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無断ペット飼育で退去要請~品川区一棟マンション~

最新更新日 2026年06月09日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

今回は、品川区内でペット禁止にしている一棟マンションで、ペットを飼育してしまった入居者に退去をお願いした事例を紹介いたします。

単なるペット飼育の問題だけではなく、騒音トラブルへの対応方法、証拠収集の進め方、原状回復費用の精算方法、そして退去後の合意書締結など、実務上参考になる要素が多い事例です。

入居者から寄せられた苦情

管理を受託してから1年ほど経過した頃、ある入居者から次のような連絡がありました。

「隣の部屋から犬の吠える声が聞こえるので対応してほしい」

この建物はペット禁止のマンションです。
吠える声の聞こえる方のお部屋は角部屋であり、その隣室の可能性は高いと感じました。
しかし、騒音問題というのは非常に難しいものです。

実際には、
・隣の部屋だと思ったら違った
・上階だと思ったら下階だった
・真上ではなく斜め上だった

というケースも珍しくありません。

今回のケースでは、まずは事実確認と調査を行うことにしました。

防犯カメラによる調査

このマンションには防犯カメラが設置されていました。
映像を確認したところ、確かに犬を連れて出入りしている人物が映っていました。

しかし、犬を連れて建物内へ入る様子は確認できても、どの階に住んでいるのかまでは特定できませんでした。
そこで、まずは4階以上の可能性を消すために、4階部分へ仮設の防犯カメラを設置することにしました。

仮設カメラの設置

使用したのは、私が普段から調査で利用しているREVEXのカメラです。
最近は買い替えて「センサーカメラSD2500」を活用しています。

SD2500は蓋を開けるとモニターがあるため、パソコンに接続しなくてもその場で映像確認が可能です。
また、人感センサー機能(動きを感知した時だけ録画)が付いており、長期間の監視にも向いています。

ただし、仮設カメラをそのまま設置すると盗難や故意による破損のリスクがあります。

そのため、
・ワイヤーで固定
・鍵で施錠
・隣に「調査中」である旨を掲示

といった対策を行いました。

実際に設置して確認したところ、4階以上へ犬を連れて上がる映像は一切確認できませんでした。
一方で、下の階から上がってくる映像は確認できました。

この結果から、犬を飼育しているのは2階か3階のいずれかであることが判明しました。

共用部への掲示と対象範囲への投函

いきなり特定住戸へ注意することは避け、マンション全体に対しての注意喚起として、書面を共用部への掲示と対象となりうる世帯への投函を行いました。

なぜそのような周りくどい方法を取ったのかには理由があります。
「空振り」を避けることはもちろん、直接指摘することにより感情を損ねてしまい、問題解決に協力してくれなくなるリスクもあります。

今回のケースだけでなく、騒音問題でも、まずは建物全体への注意喚起から始めるのが基本です。

内容としては、

・犬の鳴き声を聞いたり、実際に犬の出入りが目撃されたりしている
・本物件はペット飼育禁止であること
・心当たりがある方や目撃者は連絡してほしいこと

を記載しました。

本人からの自主申告とその後の処理

すると、比較的早い段階でご本人から連絡がありました。
ご本人にも事情はあったようですが、話し合いの結果、遅くとも1か月以内には退去するということで合意することができました。

しかし、明け渡しの後も一筋縄ではいきませんでした。

退去後の状況と原状回復費用の請求

退去後に室内へ入ってみると、まず動物臭がこびりついていたのでクロス全面貼り替えが必要であったことに加えて、予想以上に損傷がありました。
一部を抜粋して紹介します。



まずはリフォーム業者から原状回復工事の見積もりを取得し、退去者に内容を説明しました。

すると、
「本当にそんなにかかるのか」
と驚かれ、お知り合いのリフォーム業者から連絡がありました。

そこで事情を説明したところ、その業者の方も状況を理解してくれたようで、おそらく「これは仕方ないよ」と説明してくれた模様で、納得した旨の連絡がありました。

支払い方法と合意書締結

原状回復費用が確定し、その費用から敷金と日割り家賃の返還分を差し引いても、なお残額がありました

退去者は一括で支払うことが難しいと主張があったため、賃貸オーナーと相談して3回の分割払いで合意しました。
その内容を合意書にまとめ、最終的には完済していただくことができました

なぜ退去後に合意書を締結できたのか

実務経験のある方であれば、「なぜ退去後に合意書を締結できたのか」という疑問を持たれるかもしれません。
通常であれば、退去後に音信不通となり、そのまま回収できなくなるケースもあります。

今回のケースで合意書を締結し、分割金を全額回収できたのには、大きな理由が2つあると考えています。

理由①:親族への連絡をほのめかす

この物件では保証会社ではなく、親御様が連帯保証人になっていました。
入居中に家賃滞納が発生したこともあり、そのやり取りの中で、親御様への連絡を非常に嫌がる傾向があることも分かっていました。

もちろん「親に連絡するぞ」と脅すような言い方をするとトラブルになります。
「どうしてもご納得いただけない場合には、親御様も交えて相談する必要が出てくるかもしれない」とお伝えしました。

主旨は同じでも、言い方を柔らかくして伝えることで、協力的に話し合いへ応じていただけるようになりました。

理由②:合意書締結を提案する際の伝え方

合意書を締結するときに、
「これはあなたに支払い義務を認めさせるための書類です」
という説明をすると、多くの方は警戒します。

そこで、私は次のように説明します。

今回の金額で話がまとまっていますが、今後工事を進める中で追加の損傷が見つかる可能性があります。
また、オーナーが第三者へ相談した結果、新たな請求項目が出てくる可能性もあります。

そうなれば、こちらも再度交渉しなければなりません。
しかし、それは弊社も避けたいですし、ご本人としても後から追加請求されるのは嫌だと思います。
だからこそ、今の段階で金額を確定させるために合意書を締結しましょう。

そう説明すると、
「後から請求されないための書類」
という理解になり、協力的になっていただける
ケースが多くあります。

おわりに

今回は、ペット禁止のマンションで犬を飼育していた入居者に退去していただいた事例を紹介しました。

こちらは、集合住宅では発生しやすい「騒音の苦情」や、賃貸住宅で発生しやすい「原状回復問題」への対応で、参考になるのではと思います。

もちろん、このような問題が発生しないことが一番です。
しかし、万が一同様の事案に遭遇した場合には、今回の事例が対応の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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