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【第2回】定期借家契約でよく聞く欠点と実務の実態~大家のための定期借家講座~

最新更新日 2026年11月01日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

「大家のための定期借家講座」第2回は、定期借家契約でよく聞く欠点と、その実態について解説します。

定期借家契約を不動産会社に相談すると、「家賃を下げないと決まりません」「入居者が見つかりにくくなります」と言われることがあります。

しかし、定期借家契約だから、必ず家賃が下がったり、空室期間が長くなったりするわけではありません。契約期間や再契約に関する方針、募集時の説明によって、入居希望者の受け止め方は変わります。

私はこれまで、数百件(千件以上?)に及ぶ定期借家の新規契約に携わってきました。今回は、その経験をもとに、欠点が生じやすい場面と、活用するうえでのポイントをお伝えします。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「【第2回】よく聞く欠点と実態~定期借家講座~」
という動画の内容を、文字で整理したものです。

定期借家契約でよく挙げられる二つの欠点

よく聞く欠点は、主に次の二つです。

① 普通借家契約と比べて、家賃を下げる必要がある
② 入居希望者が敬遠し、入居者が決まりにくくなる

家賃が下がり、さらに空室期間が延びれば、賃貸収入への影響は大きくなります。リスク対策として魅力を感じても、導入をためらうのは自然なことです。

ただし、同じ定期借家契約でも、「数年後に必ず明け渡してもらいたい物件」と「再契約を検討しながら長く住んでもらいたい物件」では、募集条件が異なります。この違いを整理して考えることが大切です。

家賃が下がるかどうかは、貸し方によって変わる

例えば、「転勤中の2年間だけ貸したい」「3年後に取り壊す予定がある」といった場合はどうでしょうか。

このような物件では、借主は将来の引っ越しを見込んで入居を判断します。住める期間が限られるため、長期居住を希望する人にとっては選びにくくなり、相場より家賃を抑える必要が生じることがあります。

一方、基本的には長く住んでもらいたいものの、万が一のトラブルに備えて定期借家契約を採用するケースが増えています。

私が扱ってきた物件では、この方針であることを説明することで、いつも家賃を下げずに成約しています。

また、契約期間が4~5年以上と比較的長い場合も、あまり影響はありません。

入居者が決まりにくい原因は、説明不足の場合がほとんど

募集時に定期借家契約であることだけを伝えると、入居希望者は「契約期間が終われば、必ず退去させられる」と受け取ります。

しかし、リスク対策が目的であれば、問題がなければ再契約によって長くお住まいいただきたいと考えています。

その目的をお伝えすることによって、借主にとっては、住み続けられる見通しが立つので、入居後の不安が払拭されます。

一棟のアパート・マンションでは魅力になる

私が関わった建物には、オーナーが以前から定期借家を希望していたものの、実現できていなかった物件がありました。私が携わるようになってから、各住戸の契約を順次、定期借家で運用するようにしました。

その建物では、入居前のアンケートを実施しており、その項目の一つに「この物件を選んだ理由」がありました。すると、「定期借家契約だから」と回答する方が複数いました。

その理由は、未然に定期借家を懸念する心当たりのある方が住まない環境であること、入居後に隣接世帯で何かあっても合法的に対処してくれることが安心感に繋がりました。

これは区分マンションでは実現できないため、一棟全体で統一した管理方針を示せることは、一棟のアパートやマンションの強みです。

私が扱う新築物件では、全住戸を定期借家で募集し、一部大手法人は除き、全て定期借家で決まっています。

不動産会社が定期借家を懸念する理由

オーナーから不動産会社に定期借家契約を活用したいと相談しても、ネガティブな反応が返ってくることが非常に多いのが実情です。

私が感じているネガティブな反応の理由は、「不動産会社にとって面倒だから」の一言に尽きます。

では、どのような面倒な理由があるのでしょうか。

面倒①:そもそも法的要件を調べるのが面倒

今まで普通借家しか扱ってこなかった不動産業者にとっては、定期借家という新しいものを扱うために、どのような法的要件があるのか調べるのがそもそも面倒という心理があります。

面倒②:法的要件を満たすための書類作成や説明が面倒

法的要件を理解したとしても、普通借家より作成する書類も多くなるのが面倒と感じます。

新規契約では事前説明書が必要になるので、追加書類の作成が発生し、説明事項も増えてしまいます。

また、契約書の内容も普通借家と変えていかなければいけません。

面倒③:再契約のときに手続きが面倒

普通借家における「更新」では、「更新契約書」や「合意書」といった書面1~2枚を郵送し、署名捺印して返送してもらえれば、手続きが完了します。

しかし、定期借家には、そもそも更新という概念がなく、「再契約」は全て新規契約と同じように手続きする必要があります。

再契約の度に以下の書類を準備して、さらに賃借人に対面またはオンラインで説明をしなければいけません。

・重要事項説明書
・賃貸借契約書
・事前説明書
・(東京であれば)賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書

など

手間は増える一方で、手数料は普通借家と一緒であることが多いので、手間だけ増えるという印象を持つ不動産業者は少なくありません。

面倒④:ミスしたら自社の責任になるのが面倒

もし定期借家契約の要件に不備があり、トラブルに発展した場合は、基本的に不動産会社の責任になります。

普通借家であれば発生しなかった責任が生まれてしまうリスクがあるのは、不動産業者にとって大きな懸念点になってしまいます。

面倒⑤:立退きの諸費用を出すのはオーナーなので面倒

もし賃借人との契約を解除して明け渡しを求める場合、それに伴う立退き費用や弁護士費用、その他諸費用を負担するのは大家さんなので、不動産業者の懐は痛みません。

つまり、自分たちの懐は痛まないし、大家さんが負担するなら、普通借家より明け渡しを求めやすくなる定期借家は面倒でしかない、という発想に至ってしまいがちです。

欠点を一律に捉えず、物件と運用体制で判断する

定期借家契約の家賃や成約への影響は、期間、再契約の方針、説明方法、物件の競争力によって変わりますので、「必ず不利になる」というものではありません。

反対に、建物一棟で運用することによって、物件の魅力に繋がることもあります。

そのためには、定期借家を採用している意図を適切に説明し、確実に運用できる体制があれば、定期借家契約は賃貸経営の有効な選択肢になります。

ぜひ採用したいと思って現在付き合っている不動産業者に相談しても、協力してくれるケースは少ないのが実情です。
その理由は、不動産業者にとっての「面倒」がハードルになってしまっています。

場合によっては不動産業者の切り替えを検討する必要がありますが、まずは協力を得られるための方法を今後お伝えできたらと思います。

次回は、定期借家契約を成立させるための具体的な要件を解説します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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