【重点対応エリア】不動前(西五反田・下目黒・小山台・小山)

設備と残置物の違いとは?賃貸借契約で揉めないための実務ポイント

最新更新日 2026年07月14日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

前回、現況確認書についてお話しした際に、設備なのか残置物なのかを明確に記載しておくことが大切だとお伝えしました。特に、残置物であるものについては、きちんと「残置物」と書いておく必要があります。

ただ、そもそも設備と残置物の違いが分かりづらいと感じる方もいらっしゃると思います。

また、実務上は「設備にはしたくないけれど、完全な残置物にもしたくない」というものもあります。

そこで今回は、設備と残置物の基本的な違いに加えて、「無償貸与品」という考え方や、契約書で工夫する際の注意点について解説いたします。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「設備・残置物・無償貸与品」
という動画の内容を、文字で整理したものです。

設備と残置物を考える3つの視点

設備と残置物を整理する際には、主に次の3つの視点が重要です。

1つ目は、所有者が誰なのかです。
オーナーの所有物なのか、そうではないのかという点です。

2つ目は、修繕義務があるかどうかです。
壊れたときに、オーナーが直す必要があるのかという点です。

3つ目は、借主に原状回復義務があるかどうかです。
借主が壊してしまった場合に、借主が直す必要があるのかという点です。

この3つを整理すると、設備と残置物の違いが分かりやすくなります。

設備とは何か

設備とは、オーナーの所有物であり、賃貸物件の一部として貸し出されるものです。

たとえば、キッチン、トイレ、ユニットバス、洗面台、給湯器、エアコンなどが代表例です。

そのため、通常使用の範囲で故障した場合には、原則としてオーナーに修繕義務があります。

一方で、借主が故意や過失によって壊してしまった場合には、借主に原状回復義務が生じます。

つまり、設備は、

オーナーの所有物
オーナーに修繕義務がある
借主が壊した場合は借主に原状回復義務がある

ということになります。賃貸住宅に備え付けられているものの多くは、基本的には設備として扱われます。

残置物とは何か

一方で、残置物とは、前の入居者などが置いていったものという扱いであり、原則としてオーナーの所有物ではありません。
そのため、オーナーには修繕義務がありません。

借主は自由に使うことができますが、壊れたとしても、基本的にはオーナーに修理を求めることはできません。

また、残置物であれば、借主が撤去したり、交換したりすることも考えられます。

整理すると、残置物は、

オーナーの設備ではない
オーナーに修繕義務がない
借主が壊しても原則としてオーナーに修理義務はない
借主が自由に交換・撤去できる

ということになります。

実務上はオーナー設置品でも残置物扱いにすることがある

実務上は、もともとオーナーが設置したものであっても、残置物として扱うことがあります。

たとえば、古いエアコンや照明器具について、「使用できるなら使ってもよいが、故障してもオーナー側では修理しない」という扱いにしたい場合です。

このような場合には、契約書、重要事項説明書、現況確認書などに、残置物であることを明記しておく必要があります。

何も書いていなければ、設備として扱われてしまいます。

設備にも残置物にもしたくないもの

実務では、設備にも残置物にも整理しづらいものがあります。

たとえば、シーリングライトです。

シーリングライトは、LEDであれば比較的長く使えます。
そのため、退去時に勝手に持っていかれたり、処分されたりすると困る場合があります。

一方で、自然故障した場合に、オーナーとして修理や交換まで負担したくないという考えもあります。

また、カーテンも同じです。

たとえば、オーナーが転勤中の数年間だけ定期借家契約で貸す場合、既存のカーテンをそのまま使ってもらいたいことがあります。
寸法も合っており、処分や保管も大変だからです。

しかし、オーナーが戻ってきたときには再び使いたい。
一方で、借主が破いたり汚したりした場合には、修理やクリーニング、場合によっては買い替え費用を負担してほしい。

このような場合に検討できるのが、「無償貸与品」という考え方です。

無償貸与品という考え方

無償貸与とは、簡単に言えば、オーナーの所有物を無料で貸すという考え方です。

賃貸借は、賃料を受け取って物件を貸す契約です。
その賃貸借の対象に含まれる設備については、原則としてオーナーに修繕義務があります。

一方、使用貸借は、無料で貸す契約です。
無料で貸している以上、貸している側の責任を一定程度限定することができます。

つまり、無償貸与品として整理すれば、

所有者はオーナー
借主が勝手に持ち去ることはできない
借主が壊した場合は原状回復義務を負わせることができる
自然故障についてはオーナーが修繕義務を負わない形にしやすい

という扱いが考えられます。

使用貸借についてはこちらのブログで解説しています。
使用貸借~無償で貸し借りする契約~

何でも無償貸与にできるわけではない

ただし、無償貸与品という扱いを何にでも使えるわけではありません。

もしこれが何でも使えるなら、キッチン、トイレ、浴室、給湯器などもすべて無償貸与にして、オーナーの修繕義務を免れることができてしまいます。

しかし、それはやり過ぎです。

賃貸住宅として貸し出す以上、居住に必要不可欠な設備については、賃貸借の目的物に含まれると考えるべきです。

たとえば、

キッチン
トイレ
浴室
給湯器
洗面台

などは、基本的に設備として扱うべきものです。

無償貸与として整理できるのは、あくまでごく一部の、取り外し可能なものや、居住に必須とまではいえないものに限られると考えた方が良いです。

特約で同じような効果を持たせる方法

無償貸与という言葉を使うと、「使用貸借とは何か」という説明が必要になり、かえって分かりづらくなる場合があります。

そのため、契約書の特約で同じような効果を持たせることも考えられます。

たとえば、次のような内容です。

「シーリングライト及びカーテンについては、賃貸人の修繕義務を免除する。ただし、賃借人の故意又は過失により破損・汚損した場合には、賃借人の負担により原状回復するものとする。」

このように定めておけば、オーナーが自然故障の修繕義務を負わない一方で、借主が壊した場合には負担を求めるという整理がしやすくなります。

ただし、これも対象を限定することが大切です。
すべての設備について同じような特約を入れてしまうと、無効やトラブルの原因になる可能性があります。

事前説明が何より重要

このような取り扱いをする場合、契約書に書いておくだけでは不十分です。

契約当日に初めて、

「これは無償貸与品です」
「壊れてもオーナーは修理しません」

と説明されると、借主としては納得しづらい場合があります。

そのため、内見時や問い合わせの段階で、あらかじめ説明しておくことが重要です。

入居希望者がその条件を理解したうえで申し込み、契約書にも明記されている状態にしておくことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

もともと故障しているものの扱い

もう一つ注意したいのが、もともと故障しているものです。

たとえば、温水洗浄便座です。
温水洗浄機能が壊れているものの、通常の便座としては使える場合があります。

本来であれば交換するのが理想かもしれません。
しかし、物件の条件や賃料帯によっては、「その機能は使えないものとして貸し出す」という判断をすることもあります。

その場合は、「温水洗浄便座の暖房機能は故障しており、賃貸人は当該機能の修理・交換義務を負わないものとする。」といった特約を設けます。

ただし、これも契約当日に初めて説明するのではなく、内見時や申込前に伝えておくことが重要です。

まとめ|設備・残置物・無償貸与品は明確に整理する

今回は、設備と残置物の違い、そして無償貸与品という考え方について解説しました。

設備は、オーナーの所有物であり、原則としてオーナーに修繕義務があります。
一方で、借主が故意や過失で壊した場合には、借主に原状回復義務が生じます。

残置物は、原則として設備ではないため、オーナーに修繕義務はありません。
ただし、残置物であることを契約書等に明記しておかなければ、設備扱いされる可能性があります。

また、シーリングライトやカーテンのように、設備にも残置物にも整理しづらいものについては、無償貸与品や特約によって取り扱いを明確にする方法があります。

ただし、キッチン、トイレ、浴室など、居住に不可欠なものまで無償貸与扱いにするのは適切ではありません。

大切なのは、次の3点です。

設備か残置物かを明確にすること
残置物や無償貸与品は書面に残すこと
契約前にきちんと説明すること

設備と残置物の整理が曖昧なままだと、入居後の修繕対応や退去時の原状回復でトラブルになりやすくなります。

契約を進める際には、細かい部分まで確認し、書面と説明の両方で明確にしておくことが大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

PREV