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契約満了日を過ぎて退去した場合、更新料は請求できるのか?東京地裁の裁判例を解説

最新更新日 2026年08月04日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

賃貸借契約の解約日が契約満了日を過ぎる場合、解約日が更新後の期間になってしまいます
この場合は、借主に更新料を請求できるのでしょうか

今回は、令和4年の東京地方裁判所の裁判例を基に、契約満了後に退去した借主へ更新料を請求できるのかという問題と、オーナー・管理会社が取るべき実務上の対策について解説します。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「退去日が契約満了日を超えたら更新料は請求できる?」
という動画の内容を、文字で整理したものです。

契約満了日を過ぎて明け渡した事例

令和4年10月19日の東京地裁判決の事例では、借主が1か月前までに通知することで中途解約できるという定めがありました。

借主が解約通知を出したのは9月5日です。一方、契約満了日は9月13日でした。

1か月前予告の契約であるため、9月5日に解約を申し入れた場合、通常であれば解約日は10月5日となります。つまり、解約日が契約満了日を過ぎることになります。

最終的に、借主は10月3日に物件を明け渡しました。

オーナー側は、退去時に更新料とクリーニング費用を敷金から差し引き、借主へ返還する敷金はないと主張しました。

これに対し、借主は、更新料を敷金から控除することはできないとして、その返還を求める訴訟を起こしました

第一審と控訴審で判断が分かれた

第一審の簡易裁判所では、借主の請求が棄却されました。

つまり、オーナー側が更新料を敷金から差し引くことを認める判断が示されました。

しかし、借主が控訴したところ、東京地裁の控訴審では判断が逆転しました。更新料の控除は認められず、オーナーに対して、更新料相当額を借主へ返還するよう命じる判決が出されました。

第一審と控訴審で結論が分かれていることからも、契約満了日をまたぐ解約と更新料の問題は、単純に判断できるものではないことが分かります。

更新料を請求できないと判断された理由

控訴審で更新料の請求が認められなかった理由は大きく2つありました。

①契約書に「解約権行使期間」の制限が定められていなかった

この契約には、契約満了日の1か月前を過ぎた後は、中途解約の通知をすることができないという定めがありませんでした

つまり、契約満了日まで1か月を切った場合には、契約満了日までに退去するか、いったん契約を更新してから解約しなければならないというルールが、契約書上明確にされていなかったということです。

しかし、この特約を定めている契約書は見たことがないので、この点は理由の一つであり、主な理由ではないと思います。

②借主の解約通知に対して異議がなかった

今回の大きな問題点はこちらです。
借主が9月3日に解約通知を出した時点で、オーナー側から次のような説明は行われていませんでした。

・契約満了日を過ぎて退去する場合には更新料が発生すること
・更新料を負担しない場合は9月13日までに明け渡す必要があること

借主にとっては、賃料1か月分の更新料が発生するという重要な条件を、事前に説明されていなかったことになります。

契約は満了したが明け渡しは猶予された

この判決では、賃貸借契約そのものは、契約満了日である9月13日に終了したと判断されました。

そして、満了日翌日の9月14日から解約通知の1か月後にあたる10月5日までは、「物件の明け渡しが猶予された」と判断されています。

その結果、オーナーは更新料を敷金から差し引くことはできませんでしたが、9月13日から10月5日までの賃料および管理費相当額については、敷金から控除できるとされました。

つまり、契約満了日後も物件を使用していたからといって、必ず契約が更新され、更新料が発生するとは限らないということです。

ただし、契約満了後の使用期間について、借主が何の負担もしなくてよいと判断されたわけではありません

契約書に解約権行使期間を定める方法

同様の問題を防ぐ対策の一つとして、契約書に解約権行使期間を定める方法があります。

例えば、契約満了日の1か月前を過ぎた後は、契約満了日に向けた中途解約の申し入れはできないと定めます。

その場合、借主は次のいずれかを選ぶことになります。

契約満了日までに物件を明け渡す
契約を更新したうえで、改めて解約を申し入れる

ただし、このような特約を設ければ、必ず問題が解決するとは限りません。

契約満了日を数日または数週間過ぎるだけで、賃料1か月分の更新料を全額請求することが、借主にとって過大な負担となる場合もあります。

契約書の規定だけに頼るのではなく、借主への事前説明と協議を行うことが重要です。

更新案内の段階で退去予定日を確認する

一般的には、契約満了日の約2か月前に、借主へ契約更新の案内を行います

借主から退去するとの回答があった場合には、単に解約通知を受け付けるだけでなく、具体的な退去予定日を確認する必要があります。

退去予定日が契約満了日を過ぎることが分かった時点で、更新料をどのように取り扱うのか、別途合意書を締結するなどして整理しておく必要がありました。

私も類似した状況を対応したことがありますが、オーナーと協議の上で、半額または月数で清算するなど、その状況に応じて双方が納得できる負担方法を協議し、円滑に処理することができました。

対応方法が訴訟を防ぐ

今回の事例では、賃料・管理費合計額が月額18.5万円で、敷金は17.3万円でした。

もちろんこの金額は少額ではありませんが、一審・控訴審と争うための時間や費用を考えると、割に合わない可能性が極めて高いです。

それでも訴訟に至った背景には、金額の問題だけでなく、オーナー側や管理会社側の説明や対応に対して、借主が強い不満を持った可能性が高いと考えられます。

契約書上請求できる可能性がある場合でも、説明をせずに敷金から一方的に差し引けば、借主の感情を損ね、訴訟などの大きな問題に発展することがあります

まとめ|契約満了日をまたぐ退去は事前協議が重要

契約満了日を過ぎて退去したからといって、更新料を当然に請求できるとは限りません

今回の裁判例では、契約書に解約権行使期間の制限がなく、更新料が発生することについて事前説明も行われていなかったため、更新料の控除は認められませんでした

一方、契約満了日後の賃料および管理費相当額については、借主が負担すべきものと判断されています。

実務上は、契約満了日が近づいた段階で更新の意思と退去予定日を確認し、満了日を過ぎる場合の費用負担について、事前に協議することが重要です。

契約書の条文だけで処理するのではなく、借主とオーナーの事情を確認し、双方が納得できる着地点を探すことが、更新料をめぐるトラブルや訴訟を防ぐことにつながります

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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