賃貸管理を行っていると、時々「トイレが詰まってしまったので、対応してほしい」という連絡をいただくことがあります。
私自身、現在では現地へ伺えば、一般的なトイレ詰まりであれば、その場で解消できることが多くなりました。
しかし、新人だった頃はかなり苦労しました。
「この道具を使えば簡単に直せるだろう」と思って現場へ向かったものの、まったく詰まりが取れず、何度も試行錯誤した経験があります。
そこで今回は、これまで実際にトイレ詰まりへ対応してきた経験を基に、
トイレ詰まりの対応に必要な道具
詰まりを解消するポンプの種類
ポンプを使用するときのコツ
詰まりが解消した後の確認方法
トイレが詰まりやすくなる原因
トイレ詰まりを予防する方法
火災保険や緊急対応サービスの活用
について解説します。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「賃貸物件の漏水を防ぐには?給水管・排水管・雨漏り対策 」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
トイレ詰まりの対応で用意しておきたい道具
まず、トイレが詰まった際に現場へ持っていきたい道具をご紹介します。
最低限、用意しておきたいのは次のようなものです。
トイレ用の詰まり解消ポンプ
45リットル程度のごみ袋
大きめのバケツ
タオル
使い捨て手袋
詰まり解消ポンプ
詰まり解消グッズにもいくつか種類があります。
有名なのはラバーカップですが、使い方が難しく、便器の形状や状況によっては解消し辛いです。
そのため、ポンプ式の物の方が使いやすく、カップ部分が便器排水溝の形状に合った専用ものを一つ用意しておくと便利です。
45リットル程度のごみ袋
使用済みのラバーカップを一時的に入れるほか、便器から取り出した異物を処分したり、作業後に汚れた道具を入れて持ち帰ったりすることもできます。
45リットル程度のごみ袋を2~3枚程度用意しておくと安心です。
大きめのバケツ
バケツもぜひ用意していただきたい道具の一つです。
現場へ向かう際には、ポンプ、タオル、手袋、ごみ袋などをまとめてバケツの中へ入れておけば、そのまま持ち運ぶことができます。
さらに、詰まりが解消した後に、水を貯めて一気に流し込み、最終確認を行う際にもバケツを使用します。
そのため、小さなものより、ある程度の量の水を入れられる大きめのバケツがおすすめです。
タオルと使い捨て手袋
トイレ詰まりの作業では、便器の周囲へ水が飛び散ることが多いので、タオルを2~3枚程度用意しておくと便利です。
また、衛生面を考えて、薄手の使い捨て手袋(よく医者が手術時に装着しているようなもの)も用意しておくことをおすすめします。
作業する本人が気にならなかったとしても、入居者からすれば、トイレの作業をした手で室内のドアノブや設備を触られることに抵抗があるかもしれません。
使い捨て手袋は比較的安価で、漏水対応、排水口の確認、設備修理など、トイレ以外の現場でも活用できます。
詰まり解消ポンプを使う際のコツ
次に、ポンプを使用するときのコツについてです。
私自身、新人の頃は、ポンプをできるだけ大きく押し込み、大きく引き抜くことを繰り返していました。
しかし、かなり体力を使う割に、なかなか詰まりが取れないことがありました。
そこで、何度も現場対応を経験する中で、現在は「詰まっているものを揺らす」というイメージで作業するようにしています。
15~20センチ程度の幅で小刻みに動かす
ポンプの先端を便器の排水口へしっかり入れたら、大きく上下させるのではなく、おおむね15~20センチ程度の範囲で、何度も小刻みに動かします。
イメージとしては、配管のどこかに引っ掛かっているものを、少しずつ前後に動かしている状態です。
詰まっているものが少し動き、わずかな隙間ができると、そこから水が流れ始めます。
そして、一度水が流れ始めれば、その水流によって詰まりの原因となっているものがさらに動き、奥へ流れていくことがあります。
もちろん、それでなかなか詰まりが解消できない場合は、一度大きく押し込んだり、大きく引いたりすることを試すこともあります。
詰まりが抜けても、すぐに通常どおり流さない
作業を続けていると、ある瞬間に水がスッと流れ、便器内の水位が下がることがあります。
この瞬間、「詰まりが取れた」と思います。
しかし、ここですぐに作業を終了しないことが重要です。
詰まりの原因が完全に流れ切ったのではなく、一時的に水の通り道ができただけということもあるためです。
最初は少量の水で確認する
詰まりが抜けたように見えたら、まず少量の水を流します。
きちんと流れていくかを確認し、再び便器内の水位が上昇するようであれば、まだ詰まりが残っています。
その場合は、再びポンプを使用します。
少量の水が問題なく流れるようになったら、次に通常通りトイレを流し、それでも水位が上昇しないことを確認します。
最後にバケツの水を流して確認する
通常どおりトイレを流して問題がなければ、最後にバケツを使用します。
ある程度まとまった量の水をバケツへ入れ、一気にそれを便器へ流して、十分に排水できるかを確認します。
最近のトイレは節水型が多く、一度の洗浄で使用する水の量が以前のトイレより少なくなっています。
そのため、配管内に詰まりの原因となったものが少し残っていても、通常の洗浄では確認しにくいことがあります。
最後にまとまった水を流し、問題なく排水されることを確認してから作業を終了する方が安心です。
トイレはなぜ詰まるのか
トイレ詰まりが発生する原因は、異物を流してしまった場合はもちろんですが、一つだけとは限りません。
私自身は、大きく分けると次のような要因があり、それらが複合的に重なって詰まりにつながることが多いと考えています。
・便器内部のトラップ部分(曲がった排水経路)に引っ掛かる
・節水型トイレによる水量の減少
・大量のトイレットペーパーや流せる清掃用品などの使用
便器内部のトラップ部分
代表的なものとしてPトラップやSトラップがあります。
その文字の形のように、水を流さないときも水が溜まって、悪臭や虫が室内に出てこない形状となっています。
トラップ部分は排水経路が曲がっているため、大量のトイレットペーパーや水にほぐれにくいものを流すと、その曲がった部分に引っ掛かることがあります。
先ほどポンプの使用方法でお伝えした「詰まりを揺らす」という感覚は、この曲がった排水経路のどこかで詰まっているものを、少しずつ動かして水の通り道を作るイメージです。
節水型トイレは水量が少ない
以前のトイレは、流れる水の量が多かったので、ある程度の物も押し流してくれていました。
しかし、最近のトイレは、節水性能が非常に高くなっていて、一度の洗浄で使用する水量がかなり少なくなっています。
水道料金や環境面では大きなメリットがありますが、一方で、排水物を押し流す水量も少なくなるので、その分詰まりやすい傾向もあります。
「トイレに流せる」商品でも注意が必要
実際にトイレ詰まりの現場へ行くと、「トイレに流せる」と表示された清掃シートやウェットタイプの商品が置かれていることがあります。
もちろん、メーカーが「トイレに流せる」として販売している商品ですので、本来は水の中でほぐれやすいように作られています。
ただし、トイレットペーパーと同じ速度で完全にほぐれるとは限りません。
一度に多く流した場合や、使用頻度の高いトイレでは、十分にほぐれる前に次の排水物が流れてくることも考えられます。
そのため、未然防止の観点から、「大量のトイレットペーパーやお掃除シート等は流さないようにしてください」と説明しておくことも有効です。
固形物を落とした場合は無理にポンプを使わない
一般的なトイレットペーパーや排泄物による詰まりであれば、ポンプで解消できます。
一方、
子どものおもちゃ
生理用品
紙おむつ
芳香剤の容器
掃除用品
などを便器へ落としてしまった場合には注意が必要です。
このような異物をポンプで無理に奥へ押し込むと、便器の先や排水管のさらに奥で詰まってしまい、かえって修理が大掛かりになる可能性があります。
作業を始める前に、誤って異物を流してしまったのか、自然と詰まってしまったのか、必ず入居者へ確認してください。
固形物が原因と思われる場合には、便器を取り外して異物を回収するなど、専門業者による対応が必要になることがあります。
現場へ行く前に火災保険のサービスを確認する
トイレが詰まったという連絡があった場合、管理会社やオーナー自身が現地へ向かうと思いますが、その前に一度確認していただきたいのが、借主が加入している火災保険です。
賃貸住宅向けの火災保険には、商品によって、
トイレの詰まり
水道のトラブル
鍵のトラブル
などについて、緊急対応サービスが無料で付帯していることがあります。
もし現地へ到着するまで時間かかる、対応できる人がいない、対応して解消できるか心配、といった場合は、保険の緊急対応サービスを利用することで、無償で対応してもらえます。
しかし、基本的には30分以内で解決するような場合に無償対応となるため、異物の詰まりで便器取り外しが必要な場合は別途業者を手配する必要があります。
トイレから水があふれた場合は保険の補償も確認する
トイレ詰まりそのものは比較的小さなトラブルであっても、便器から汚水があふれると、トラブルへ発展することがあります。
例えば、オーバーフローした水によって、
トイレの床や壁が濡れる
廊下まで水が広がる
家財が汚水で濡れる
下階の天井へ漏水する
下階の家具や家電が濡れる
といった被害が発生する可能性があります。
このような場合には、借主とオーナーの双方が加入している保険を確認する必要があります。
借主側の保険
借主の過失などによって下階の入居者や第三者へ損害を与えた場合には、借主が加入している保険の個人賠償責任保険などを利用できる可能性があります。
ただし、事故原因や加入している保険の補償内容によって異なるため、実際に事故が発生した場合には保険会社へ確認する必要があります。
オーナー側の保険
建物の床、壁、天井などに被害が生じた場合には、オーナーが加入している火災保険の補償対象になる可能性があります。
これも、原因や契約している補償内容によって取り扱いが異なります。
そのため、トラブルが発生してから初めて保険証券を探すのではなく、平常時に、
借主にはどのような保険へ加入してもらっているか
水回りの無料緊急サービスがあるか
個人賠償責任補償があるか
オーナー自身の保険で水濡れ事故がどこまで補償されるか
などを確認しておくことをおすすめします。
トイレ詰まりが発生したときの対応手順
実際に入居者からトイレ詰まりの連絡が入った場合には、次のような順番で確認すると分かりやすいと思います。
①何を流した可能性があるのか確認する
トイレットペーパーなのか、流せるシートなのか、それとも固形物を落としてしまったのかを確認します。
固形物の場合には、無理にポンプで押し込まないことが重要です。
②便器の水位を確認する
水位が便器の上部まで上がっている場合には、追加で水を流さないよう入居者へ伝えます。
繰り返しレバーを操作すると、便器から水があふれる可能性があります。
③保険の緊急サービスを確認する
借主の火災保険などに緊急対応サービスが付いているのであれば、利用を検討します。
④現地ではポンプで少しずつ詰まりを動かす
一般的な紙類などによる詰まりであれば、便器へポンプを密着させ、小刻みに動かしながら水の流れを作ります。
⑤少量の水から流れを確認する
詰まりが抜けたように見えても、いきなり大量に流さず、まず少量の水で確認します。
⑥通常洗浄とバケツの水で最終確認する
十分に排水できることを確認したうえで、最後に通常の洗浄やまとまった量の水で確認します。
⑦再発する場合は設備側も調査する
同じ住戸で何度も詰まりが発生する場合には、入居者の使い方だけでなく、便器そのものや排水管の勾配、配管内部の詰まりなども確認する必要があります。
まとめ|道具・原因・保険の3つを事前に把握しておく
賃貸物件のトイレ詰まりは、管理業務を行っていれば、いつかは対応する可能性のあるトラブルです。
一般的なトイレットペーパーなどによる詰まりであれば、適切なポンプを準備し、使い方のコツを理解しておくことで、その場で解消できるケースも少なくありません。
現場へ持っていきたいのは、
トイレ用ポンプ
大きめのごみ袋
バケツ
タオル
使い捨て手袋
などです。
ポンプについては、力任せに大きく動かすだけでなく、「詰まっているものを小刻みに揺らす」というイメージで作業することで、うまく流れることがあります。
また、詰まりが解消したように見えても、その場ですぐに終了せず、少量の水、通常の洗浄、最後にまとまった量の水という順番で、本当に流れるようになったか確認することが重要です。
トイレ詰まりを繰り返す場合には、
節水型トイレ
一度に大量のトイレットペーパーを流している
流せるシートなどを頻繁に使用している
便器や排水管の状態に問題がある
といった原因も考える必要があります。
そして、万が一トイレから水があふれ、下階への漏水などに発展した場合に備え、借主とオーナーの火災保険についても確認しておくことが大切です。
トイレ詰まりは、できれば発生しないことが理想です。
しかし、発生したときに必要な道具と対応方法をあらかじめ準備し、保険や緊急サービスについても把握しておけば、慌てずに対応しやすくなります。
賃貸オーナーや管理会社の方は、一度、ご自身の関わる物件でトイレ詰まりが発生した場合の対応手順を整理してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


