集合住宅やビルを所有しているオーナーは、共用廊下の照明、エレベーター、給水ポンプなどに使用する電気料金を支払っていると思います。
しかし、毎月の電気料金は何となく支払い続けており、ご自身の建物がどのような電気契約になっているのか、詳しく把握していないオーナーも少なくありません。
電力会社を変更することで、一定の削減効果を得られる場合はありますが、建物の共用部分で使用する電力量が少なければ、削減できる金額も限定的です。
一方で、エレベーターや各種ポンプが設置されている建物では、電気契約を見直すことにより、基本料金を年間10万円前後削減できる可能性があります。
今回は、マンションやビルで使用される電気契約の種類と、低圧動力の基本料金を削減する方法について解説します。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「電気契約の種類と基本料金の見直し」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
建物で使用される電気契約の種類
建物へ供給される電気は、大きく分けると、次の2種類です。
高圧電力
低圧電力
建物の規模、用途、設置されている設備などによって、契約内容は異なります。
まずは、それぞれがどのような建物で利用されているのかを確認します。
高圧電力とは
高圧電力は、一定規模以上ビルで使用されることが多い電気契約です。
高い電圧の電気を建物まで一括して引き込み、建物内に設置された「キュービクル」と呼ばれる受変電設備で、使用できる電圧へ変換します。
変換された電気は、各テナントや共用設備へ供給されます。
高圧電力ではオーナーが電気料金を一括して支払う
高圧電力を使用するテナントビルでは、建物全体の電気料金がオーナーへ一括請求されます。
その場合、オーナー側で各テナントの子メーターを定期的に検針し、それぞれの使用量に応じて各テナントに電気料金を請求します。
低圧電力とは
一般的な集合住宅の共用部分では、低圧で供給される電気が使用されています。
低圧の電気契約には、主に次のような種類があります。
定額電灯
従量電灯
動力
同じ建物の中で、従量電灯と動力を別々に契約していることもあります。
なお、電力会社では動力を「低圧電力」と表記し、定額電灯や従量電灯はそのままの表記となっています。
定額電灯とは
定額電灯は、電気の使用量をメーターで計測せず、設置されている電気設備などに応じた一定額を毎月支払う契約です。
共用部分の設備が照明程度しかない小規模なアパートなどで利用されていることがあります。
近年では、集合住宅に導入されているケーブルテレビやインターネット回線を、従来の同軸ケーブルから光ファイバーへ切り替えるケースが増えています。
動画撮影時点では、従量電灯に切り替えが必要と言われていたため「定額電灯では、光回線用の機器を接続できない場合がある」と解説しましたが、その後のやり取りで定額電灯でも確認できることが分かりました。
しかし、機器が増えるため月額は従来に比べて数百円程度の増額が発生します。
従量電灯とは
従量電灯は、電気メーターで計測された使用量に応じて、電気料金を支払う契約です。
集合住宅では、共用部に様々な電気を使用する機器が設置されています。
契約アンペアや契約容量が実際の使用状況に対して過大であれば、見直せる可能性がありますが、あまり大幅な削減につながらないことが多いです。
大幅な削減が期待できるのは低圧動力
今回、特に注目していただきたいのが、「動力(低圧電力)」です。
動力は、照明やコンセントなどではなく、主にモーターを動かす設備に使用されます。
マンションやビルでは、次のような設備が対象になります。
エレベーター
給水増圧ポンプ
揚水ポンプ
排水ポンプ
機械式駐車場
自動車用エレベーター
エレベーターが設置されている建物では、多くの場合、共用照明などに使用する従量電灯とは別に、動力の契約を締結しています。
動力(低圧電力)の契約には2つの方法がある
低圧電力の契約には、以下の2つの方法があります。
負荷設備契約
主開閉器契約
現在の契約が負荷設備契約である場合、主開閉器契約へ変更することで、基本料金を大幅に下げられる可能性があります。
負荷設備契約とは
負荷設備契約は、建物に設置されているエレベーターやポンプなどの設備容量を基に、契約電力を決める方法です。
例えば、エレベーターとポンプ類が設置されているマンションがあります。
各機器には低圧電力を契約する際に必要な「容量」が設定されています。
エレベーターは7kWで、ポンプ類は3kWだった場合は、合計で10kWの基本料金が発生しています。
この場合、本記事執筆時点の東京電力が公表する基本料金は1kWあたり1,098円なので、月額10,980円となります。
東京電力エナジーパートナー「料金単価表‐電力」
しかし、実際には、エレベーターが動いているときに、すべてのポンプが同時に最大出力で作動することは多くありません。
それにもかかわらず、設備容量を基準に契約していると、実際の使用状況に比べて過大な契約容量になっている可能性があります。
主開閉器契約とは
主開閉器契約は、建物の主開閉器(メインブレーカー)の容量を基に、契約電力を決める方法です。
従来型のブレーカーは、電流によって生じる熱を利用して作動するため、実際に流れている電流を測定できず、最大容量で契約する他ありませんでした。
しかし、2000年前後から「電子ブレーカー」が普及し始めました。
電子ブレーカーは、実際に流れている電流と、その電流が流れている時間を電子的に測定し、一定の基準を超えた場合に電気を遮断します。
これにより、建物の電気使用状況に合わせて、より適切な契約容量を設定しやすくなりました。
実際の設備の動き方を計測する
主開閉器契約へ変更する際には、エレベーターやポンプなどが動いたときに、どの程度の電流が流れているのか、複数の設備が同時に動くことがあるのかなどを一定期間計測します。

その結果を基に、安全に使用できる電子ブレーカーの容量と、変更後の契約電力を検討します。
実際の使用状況に応じて契約容量を設定できるため、負荷設備契約よりも基本料金を抑えられる可能性が高いです。
実際に、10kWから2kWまで基本料金を下げることができ、年間10万円以上の削減に成功した事例もあります。
まずは電気料金の明細を確認する
低圧動力の契約を見直す際には、まず電気料金の請求書や明細書を確認します。
「ご契約種別」が低圧電力となっていて、「ご契約」にあるkWが7kW以上になっている場合は、見直しの対象になる可能性があります。
ただし、契約電力が大きいからといって、必ず変更できるわけではありません。
建物に設置されている設備の種類、運転状況、同時使用の可能性などを調査したうえで、安全性を確保できる契約容量を決める必要があります。
負荷設備契約から主開閉器契約へ変更する流れ
負荷設備契約から主開閉器契約へ変更する場合には、一般的に次のような流れで進めます。
①電気料金の明細を専門業者へ提示する
まず、現在の電気料金の明細を専門業者へ見せます。
明細に記載された契約電力や基本料金などから、削減できる可能性があるかを確認してもらいます。
もっと安い業者はあると思いますが、参考までに弊社が依頼している業者はこちらです。
株式会社ユニバーサルリンクス
②建物の電気使用状況を計測する
建物へ計測機器を設置し、エレベーターやポンプなどが使用する電流を調査します。
設備が単独で動いた場合だけでなく、複数の設備が同時に作動した場合の使用状況も確認します。
③削減額を確認する
計測結果を基に、専門業者から提案書が提出されます。
これにより、年間の削減見込額や電子ブレーカーの設置費用、初期費用を回収するまでの期間などを確認して、メリットがあれば依頼することになります。
④電子ブレーカーの設置と電力会社への申請
電子ブレーカーを設置し、電力会社へ主開閉器契約への変更を申請します。
通常は、専門業者が設置工事と申請手続きをまとめて対応します。
電子ブレーカーの設置費用
電子ブレーカーの設置や電力会社への申請には、初期費用がかかります。
当社が実際に依頼した事例では、1件当たりの費用は33万円(税込)でした。
私が実際に携わった建物では、負荷設備契約から主開閉器契約へ変更したことにより、年間約10万円の削減や約12万円の削減に成功した事例があります。
初期費用が33万円で、年間11万円を削減できた場合、3年間で初期費用を回収できる計算になり、4年目以降は、減額した分の恩恵を受けることができるようになります。
もちろん、電子ブレーカーにも寿命があり、将来的には交換が必要です。
ただし、数年ごとに交換するような設備ではないため、年間10万円前後の削減効果を長期間得られるのであれば、検討する価値があります。
まとめ|エレベーター付きの古い建物は契約明細を確認する
集合住宅やビルの電気契約には、高圧電力、定額電灯、従量電灯、低圧動力などがあります。
このうち、電気料金を大幅に削減できる可能性があるのは、エレベーターや各種ポンプに使用されている動力(低圧動力)です。
特に、次の条件に該当する建物は、契約を見直す価値があります。
エレベーターやポンプが設置されている
機械式駐車場が設置されている
平成20年以前に建築された建物
電気契約を長期間見直していない
低圧電力の契約が7kW以上になっている
現在の契約が負荷設備契約であれば、電子ブレーカーを設置し、主開閉器契約へ変更することで、基本料金を大幅に下げられる可能性があります。
まずは、お手元にある電気料金の明細を確認し、低圧電力の契約電力が何kWになっているかを確認してみてください。
契約電力が大きい場合には、専門業者へ明細を提示し、現在の契約内容、変更後の削減見込額、初期費用の回収期間について提案を受けることをおすすめします。
ちなみに、中には悪徳業者もいて、多額の費用を支払ったのにほとんど減額できなかった、というケースもありますのでご注意ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


