築年数が経過したマンションやビルでは、受水槽や高置水槽、給水ポンプなどの設備が設置されていることがあります。
これらの設備は、建物が新築された当時には必要だったものです。
しかし、築20年、30年と経過する間に、周辺の水道本管の状況や供給される水圧、水道局の基準などが変わり、現在では受水槽やポンプを使用しなくても、水道本管から直接給水できる建物になっている可能性があります。
もし直結給水へ変更できれば、受水槽の清掃費用やポンプの保守点検費用だけでなく、将来発生する修理費や設備交換費まで削減できます。
今回は、受水槽や給水ポンプが設置されている賃貸物件について、給水方式を見直すことで経費を削減する方法を解説します。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「水道直結方式で維持費削減」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
古い建物にはなぜ受水槽やポンプがあるのか
ある程度高さのある建物では、水道本管から供給される水圧だけでは、上層階まで十分に水を届けられない場合があります。
そのため、従来は主に次のような給水方式が採用されていました。
受水槽+揚水ポンプ
道路下の水道本管から供給された水を、まず1階や地下などに設置された「受水槽」へ貯めます。
そして、受水槽の水をポンプによって建物内へ送り出します。
さらに古い建物などでは、受水槽から屋上に設置された「高置水槽」まで水をくみ上げ、そこから重力を利用して各階へ給水する方式もあります。
増圧ポンプによる給水
もう一つは、受水槽へ水をためず、水道本管から供給される水を増圧ポンプによって加圧し、各住戸へ送る方式です。
受水槽を設置しないため、タンクの維持管理は不要になりますが、増圧ポンプそのものの点検や修理は必要です。
受水槽やポンプには毎年維持費がかかる
受水槽やポンプが設置されている場合、それらを正常に使用し続けるためには、定期的な維持管理が必要です。
特に受水槽は、生活用水を一度貯めておく設備です。
飲用や調理、入浴、洗面などにも使用される水なので、衛生状態を適切に維持しなければなりません。
そのため、対象となる設備については定期的な清掃や点検が必要になります。
保守費用だけでなく修理・交換費も考える
給水設備の経費を考える際、毎年支払っている保守費用だけを見てはいけません。
ポンプは機械設備ですので、使用を続ければ故障する可能性があります。
内部の消耗部品を交換するだけでも数万円程度かかることがありますし、故障箇所によっては数十万円の修理費が必要になるケースもあります。
さらに、ポンプそのものを交換するとなれば、設備や施工条件によっては100万円前後、あるいはそれ以上の費用になることもあります。
つまり、給水設備の本当の維持コストは、
・毎年の保守点検費
・受水槽の清掃費
・消耗部品の交換費
・突発的な修理費
・将来の設備更新費
まで含めて考える必要があります。
現在では給水設備が不要になっている可能性がある
ここで重要なのが、建築当時に必要だった設備が、現在も必要とは限らないという点です。
建物が建築されてから20年、30年と経過する間に、周辺の水道施設が整備され、水道本管から供給される水圧などの条件が変わっている可能性があります。
その結果、以前は受水槽やポンプがなければ上層階まで水を供給できなかった建物でも、現在では水道本管から直接給水できる場合があります。
このような建物では、給水方式を「直結給水」へ変更することによって、既存の受水槽やポンプを廃止できる可能性があります。
なんと10階建てのマンションでも直結給水に切り替えることができた事例があります。
直結給水へ変更するメリット
直結給水とは、水道本管から供給される水を、受水槽などへ貯めず、増圧ポンプで加圧もせずに、直接建物へ供給する方式です。
変更できれば、最大のメリットは設備維持費を削減できることです。
例えば、受水槽を廃止できれば、
・定期的な受水槽清掃
・タンク内部の部品交換
・タンク自体の修繕・更新
などが不要になります。
また、ポンプも不要になる方式へ変更できれば、
・ポンプの定期点検
・消耗部品の交換
・故障時の修理
・ポンプ本体の更新
といった費用も削減できます。
経費削減だけでなく、「いつポンプが故障するか」「突然断水しないか」といった設備管理上の心配を減らせることも大きなメリットです。
どの建物でも直結給水に変更できるわけではない
ただし、受水槽やポンプが付いているからといって、すべての建物で撤去できるわけではなく、まずは専門業者による調査が必要です。
そのうえで、流量や水圧を計算し、水道本管から直接給水しても建物全体で必要な水量を確保できるかを確認します。
条件を満たすことが確認できたら、設計図面などを作成し、所轄の水道事業者へ申請してもらいます。
承認が得られたら工事を行う、という流れになります。
直結化工事にはいくらかかる?
工事費は、既存の配管状況によって大きく異なります。
配管同士を比較的近い位置で接続できる建物であれば、工事自体はそれほど大掛かりにならないことがあります。
しかし、実際には水圧・流量計算、設計、申請などの費用も必要です。
当社が携わった事例では、比較的施工しやすい建物で、全体として50万円程度で直結化できたケースがありました。
一方、地下に受水槽があり、既存の引込管から建物内部の給水管まで新しい配管ルートを作る必要があったケースでは、100万円程度かかったこともあります。
建物によって工事内容は大きく異なるため、まずは調査と見積もりを依頼することが重要です。
50万円の工事でも10年で回収できる可能性がある
仮に直結化工事へ50万円かかったとします。
これまで受水槽やポンプの維持費として年間5万円を支払っていたのであれば、単純計算では10年間で50万円になります。
つまり、約10年で工事費を回収できる計算です。
年間7万円の維持費がなくなるのであれば、回収期間はさらに短くなります。
しかも、この計算には、将来発生する可能性のあるポンプの修理費や交換費を含めていません。
例えば、今後100万円程度のポンプ交換が必要になるところを、直結化によって設備自体を廃止できれば、その将来負担も避けられます。
そのため、単純な年間保守費の削減額だけでなく、将来の設備更新費まで含めて判断することが重要です。
経費削減は賃料収入を増やすのと同じ効果がある
賃貸経営では、収益を改善する方法として、どうしても賃料を上げることに目が向きがちです。
しかし、年間5万円の支出を削減できれば、年間5万円の収益改善になります。
年間10万円の維持費を削減できれば、毎月約8,300円の収支改善です。
賃借人に毎月8,000円以上の賃料増額をお願いすることは簡単ではありません。
一方、不要になった設備を見直すことであれば、入居者の負担を増やさずに収益性を改善できます。
こうした固定費の削減は、長期的な賃貸経営では非常に重要です。
まず確認したい建物の特徴
次のような建物を所有している場合には、一度、直結給水へ変更できないか専門業者へ相談してみる価値があります。
・築20~30年以上経過している
・地下や1階に受水槽がある
・屋上に高置水槽がある
・増圧ポンプの保守費用を毎年支払っている
・ポンプが古く、今後交換時期を迎える
・給水設備の修理費が増えている
特に、近い将来ポンプ交換が必要となる建物では、単純に新しいポンプへ交換する前に、「そもそも、このポンプは現在も必要なのか」を確認することをおすすめします。
まとめ|古い給水設備は「交換する前に必要性を確認する」
築年数が経過したマンションやビルでは、新築時に設置した受水槽、高置水槽、増圧ポンプなどを、そのまま維持し続けていることがあります。
しかし、周辺の水道環境などが変化したことで、現在では水道本管から直接給水できる建物になっている可能性があります。
直結給水へ変更できれば、
・受水槽の清掃費
・ポンプの保守点検費
・部品交換費
・故障時の修理費
・将来のポンプ交換費
などを削減できます。
工事費として50万円から100万円程度かかったとしても、年間の維持費や将来の設備更新費を考えれば、一定期間で回収できる可能性があります。
特に重要なのは、古いポンプが故障してから、「100万円かけて新しいポンプへ交換しよう」とすぐに判断しないことです。
その前に、「この建物は、現在でも本当に受水槽やポンプが必要なのか」を一度確認してください。
築20年から30年以上経過し、受水槽や給水ポンプを維持している建物であれば、給水方式そのものを見直すことで、長期的な経費削減につながる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


