大事ですが、適切な空室対策を提案してくれる、家主のアイデアを実現してくれる、良いパートナーとなる不動産会社と付き合うことが不可欠かもしれません。
ご愛読いただきありがとうございました。