空室対策というと、「この設備を入れれば決まりやすい」「こういうリフォームをすれば成約につながる」といった前向きな施策を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、「空室対策」としてせっかく取り組んだことが、かえって逆効果になることがあります。
それはとても残念なことでもありますし、不動産会社としては逆効果であることを伝えると「怒らせてしまうのでは・・・」という不安もあり、なかなか言えないのも実情です。
これまで私が携わってきた経験から、逆効果となってしまっていた空室対策の一例を取り上げ、その問題点と項目により改善策について解説します。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「気を付けたい空室対策」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
癖の強いアクセントクロス
アクセントクロスとは、基本的には白系や一般的なクロスをベースにしながら、部分的に(部屋の一面など)違う色や柄のクロスを貼ることで、空間に変化をつけるものです。
うまく使えば、おしゃれな印象を出すことができます。
しかし、実務上たまに見かけるのが、とても特徴的なクロスを貼っているケース、部屋の全面にアクセントで使用するクロスを貼っているケースです。
こうなると、単に癖の強い部屋になってしまいます。
ゼブラ柄やビビッドカラーは要注意
実例としては、ゼブラ柄のような動物柄や、鳥がたくさん描かれているような強い柄があります。
また、真っ赤、オレンジ、真っ青などのビビッドカラーも注意が必要です。
実際にそのような物件の内見に立ち会っていると、「おしゃれですね」という反応よりも、
「意外と気にならなかったですね」
「家具を置けば隠れますよね」
といった反応の方が多く、前向きに評価されているというより、気になる部分を何とか受け入れようとしている反応に近いです。
無難に見せるなら淡い単色がおすすめ
基本的には、単色系で、淡いパステルカラーや落ち着いた色味の方が無難です。
例えば、グレー系、薄い水色や茶色、ベージュ系などです。
賃貸物件では、できるだけ多くの方に受け入れられることが重要です。
そのため、個性的すぎるクロスは慎重に選ぶ必要があります。
実用性が低いリノベーション
空室が長引いていると、「何か大きな打開策が必要なのではないか」と考えることがあります。
その結果、築年数も経っているため、思い切ってリノベーションをすれば物件が見違えるようになり、早く決まるのではないかと考える方もいます。
この時に重要なのは、「実際に住む人の使いやすさ」から逆算されていないリノベーションです。
無理にワンルーム化するリスク
実務上よく見かけるのが、もともと2DKや2LDKだった部屋の壁をすべてぶち抜いて、広いワンルームにしてしまうケースです。
または、非常に広いリビングと小さな寝室だけの、極端な1LDKにしてしまうケースもあります。
もちろん、そのような間取りを好む方もいます。
しかし、実際には、以下のような希望を持つ方が多いため、2DKや2LDKのままだった方が良い場合がほとんどです。
・ダイニングと寝室をつなげてLDKのように使える
・必要に応じて部屋を分けられる
・二人暮らしでも使いやすい
・テレワーク用の部屋を確保できる
・寝室と生活空間を分けられる
つまり、「つなげることもできるし、分けることもできる」という間取りの方が、様々な入居者の生活スタイルに合わせやすいのです。
デザイン優先で家具が置けない間取り
例えば、部屋の角にわざわざカーブを作ってしまい、家具が置きづらくなっているケースがあります。
また、部屋の中に丸い柱のようなものがあり、配置の自由度が下がっていることもあります。
見た目には面白いかもしれませんが、実際に住む方からすると以下のような懸念点が生まれてしまいます。
「ベッドはどこに置くのか」
「ソファは置けるのか」
「収納家具が入らないのではないか」
リノベーションは家具配置から逆算する
リノベーションやリフォームだけでなく、新築でも大切なのは、誰がどのように住むのかを想定することです。例えば、以下のようなことです。
ベッドをどこに置くか
テーブルをどこに置くか
テレビをどこに置くか
収納家具を置けるか
生活動線が確保できるか
リノベーションを行う前には、まず空室の原因を整理することが大切です。
場合によっては、大規模な工事をしなくても、別の原因を解消するだけで成約につながることも珍しくありません。
リスクヘッジなしの条件緩和
空室がなかなか決まらないと、条件を緩和して募集対象を広げようと考えることがあります。
例えば、ペット可、事務所利用可、高齢者相談可といった条件です。
これらは、空室対策として有効な場合があります。
しかし、何も対策を取らずに安易に条件を緩和すると、入居後のトラブルにつながる可能性があります。
ペット可にする場合の注意点
例えば、これまでペット禁止だった建物を、突然ペット可にする場合です。
もともと入居している方は、「この建物はペット禁止である」という前提で住んでいます。
そのため、急に他の部屋で犬や猫の飼育を認めた結果、鳴き声や臭い、共用部の使い方などでトラブルが起きた場合、既存入居者から不満が出る可能性があります。
また、不満だけでなく、法律上の問題が生じる場合もあります。
事務所利用可にする場合の注意点
単にパソコン作業を行うだけで、来客もほとんどなく、音や臭いも発生しない用途であれば、問題になりにくい場合がほとんどです。
一方で、来客が多い、商談の声が響く、従業員が頻繁に出入りする、荷物の搬入出が多い、実質的に店舗利用になっているといった状態になることもあります。
そうなると、既存入居者が「何となく落ち着かない」「外部の人の出入りが多くて不安」と感じる可能性があります。
条件緩和は範囲を決めて行う
条件を緩和すること自体は、悪いことではありません。
ただし、重要なのは「何をどこまで認めるのか」を明確にすることです。
例えば、ペット可にする場合でも、以下のように条件を細かく決める必要があります。
猫のみ可
1匹(頭)まで
敷金追加
退去時の原状回復義務の取り決め
共用部でのルール
つまり、安易に「何でもOK」にすることが、一番危険な行為となってしまいます。
相対的なハイグレード設備
「良い設備を入れれば決まりやすくなるのではないか」と考え、キッチン、トイレ、エアコンなどに高額な設備を入れるケースがあります。
もちろん、良い設備を入れること自体が間違いというわけではありません。
ただし、物件全体のグレードや賃料帯と比べて、一部の設備だけが極端に高級になっている場合、費用対効果が合わないことがあります。
内見前の問い合わせにはつながりにくい
例えば、以下のような設備は、確かに良いものです。
・キッチンだけ大理石調の天板になっている
・温水洗浄便座だけ便器一体型の高級モデルになっている
・エアコンだけお掃除機能付きの高性能モデルになっている
しかし、募集の段階で入居希望者から、
「このキッチンはあのシリーズですね」
「このトイレはタンクレスですね」
「このエアコンはこのメーカーの上位機種ですね」
という反応が出ることは、ほとんどありません。
つまり、費用をかけた割に、問い合わせ数の増加には直結しにくいのです。
良い設備が他の粗を目立たせることもある
さらに、一部だけ良い設備が入っていることで、他の部分がチープに見えてしまうこともあります。
例えば、キッチンは非常に高級なのに、浴室や洗面台が古いまま。
室内はきれいなのに、共用廊下が傷んでいる。
玄関ドアや窓まわりに劣化が目立つ。
このような場合、良い設備があることで、逆に全体のバランスの悪さが目立ってしまうことがあります。
バランスが大切
空室対策では、一つの設備に大きくお金をかけるよりも、全体のマイナスを減らす方が効果的な場合があります。
また、内見者は、室内だけでなく、建物全体の印象を見ています。
「部屋はきれいだけれど、共用部が荒れている」
「設備は良いけれど、建物全体に管理されていない印象がある」
このように感じられると、成約につながりにくくなります。
大切なのは、設備単体の豪華さではなく、物件全体のバランスです。
汎用性のない設備や建材
空室対策として、「おしゃれな設備を入れたい」と考える方は多いと思います。
例えば、最近の一般的な洗面台には、シャワー付きのヘッドが付いていて、朝に髪を洗うこともできるような実用的なものがあります。
一方で、デザイン性を重視して、水だけが出るシンプルな水栓や、木の板にボウルをはめ込んだような洗面台を設置するケースもあります。
見た目にはおしゃれですが、内見時には、
「おしゃれですね。でも使いづらそうですね」
という反応になることがあります。
無垢材は賃貸では扱いが難しい
無垢材のフローリングは、風合いがあり、木の香りも感じられ、非常に魅力的です。
マイホームであれば、とても良い選択肢だと思います。
しかし、賃貸物件として考えると、以下のような問題があるため注意が必要です。
シミが付きやすい
傷が付きやすい
水に弱い
補修費用が高くなりやすい
入居希望者によっては、それらの懸念点が気になって、見送るケースも珍しくありません。
修繕しやすさも重要な判断基準
賃貸物件では、設備や建材を選ぶ際に「修繕しやすいか」という視点、つまり入居中の故障や退去後の原状回復も念頭に置くことが非常に重要です。
例えば、一般的なメーカーの水栓であれば、故障しても比較的早く部品を手配できることが多いです。
一方で、デザイン性の強い特殊な水栓の場合、同じものがすぐに手に入らないことがあります。
場合によっては、代替品を探すだけでも時間がかかります。
退去時トラブルにもつながる
特殊な建材は、退去時の精算でもトラブルになる可能性があります。
例えば、無垢材の床にシミやへこみが付いた場合、それを入居者に請求するのか、どこまで通常損耗と見るのか、判断が難しくなることがあります。
高額な補修費用を請求することになれば、入居者が納得せず、トラブルになる可能性もあります。
そのため、賃貸物件では、汎用性や修繕・交換のしやすさ、といった視点が重要です。
おわりに
空室対策というと、どうしても「今の空室を早く決めること」に意識が向きがちです。
もちろん、それは非常に大切ですが、賃貸経営は契約してからがスタートです。
また、退去後には次の入居者を探す必要もあるため、長期的な目線で判断していく必要があります。
成功例だけでなく、今回お伝えしたような失敗例からもご自身の物件の空室対策を考えて、勝ちパターンを見つけていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


