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管理会社が公開する「入居率」で本当に比較できる?計算方法によって数字が変わる理由

最新更新日 2026年09月11日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

賃貸管理会社のホームページを見ると、「入居率99%」「高い入居率を維持しています」といった表記を見かけることがあります。

空室に悩んでいるオーナーからすれば、入居率の高い管理会社ほど、募集力の高い会社に見えると思います。

しかし、ここは注意が必要です。

なぜなら、入居率そのものの計算式が似ていても、

・何を管理戸数に含めるのか
・退去後の何日目から空室とするのか
・原状回復工事中を空室として数えるのか
・申込日・契約日・契約開始日のどこまでを空室とするのか
・1年間の平均なのか、特定日時点の数字なのか

といった計算の前提が、管理会社によって大きく異なるからです。

今回は、管理会社が公開する「入居率」の計算方法と、数字を見る際にオーナーが確認しておきたいポイントについて解説します。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「管理会社の公開する「入居率」は適当だった?」
という動画の内容を、文字で整理したものです。

入居率の基本的な計算方法

最も単純な入居率の計算方法は、「1-(空室戸数÷管理戸数)」です。

例えば、100室を管理しており、そのうち10室が空室であれば、

1-10室÷100室=90%

となります。したがって、入居率は90%です。

日数計算による入居率の計算

ただし、前記の方法では、1年間ずっと空室だった部屋と、たまたま計算日時点で1日だけ空室だった部屋が、同じ「1室」として扱われてしまいます。

そのため、実態に近い入居率を確認するのであれば、戸数だけでなく、空室日数を基準として計算した方が適切です。

1-(年間の総空室日数÷管理戸数の年間総日数)

例えば、空室日数が10室×30日だった場合は、以下のようになります。

1-(10室×30日)÷(100室×365日)≒99.18%

しかし、ここからが問題です。

同じ「空室日数」を使う場合でも、どの日を空室として数えるかによって結果が変わります。

違い①:退去後の何日目から空室として計算するのか

入居率に大きく影響するのが、退去後の空室期間をどのように扱うかです。

例えば、品川区の管理を扱っている大手管理業者を調査しました。

C社は、退去日の翌日から30日後から空室とカウントすると公表しています。つまり、29日間の控除があります。

先ほどの計算例では、ほぼ空室がないことになってしまいます。

次に、N社の例では、原状回復工事中を空室から控除すると公表しています。

退去後すぐにクリーニングを行えば、控除期間は数日になるかもしれませんが、クロス張り替えや設備交換などが長引いた場合は、30日以上の控除となる可能性もあります。

つまり、29日の控除や工事期間を控除する会社と、退去翌日からすべて空室として計算する会社とでは、当然、同じ建物を管理したとしても、計算上の「入居率」が変わります。

違い②:「管理戸数」に何を含めるのか

次に確認したいのが、入居率を計算する際の分母となる「管理戸数」です。

一般的には、

・住居
・店舗
・事務所
・倉庫

など、借地借家法の適用となる賃貸区画を管理戸数として数えることが一般的です。

一方で、会社によっては、

・月極駐車場
・バイク置き場
・その他の付帯施設

なども管理戸数へ含めている場合があります。

この違いによっても、入居率は変わります。

例えば、東京都内の平置き駐車場などは、住居と比較すると契約者の入れ替わりが少なく、空きが出ても比較的早く決まるケースがあります。

そのような駐車区画を何十台分も管理戸数へ含めれば、住居だけで計算した場合よりも、全体の稼働率が高くなります。

そのため、「管理戸数○戸・入居率○%」という表記を見た場合には、その管理戸数に何が含まれているのかも確認した方がよいと思います。

教えてくれるとは限りませんが。

違い③:いつまでを空室として計算するのか

空室期間の「終わり」をどこに設定するかも重要です。

考え方としては、大きく次のような基準があります。

・申込日
・入居審査通過日
・契約締結日
・契約開始日(賃料発生日)

本来は、「契約開始日(賃料発生日)」が適切ですが、管理会社によっては、契約を締結した時点で「成約」として、そこまでで計算している場合があります。

さらに、申込みが入った時点や入居審査を通過した時点で、空室ではなくなったとして計算するケースもあります。

申込日と契約開始日は1か月以上違うこともある

例えば、4月1日に入居申込みが入り、4月5日に審査を通過し、4月10日に契約を締結し、実際の契約開始日が5月1日だったとします。

この場合、申込日と契約開始日では1か月の差があります。

年間に何件も退去が発生する管理会社であれば、この違いが積み重なり、年間入居率にも大きな差が生じます。

違い④:年間平均なのか「ある時点」なのか

賃貸には、空室の多くなる時期もあれば、少なくなる時期もありますので、1年間を通して計算する方法が適切です。

一方、「○月○日時点の入居率」という時点計算もあります。

この場合、年間の中で最も満室に近い日に計算すれば、非常に高い入居率を表示することもできます。

そのため、「入居率99%」とだけ表示されている場合には、「いつからいつまでを対象にした数字なのか」を確認することが重要です。

当社でも計算方法によって98%台から99.57%まで変わる

では、実際に計算方法を変えると、どの程度数字が変わるのでしょうか。

参考値として、弊社の2025年8月から2026年7月までの1年間について、複数の方法で入居率を計算しました。

①空室期間をそのまま計算

退去後の空室期間について何も控除を行わず計算すると、入居率は98.22%でした。

②フルリフォーム期間だけを控除

次に、大規模なリフォームを行う期間だけを空室期間から控除した計算です。

フルリフォームの場合には、退去後に現地調査、見積もり、内容調整、解体、大工工事、設備工事、表装工事、クリーニングなどを行いますので、数か月かかることが多いです。

その期間だけを除外して計算すると、98.87%となりました。

③原状回復工事期間を控除

退去直後の状態により、すぐ募集できる場合もあれば、汚損が激しくクリーニングが終わってからでないと募集できない部屋もあります。

そのため、募集開始の時点を始期とし、退去翌日から募集開始前日までの期間を控除したところ、99.07%となりました。

④契約開始日ではなく契約締結日までを空室とする

さらに、実際の賃料発生日までではなく、契約を締結した成約日までを空室期間として計算しました。

この方法では、99.57%となります。

同じ管理物件、同じ1年間の実績であっても、計算方法を変えるだけで、98.22%から99.57%まで数字が変わるということです。

これは、どの計算方法が絶対に正しいという話ではありません。

重要なのは、入居率の数字だけではなく、その数字がどのような条件で算出されたのかを見る必要があるということです。

入居率を高くすることだけが賃貸経営の正解ではない

もう一つ重要なのは、「入居率が高ければ高いほど、良い管理会社なのか」という点です。

例えば、退去通知が入った瞬間から次の入居者募集を開始する方法があります。

退去前なので室内を内見できなくても、図面や写真だけで募集し、申込みを獲得します。

そして、退去後1週間程度で原状回復工事を終えることを想定し、その直後を次の契約開始日に設定します。

うまくいけば、空室期間をほぼゼロにできます。

しかし、入居率以外の視点では、別の問題も考える必要があります。

高い入居率と適正賃料は必ずしも同じではない

募集条件だけで決まっているということは、賃料が安かった可能性があります。

例えば、

・月額100,000円で空室期間0日
・月額105,000円で空室期間20日

であれば、1年2か月経過すると後者の方が収入は多くなります。

つまり、賃貸経営では単純に空室日数をゼロへ近づければよいわけではなく、賃料と空室期間のバランスを見る必要があります。

退去前募集では入居者を直接確認できないこともある

当社では、基本的に内見へ立ち会い、実際に申込者とお会いして、以下の説明や確認を行います。

・物件の使い方や契約条件の説明
・入居者の人柄の確認
・申込意思の確認(空申込の回避)

場合によっては、入居後のトラブルリスクが高いと判断し、契約を見送ることもあります。

しかし、退去前に募集しても申込者と会うことができません。

その意味では、空室期間を短縮できる代わりに、入居者選定が困難になります。

また、予定どおり原状回復工事が終わらなければ、すでに決めていた契約開始日に部屋を引き渡せないという別のトラブルも考えられます。

管理会社の入居率を見るときに確認したい5つのポイント

管理会社が公開している入居率を比較する場合には、数字だけでなく、少なくとも次の5点を確認することをおすすめします。

1.管理戸数に何を含めているのか
2.退去後、何日目から空室として計算するのか
3.原状回復・リフォーム期間を控除しているのか
4.申込日・契約日・契約開始日のどこまでを空室とするのか
5.年間平均なのか、特定日時点の数字なのか

さらに可能であれば、

・退去前募集をどの程度行っているのか
・賃料は従前のままなのか、状況に応じて上げているのか
・入居者審査をどのように行っているのか

なども併せて確認すると、その会社の実際の募集力をより判断しやすくなります。

まとめ|「入居率99%」という数字だけでは管理会社を比較できない

管理会社が公開する入居率は、管理会社選びの一つの参考にはなります。

しかし、入居率の数字だけを横並びにして、「99.5%の会社は98.5%の会社より募集力が高い」と判断することはできません。

同じ物件、同じ空室期間であっても、

・工事期間を控除する
・退去後一定期間を控除する
・契約開始日ではなく成約日までを空室とする
・駐車場なども管理戸数へ含める
・年間平均ではなく特定日時点で計算する

といった条件によって、表示される入居率は変わります。

そのため、管理会社を比較するときには、「入居率はいくつですか」ではなく、「その入居率をどのように計算していますか」と確認することが重要です。

そして、本当にオーナーが見るべきなのは、入居率だけではありません。

適正な賃料で募集できているか、入居者を適切に選定しているか、空室を短くするために無理な契約スケジュールを組んでいないかなども含めて、総合的に判断する必要があります。

高い入居率そのものを目的にするのではなく、適正な賃料と適切な入居者選定を維持しながら、その結果として高い入居率を実現できているかを見ることが、賃貸経営では重要だと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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