マンションの屋上やバルコニーなどで、代表的な防水方法が「ウレタン防水」です。
しかし、工事会社にお任せではなく、注意が必要です。
一口にウレタン防水といっても、代表的な工法として、
密着(みっちゃく)工法
通気緩衝(つうきかんしょう)工法
があります。
この2つは施工方法だけでなく、費用や湿気への対応方法、その後のメンテナンスにも違いがあります。
そのため、違いを理解しないまま提示された見積もり通りに工事を進めると、数年後に膨れや断裂などの問題が発生し、結果として余計な修繕費がかかる可能性があります。
今回は、賃貸マンションやビルのオーナーは知っておきたい「ウレタン防水の基本」について解説します。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「ウレタン防水する前に知っておきたいこと~膨れや断裂の原因と施工方法~」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
ウレタン防水には主に2つの工法がある
ウレタン防水とは、液状のウレタン樹脂を塗り重ね、防水性のある塗膜を形成する工法です。
複雑な形状にも施工しやすいため、マンションの陸屋根やバルコニーなどで広く使われています。
代表的な工法が「密着工法」と「通気緩衝工法」です。
密着工法とは
密着工法は、その名称のとおり、ウレタン防水材を下地へ直接塗布して、下地と防水塗膜を密着させる方法です。
工程が少なく、工事費を抑えやすいことがメリットです。
通気緩衝工法とは
通気緩衝工法では、まず専用の通気緩衝シートを敷き、その上からウレタン防水材を塗ります。
さらに、「脱気筒」という設備を設置します。
下地から上がってきた水蒸気は、通気緩衝シートを通って移動し、脱気筒から外へ排出されます。
つまり、下地と防水塗膜を絶縁し、湿気の逃げ道を確保するのが通気緩衝工法の大きな特徴です。
このため、「絶縁工法」とも呼ばれています。
その代わりに、専用シートや脱気筒が必要になるため、密着工法よりも費用が高くなります。
密着工法で注意したい「湿気」
では、密着工法と通気緩衝工法では、雨水の侵入を防ぐ以外に、どのような効果の違いがあるのでしょうか。
密着工法では、下地内部の水分が水蒸気となって上へ抜けようとしても、逃げ道がありません。
その結果、防水塗膜を下から押し上げてしまい、「膨れ」が発生することがあります。
最初は小さな膨れでも、時間の経過とともに膨れが大きくなり、塗膜が断裂してしまうことがあります。
それを防ぐために、湿気の逃げ道を作ってあげるのが通気緩衝工法です。
既存防水の上から密着工法を重ねる場合にも注意
特に注意したいのが、既存のアスファルト防水やシート防水の上から、新たにウレタン防水を密着工法で施工しているケースです。
この状態で上側のウレタン防水層から雨水が入り込むと、新旧の防水層の間を水や湿気が移動し、浸水箇所とは全く違う場所から室内へ漏水したり、周囲にどんどん膨れが発生したり、状況が複雑になることがあります。
一度密着工法で施工すると撤去が大変
もう一つ知っておいていただきたいのが、将来の改修です。
「密着工法から通気緩衝工法へ変更したい」と考えた場合、基本的には現在の防水層を撤去する必要があります。
しかし、すでに浮いている部分であれば簡単に除去できますが、正常に密着している部分は簡単には剥がれません。
広い屋上で機械を使用して剥離していきますが、機械を入れにくい場所だと人の手で少しずつ既存防水層を撤去する必要があり、工事が難航します。
その分、将来の改修工事費が高額になる可能性があります。
つまり、防水工事では、今回の工事費だけでなく、次回の改修方法まで考えて工法を選ぶことが重要です。
既存防水を残して上から施工する方法もある
既存の密着工法の防水層を除去できない場合や、除去に多額の費用が発生する場合は、代替案があります。
理想的な方法ではありませんが、既存防水層に一定間隔で穴を開け、湿気の出口を作ります。その上から緩衝シートを敷き、ウレタン防水を塗布する方法です。
ただし、既存のウレタン防水層そのものが下地から浮いてくれば、その上に施工した防水層にも影響が及ぶ可能性があります。
なぜ安い密着工法が提案されるのか
ここまでの話を踏まえると、なぜ通気緩衝工法を推奨しない場合があるのか、と不思議に思うオーナーも少なくないと思います。
一つの理由として考えられるのが、工事費です。
通気緩衝工法では、密着工法よりも見積金額が高くなります。
裏を返せば、密着工法の方が安い見積もりを出せるので、受注率が高まります。
そのため、物件の将来の維持管理よりも、その場の工事受注を優先した結果、安い工法を提案する業者がいるのも実情です。
陸屋根やルーフバルコニーは通気緩衝工法
マンションの陸屋根やルーフバルコニーでは、基本的に通気緩衝工法を採用することが望ましいです。
一方で、一般的なバルコニーでは、面積が小さく、下階の軒天から湿気が逃げることから、密着工法でも膨らみが発生することは多くないので、密着工法が適しています。
このように、「密着工法が悪く、通気緩衝工法が良い」ということではなく、施工する場所、下地の状況、などによって、適切な工法を選ぶことが重要です。
防水工事の見積書で確認したいポイント
オーナーが防水工事の見積もりを受け取った場合には、「ウレタン防水」という文字だけを見るのではなく、具体的な工法まで確認してください。
例えば、
通気緩衝シートを使用するのか
脱気筒を設置するのか
既存防水層を撤去するのか、既存防水層の上から施工するのか
といった点です。
そして、工事会社へ「なぜ、この場所にはこの工法を採用するのですか」と聞いてみることをおすすめします。
まとめ|ウレタン防水は「工法」まで確認する
ウレタン防水には、代表的な工法として「密着工法」と「通気緩衝工法」があります。
密着工法は比較的施工費を抑えやすい一方、下地の湿気が逃げにくく、条件によっては膨れや剥離などにつながる可能性があります。
通気緩衝工法では、専用シートと脱気筒などを使用し、下地から発生する湿気を逃がす仕組みを設けます。
その分費用は高くなりますが、既存下地の状態などによっては、長期的な防水性能を考えるうえで有力な選択肢になります。
特に、陸屋根やルーフバルコニーなど、雨漏りが発生すると下階へ直接影響する場所では、価格だけで工法を決めるのではなく、下地や既存防水層の状態を踏まえて慎重に選ぶことが重要です。
防水工事の見積書に「ウレタン防水」と書かれていたら、それだけで終わらせず、「密着工法ですか、それとも通気緩衝工法ですか」と、一歩踏み込んで確認し、その工法を選んだ理由も聞いてみてください。
防水工事は、一度施工すると長期にわたり使用していくものです。
その場の工事費だけではなく、将来の漏水リスクや次回の改修工事まで考えたうえで、建物に適した工法を選ぶことが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


