共益費・管理費(約款解説)

最新更新日 2023年12月28日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

前々回は「約款解説:賃料」、前回は「供託の対応」ということで、国土交通省のホームページで掲載されている「賃貸住宅標準契約書」を例として、第四条に記載されている賃料改定に関係した解説を行いました。

不動産業者でも契約約款に記載されている一文がどのような意味で、そのような場面のトラブルを抑止するために記載され、どのような場面で用いられるのかを理解していないケースが非常に多いため、実務をイメージして第五条の解説を行います。

賃貸借契約書(国土交通省、保証業者型)

 


第5条(共益費)

乙は、階段、廊下等の共用部分の維持管理に必要な光熱費、上下水道使用料、清掃費等(以下この条において「維持管理費」という。)に充てるため、共益費を甲に支払うものとする。

2 前項の共益費は、頭書(3)の記載に従い、支払わなければならない。

3 1か月に満たない期間の共益費は、1か月を30 日として日割計算した額とする。

4 甲及び乙は、維持管理費の増減により共益費が不相当となったときは、協議の上、共益費を改定することができる。


 

①「共益費」と「管理費」の違い

結論からお伝えすると、賃貸においては「無い」と考えて問題ありません。

不動産公正取引協議会連合会が公表している「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」では、以下のように記載されています。

 

共益費

借家人が共同して使用又は利用する設備又は施設の運営及び維持に関する費用をいう。

 

管理費

マンションの事務を処理し、設備その他共用部分の維持及び管理をするために必要とされる費用をいい、共用部分の公租公課等を含み、修繕積立金を含まない。

 

不動産全般でいうと、ニュアンスとしては賃貸で用いられる言葉が「共益費」で、分譲マンションの所有者が支払うものを「管理費」と表現することを前提としていますが、賃貸実務では不動産会社によって使い分けているのが実態です。

 

 

②共益費・管理費の金額

共益費や管理費に相場はありませんが、入居者募集を行う上では重要な戦略となります。以前書いたブログ「賃料と管理費の割振」で金額設定について説明しておりますので、参考にしていただければと思います。

 

 

③「光熱費」とは

主に「電気代」と「ガス代」ですが、共用部分でガスを使用しているケースはかなり少ないと思います。

この「電気代」は削減できる可能性の高い項目で、電力会社を切り替える、照明器具をLED化する、電子ブレーカーを導入するなど様々な手法があります。

余談ですが、光熱費の削減に成功した場合も、共益費・管理費を下げる必要はありません。

 

 

④「上下水道使用料」

主に共用部分を清掃する際に使用する水道代です。

 

 

⑤「清掃費」

主に共用部分の日常清掃や定期的に実施する特別清掃(高圧洗浄など)となります。清掃費は業者によって金額が異なり、業者や清掃プランの見直しによって清掃費を削減できる可能性があります。

 

 

⑥「協議の上、共益費を改定」

共益費の改定を行う場合も、賃料と同様に一方的に改定できるものではありませんので、もし何等かの事情で固定費の上昇があった場合はその内容を説明して承諾を得るようにしましょう。

 


以上が第5条の解説でした。ご愛読いただきありがとうございました。

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