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敷金・礼金の有無による効果

最新更新日 2026年05月11日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

空室対策の一つとして、初期費用をなるべく下げた方が良いのでは、と考える賃貸オーナーも少なくないと思います。

実際に、元々敷金や礼金を1か月分に設定していれば無にしてしまい、差別化を図るケースもあります。
もちろんその方法も空室対策には有効な場合が多いですが、実際の効果について考えていくと、一概に敷金や礼金を無にすることが最適解かと言われれば、そうでない場合も少なくありません

今回は、経験則と実際に調査したデータをもとに、敷金や礼金を無にした場合の効果について解説します。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「敷金・礼金有無の効果」
という動画の内容を、文字で整理したものです。

敷金と礼金の性質

まず、基本的なところからおさらいしていきたいと思います。

敷金=預り金(原則)

敷金とは、原則として預り金です。
借主から預かった敷金は、退去時に原則として返還するものです。

実務上は、預かっていた敷金から、退去時のクリーニング費用、必要に応じた原状回復費用、契約書で定めていれば振込手数料などを差し引き、余りがあれば無利息で返還します。

つまり、賃貸オーナーにとっては一時的に預かっているお金であり、借主にとっては退去時に残額が返ってくる可能性のあるお金です。

退去時の敷金償却

ただし、契約内容によっては、敷金償却という定めがある場合もあります。
これは、預かった敷金の全部または一部を退去時に返還しないという内容です。

例えば、敷金1か月を全額償却とする契約であれば、退去時にクリーニング費用や原状回復費用へ充当し、仮に余りが出ても返還しないという扱いになります。
一方で、原状回復費用等が敷金を超えた場合には、別途借主に請求することになります。

このように、敷金は原則として返還されるものですが、契約内容によっては償却される場合もあります。
なお、税務上は償却としたものは受け取った時点で返還せず賃貸オーナーの収入となることが確定しますので、礼金と同様に売上計上する必要があります。

敷金なし&クリーニング代先預かり

敷金なしで募集する場合、一般的には、最低限必要になる退去時クリーニング費用を契約時に先に預かっておく方法が多いです。
この方法であれば、退去時に最低限必要となるクリーニング費用について、未回収になるリスクをある程度抑えることができます。

一方で、契約時には預からず、退去時にクリーニング費用を請求する契約にしているケースもあります。
ただし、退去時に請求する形は、実務上なかなか難しい面があります。

借主が快く支払ってくれる場合は問題ありません。
しかし、支払いに納得していない場合や、連絡が取りづらくなった場合には、回収が難しくなる可能性があります。

保証会社によっては、退去時のクリーニング費用が契約や規約で明確に定められており、借主が支払わない場合には保証の対象になることがあります。

一方で、保証会社によっては、借主の同意がなければ支払えないという内容になっている場合もあります。
そうすると、退去時に借主が「支払いたくない」と言っているにもかかわらず、保証会社から回収できるのかという問題が出てきます。

そのため、敷金なしにする場合であっても、クリーニング費用については契約時に先に預かっておく方が安全だと考えています。

なお、この場合もクリーニング代は預り金ではなく、売上計上する必要があります。

敷金償却やクリーニング代先預かりのデメリット

小規模の事業者であれば、そもそも税務調査が入る可能性が低いので指摘される可能性が低いですが、賃貸オーナーが自身で確定申告を行っている場合、敷金償却や先預かりしたクリーニング代を通常の敷金と同様に「預り金」で処理しているケースがあります。

しかし、これは本来売上計上するべきものなので、税務調査が入った場合に指摘される可能性があります。

また、税制に則って売上計上している場合かつ所得税や住民税の納税が発生する場合は、その税額分だけ預り金が減っていることになるため、退去時と年度が異なると実質的に預り金が減っていることになってしまいます。

礼金=賃貸オーナーの収入

礼金は、賃貸オーナーにとっては収入なので、借主にとっては、支払ったら返ってこないお金です。
この点が、敷金との大きな違いです。

借主からすると、家賃を支払い、仲介手数料を支払い、引っ越し費用もかかります。
その上で、さらに礼金も支払う必要があるとなると、「なぜ返ってこないお金を払わなければならないのか」と感じる方も少なくありません。

特に最近は、礼金なしの物件も増えているため、礼金ありの物件は比較検討の中で不利に見られることがあります。

中には、最初から検索条件で「礼金なし」にチェックを入れて探す方もいます。
その場合、礼金ありの物件はそもそも検索結果に表示されません

この点は、募集戦略上、非常に大きな意味を持ちます。

礼金・更新料は家賃の前払い的な性質がある

礼金について法律的な性質にも触れておくと、更新料と同じように、家賃の前払い的な性質があると考えられています。

例えば、2年契約の場合、本来であれば毎月の賃料をもう少し高く設定するところを、毎月の賃料を少し抑える代わりに、その不足分を礼金や更新料として一括で受け取るという考え方です。

一般の借主がそのように認識していることはほとんどないと思いますが、法的な考え方としては、礼金や更新料にはそのような性質があるとされています。

そのため、契約書上は、礼金や更新料について、途中解約があっても返還しない旨を明記しておいた方が安全です。

例えば、更新料を支払った後、1年で中途解約した場合に、「残り1年分があるのだから返してほしい」と言われる可能性もゼロではなく、過去にそのような申し出を受けたこともありました。

敷金・礼金有無による効果

ここからは、敷金・礼金を有・無にした場合の効果について考えていきます。
今回は、東京界隈でよく見られる、敷金1か月・礼金1か月をベースに考えます。

なお、ここからのお話は統計データだけに基づくものではなく、私自身がこれまで多くの物件を募集してきた中での経験値や肌感覚を含みます。
そのため、絶対的な正解というより、実務上の一つの考え方として聞いていただければと思います。

敷金有・礼金無の場合

これは、かなり効果があると感じています。

借主が複数の物件を比較しているとき、立地や広さ、築年数、設備などに大きな差がなければ、礼金がある物件よりも礼金なしの物件の方が選ばれやすくなります

契約時には、仲介手数料、前家賃、火災保険料、保証会社の初回保証料、引っ越し代など、さまざまな費用がかかります。

場合によっては、今住んでいる物件と新しい物件の家賃が重なる期間もあります。

そうすると、初期費用はかなり大きな負担になります。
その中で、礼金が1か月分なくなることは、借主にとって大きな魅力になります。

特に、礼金は返ってこないお金です。
そのため、「どうせ払うなら、返ってくる可能性のある敷金の方がまだ納得できる」と考える方も多いと思います。

そういった意味で、礼金なしにすることには十分な効果があります。

敷金無・礼金有の場合

この条件について、私はあまり効果が大きくないと感じています。

なぜなら、先ほどお話ししたとおり、敷金は預り金であり、借主の中にも「残れば返ってくるお金」という認識が比較的浸透しているからです。

もちろん、初期費用を抑えられるという意味では、敷金なしにも一定の効果はあります。
しかし、借主が本当に嫌がるのは、支払ったら返ってこない礼金であることが多い印象です。

実際、私自身がお部屋探しの現場に関わっていたときも、「礼金なしの物件がいいです」という希望はよく聞きました。一方で、「敷金なしの物件がいいです」という希望は、ほとんど聞いた記憶がありません。

そのため、敷金をなくして礼金を残すよりも、敷金は預かり、礼金をなくす方が、募集上は効果が出やすいと考えています。

敷金・礼金ともに無の場合

一般的には、敷金有・礼金無よりも、敷金・礼金ともに無の方が効果は高まるように思えるかもしれません。
しかし、私の実務上の感覚では、敷金有・礼金無と比べて、劇的に効果が高まるわけではないと感じています。

敷金は返還される可能性のあるお金であるため、礼金ほど強く嫌がられる印象はありません。
そのため、敷金・礼金ともに無にしていた物件を敷金有・礼金無にしてみたことがありますが、募集上の反応はほとんど変わりませんでした。

以前は敷金・礼金ともに無を推奨していたときもありましたが、敷金を預からない場合は退去時の原状回復費用や未払い費用を担保するものが減ってしまうこと、前述した税務上の問題から、効果が少ないのにデメリットは増えるということで、バランスが悪い戦略のように感じています。

そのため、個人的には、敷金については地域相場に合わせて、東京界隈であれば1か月程度は預かっておいた方がよいと考えています。

礼金有無による差別化のデータ

今回の解説を行うにあたり、賃貸募集のポータルサイト「SUUMO」で品川区全域を対象として、最初は何もチェックを入れずに検索し、次に「礼金なし」にチェックを入れて再検索し、その件数を比較しました。

これは以前から肌感覚として感じていたことですが、礼金有無による効果は、その物件の賃料の価格帯によっても大きく効果が異なると感じていましたが、それがデータとして知ることができました。

賃料10万円までの場合

最初は8,843件の該当がありましたが、「礼金なし」にチェックを入れると1,419件となりました。
つまり、競合物件のうち約84%がなくなり、約16%にまで絞り込まれたことになります。

これは非常に大きな差です。
例えば、競合物件が10件あった場合、礼金なしにすることで、競合が1件から2件程度まで減る可能性があるということです。

特に10万円以下の物件では、借主の初期費用に対する感度が高い傾向があります。
そのため、礼金なしにすることは、早期成約につながりやすいと考えています。

10~20万円の場合

次に、10~20万円の物件で調査を行いました。
最初は42,139件でしたが、「礼金なし」にチェックを入れると20,149件となり、約47.8%という結果になりました。
つまり、約半数が減ったということになりますので、10件の競合があれば、5件程度まで減るイメージです。

これを大きな効果と見るか、そこまで大きくないと見るかは考え方次第です。
ただ、私の実務感覚としては、10万円から20万円くらいの物件では、礼金なしの効果はかなりあります

実際に、弊社で管理している物件の中にも、10万円から20万円くらいの賃料帯の住戸が多い建物があります。
その建物では、コロナ禍の影響もあり、礼金なしで募集しています。

弊社では、他社経由の内見であっても、原則として私が立ち会って室内をご案内しています。
その際、申込に至った方や内見中の雑談の中で、「礼金がないのは魅力的でした」と言われることがよくあります。

この経験からも、10万円から20万円の賃料帯では、礼金なしはかなり有効だと感じています。

20万円以上の場合

最初は27,376件でしたが、「礼金なし」にチェックを入れると15,431件となり、約56.4%になりました。
10~20万円の場合と比較して、効果が減っていることが分かります。

ちなみに、25万円を超えるような物件では、礼金の有無による効果はかなり薄くなると感じています。

これは、毎月そのくらいの家賃を支払える方は、もちろん初期費用が安い方がよいとは思いますが、それ以上に、物件の質や立地、広さ、設備、眺望、グレードなどを重視する傾向があるためです。

また、高額賃料帯になるほど物件数自体が少なくなります。
選択肢が限られるため、礼金があるかどうかよりも、自分たちの希望条件に合っているかどうかが重視されやすくなります。

実際に、20万円後半以上の物件を担当した際には、礼金ありで募集しても問題なく成約するケースが多く、礼金について交渉されることもあまりありませんでした。

そのため、高額帯の物件では、礼金をなしにするよりも、物件の魅力をしっかり伝えることの方が重要になる場合もあります。

敷金・礼金をどう設定するべきか

では、実務上どのように設定すればよいのでしょうか。

まず、敷金については、地域相場に合わせて預かっておくことをおすすめしています。
東京界隈の住居系物件であれば、敷金1か月が一つの目安になると思います。
敷金を預かっておけば、退去時のクリーニング費用や原状回復費用、未払い賃料などに対応しやすくなります。

次に、礼金については、物件の価格帯や競合状況によって判断するのがよいと思います。
東京界隈であれば、10万円以下の物件は礼金なしにする効果はかなり大きいと考えられます。

一方で、25万円以上、30万円前後以上の物件では、礼金なしの効果は相対的に小さくなる可能性があります。
その場合は、礼金を残したままでも十分に成約できることがあります。

今まで敷金1か月・礼金1か月で募集していた物件について、反響が弱い場合や空室期間が長引いている場合には、試験的に礼金なしにしてみるのも一つの方法です。

条件変更前と変更後で、問い合わせ数、内見数、申込までの期間がどう変わるかを確認すると、その物件における礼金なしの効果を把握しやすくなります

おわりに

今回の内容は、私自身の実務経験に基づく部分も多く含まれています。
絶対的な正解というわけではなく、地域によっても傾向が異なることもあると思います。

しかし、もし長期空室でなかなか物件が決まらないといった場合、長期空室よりも諸条件を見直して早期に成約させてしまった方が合理的な場合も少なくありません。

その判断材料として、SUUMOをはじめとするその地域でよく使われているポータルサイトで、実際にどのくらい差別化が図れるのかを調査し、実際に効果を試してみて、その物件に合った最適解を見つけていくことが重要と思います。

この記事が敷金・礼金の設定を考える際の一つの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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