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貸した部屋が詐欺拠点に使われたら、大家も責任を負う?裁判例と入居審査の対策

最新更新日 2026年10月25日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

貸している部屋が詐欺の拠点として使われていた場合、大家さんも被害者に対して損害賠償責任を負うのでしょうか。

物件を貸していたという理由だけで、直ちに大家さんの責任が認められるわけではありません。一方で、犯罪への利用を知っていたか、知り得る事情があったか、どのように関与していたかによって、判断は変わります。

今回は、詐欺被害者から建物の大家への請求が棄却された東京地方裁判所の令和2年3月9日判決を取り上げ、賃貸経営で注意したい点を解説します。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「貸した部屋が詐欺拠点に…大家も責任を負う? 」
という動画の内容を、文字で整理したものです。

貸した物件の使われ方に、不安を感じることも

さまざまな建物を管理していると、入居者やテナントの事業内容について、不安を感じる場面があります。

私自身、管理を引き継いだ物件で、入居者が代表を務める会社をインターネットで検索したところ、「被害に遭った」といった書き込みが見つかったことがありました。当時は、何か問題が起きないか、気をもんでいました。

もちろん、インターネット上の評判だけで、不正や犯罪があると決めつけることはできません。それでも、気になる情報を把握したときに、どう対応するかは管理上の重要な課題です。

こうした問題は、テナントビルだけに限りません。マンションの一室が事業の拠点として使われ、そこで行われていた活動が、後に詐欺として問題になることもあります。

裁判例の概要|詐欺被害者16名が大家さんにも賠償を請求

今回の事例には、借主の法人や役員、建物の大家さんの法人や関係者、携帯電話回線を提供した別会社など、複数の当事者が登場します。ここでは分かりやすく、ひとまとめに「借主」「大家さん」「回線提供会社」「被害者」として説明します。

借主は、都内のマンションの一室を借り、本店として事業活動を行っていました。また、借主は、大家さんから携帯電話回線をレンタルしていました。

この大家さんの営む事業は不動産賃貸業だけではありませんでした。また、この携帯電話回線の契約名義は別会社だったという、若干怪しさを感じる関係性でもありました。

先物取引の勧誘後、借主と連絡が取れなくなった

借主は、レアメタル等の先物取引で利益が得られるとして、16名を勧誘し、お金を預かりました。

ところが、借主の法人は物件を退去し、その後、被害者たちは連絡を取れなくなりました。預けたお金も返還されない状態となったのです。

そこで被害者たちは、借主だけでなく、建物の大家さんや回線提供会社にも損害賠償を求めました。物件や回線の提供が詐欺行為を助けたとして、共同不法行為などの責任を追及し、訴訟を提起しました。

①物件を貸した経緯に不自然な点があったか

大家さんは、借主に物件を貸した経緯について、知人の紹介を受けて物件を貸すことになったと説明していました。

しかし、被害者はその説明だけでは不十分だと主張しました。

裁判所は、その説明に、物件が詐欺に利用されると知っていたのではないか、と疑わせるほどの不自然さはないと判断しました。

②携帯電話回線の提供は、詐欺への関与を示すか

大家さんは、借主が自社名義で保有できる回線数の上限で困っていたため、それを補うために貸していたと説明していました。

しかし、被害者は、事実上の契約名義貸しをしていたと指摘し、それは詐欺行為を知っていたから協力したのではないかと主張しました。

裁判所は、これについても物件が詐欺に利用されると知っていたのではないか、と疑わせるほどの不自然さはないと判断しました。

③不正利用の恐れをうかがわせる事情があったか

被害者は、大家が電話回線の不正利用を防ぐ対策を講じず、貸し続けていたことも問題にしました。

しかし、裁判所は、不正利用の恐れをうかがわせる事情があったとは認めず、恐れがないものに対策を講じる必要はないと判断しました。

上記の結果として、被害者から大家さんへの請求は棄却されました。一方、借主は裁判に出頭することがなく、被害者から行われた全ての請求が認められています。

「知らなかった」と言えば責任を免れるわけではない

この裁判例では、「知っていたか」「知らなかったか」という部分が要点になったと考えられます。

しかし、「大家さんは犯罪を知らなければ、必ず責任を負わない」と理解するのは適切ではありません。

確認すべきなのは、実際に知っていたかだけでなく、当時の状況から不正利用を知り得たのか、犯罪への関与を疑わせる事情があったのかという点です。

例えば、犯罪に利用されていることを具体的に把握しながら、物件や回線の提供を通じて活動を助けていた場合は、今回とは異なる問題になります。

入居後に不審な事情を把握したら、放置しない

入居時には問題が分からなくても、賃貸を続けるうちに、具体的な苦情や不審な情報が寄せられることがあります。

犯罪の疑いがある場合は警察や弁護士への相談を検討し、状況に応じた判断が必要です。

また、通知や相談の記録を残すことも大切ですが、把握した問題の内容に応じて、必要な対応を続けることが重要です。

この点は、建物の防火管理者にも通じます。たとえば、テナントビルでは、テナント毎に防火管理者の選任が必要になる場合があります。

しかし、選任の届け出が出されておらず、消防署から指摘を受ける場合があります。

この場合も、大家さんはテナントに「防火管理者を選任して、消防署に届出を出してください」と依頼するのが重要ですが、一度だけで済ませず、継続して依頼し続けることが重要です。

途中で放置したまま防火管理者の届出が出されず、その後発生した火災によって人命被害などがあった場合は、大家さんに対して大きな責任が追及される可能性もあります。

詐欺拠点としての利用を防ぐための入居審査

賃貸トラブルの多くは、契約前の対応で未然に防ぐことが理想的です。

入居申込を受けた際に、必ず確認しておきたいポイントを3つ紹介します。

運転免許証の下一桁

運転免許証番号の末尾は、「再交付の回数」を示しています。
たとえば、0であれば再交付なし、1回紛失して再交付を受けた場合は1となります。(恥ずかしながら、私は「1」です…)

私の経験上では、2はギリギリ(でも要注意)、3以上はなるべく見送った方が良い、という判断をしています。

氏名・法人名の検索

申込者の氏名や法人名、代表者名のインターネット検索も重要です。

私自身、内見時のやり取りに違和感を覚え、氏名を検索したところ、詐欺被害を訴える情報が見つかり、入居をお断りした経験があります。

ただし、同姓同名の別人や、事実確認のできない投稿もあります。検索結果だけで犯罪者と断定せず、本人との一致、情報源、掲載時期などを確認する姿勢が必要です。

反社チェック

不動産会社の多くは協会に加盟しています。
その協会には反社会的勢力の関係者かどうかチェックするシステムがあり、加盟している不動産会社はアクセスすることで調査できます。

大家さん自身を守るために、入居前と入居後の確認を

今回の裁判例では、詐欺に使われた物件の大家さんなどに対する損害賠償請求は認められませんでした。

しかし、事前に詐欺に使うことを知っていた場合はもちろん、後から知ったにも関わらず放置していた場合も責任を負う可能性があります。

事後対応は大切ですが、契約前の適切な審査も非常に重要です。

借主を必要以上に疑うのではなく、確認すべきことを確認する。そして、不審な事情を把握したら放置せず、関係機関や専門家と連携して対応する。その積み重ねが、物件の不正利用を防ぎ、大家さん自身を守ることにもつながります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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