大家さんが賃貸経営を勉強するのに適した資格は?

最新更新日 2023年12月19日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

大家さんやこれから大家業を引き継ぐ方が「賃貸経営の勉強をしたい!」と思っても、なかなか良い教材に出会えないという声をよく耳にします

「不動産の王道資格は宅建だ!」と思ってテキストを見ても、「これって本当の賃貸経営に必要な知識なのかな・・・」と不安になります。

賃貸経営の知識を得るために、各種セミナーを受講しても結局は建築や不動産購入の営業目的だったり、各種雑誌や業界新聞を読んでも断片的な知識ばかりで体系的に学ぶことが出来なかったり、大家さんが賃貸経営の勉強を行うには難しいのが実情です。

今回は大家さんが勉強しておいて損のないオススメの資格とその理由について解説します。

大家さんに向かない資格

オススメの資格を紹介する前に、まずは大家さんが興味を持つ資格だけど、あまり勉強しても賃貸経営には活かせないという資格を紹介します。

宅地建物取引士

いわゆる「宅建」で、賃貸や売買の取引(主に仲介)を中心に勉強する資格です。
特に、内容の多くは売買に関するものなので、転売益(キャピタルゲイン)での投資目的で賃貸経営を行う大家さんには有効ですが、元々賃貸経営を営んでいる大家さんや、親から事業承継を受ける大家さんには向かない資格です。

ただし、不動産に関連する知識の全体像は知ることができますので、なんとなくテキストを眺めて、不動産にどのような法律が関わっているのか、全体像を理解するのは良いかもしれません。

マンション管理士

時折、「賃貸マンションを持っているので、マンション管理士に興味がある」という声を耳にしますが、実は賃貸マンションとマンション管理士の資格が指す「マンション」とは大きく異なります。

マンション管理士の資格が指す「マンション」とは「分譲マンション」のことで、多くは建物の一部屋ずつに所有者が異なります。
分譲マンションでは、建物全体を管理するためには「管理組合」を組成することが一般的で、その管理組合の運営に関する知識を学ぶことができます
つまり、賃貸経営に関する知識とは全く別物ということです。

ただし、マンション管理士で学べる大規模修繕の長期修繕計画に関する知識は非常に有効です。
不動産の勉強を一通り行った後、大規模修繕について学びたいと思った際は、長期修繕計画の項目を勉強してみるのが良いかもしれません。

不動産鑑定士

大家さんであれば毎年支払っている「固定資産税」や、相続税の基準となる「路線価」などは、不動産鑑定士の鑑定や意見を基にして設定されています。

賃料設定を行う際の「取引事例比較法」や、賃料増減額の「継続賃料」といった考え方は非常に勉強になりますが、それらはインターネットで調べれば分かりやすく解説が載っていますので、まずは「そんな資格があるんだ」くらいで良いです。

大家さんにオススメしたい資格3選

では、僕が大家さんにオススメしたい資格を3つ紹介します。
一つご理解いただきたいのは、資格を取得することが目的ではなく、その資格の勉強範囲で必要な知識を学び、ご自身の賃貸経営に活かすことが最も重要です。

そのため、興味がある方や勉強した一区切りを付けたい方などは受験しても良いと思いますが、そうでなければ「自分には何を活かせるか?」を念頭に必要な項目だけ勉強しましょう。

賃貸不動産経営管理士

近年、国家資格化した賃貸不動産の管理に特化した資格です。
賃貸住宅管理業法は「管理業者にはこんな規制があるんだ」くらいで読み飛ばしてしまって良いです。

賃貸不動産経営管理士のオススメポイントは、管理委託とサブリースの違い、賃貸借契約の基礎、建物や設備の知識、入居者の募集に関する実務的な内容などが学べるところです。
この資格を勉強することで、ご自身の賃貸経営の多くが理解できるようになります。

「まずは何を勉強したら良いですか?」と聞かれれば、私は賃貸不動産経営管理士をオススメしています。

簿記3級

賃貸経営を営んでいると、「自分の賃貸経営は健全な状態なのか、何か問題があるのか、さっぱり分からない・・・」と不安になる大家さんが多いです。

そのためには、「貸借対照表(B/S)」と「損益計算書(P/L)」が読めるようになると、ご自身の経営状態が見えるようになり、経営状態が良いか悪いかを知るキッカケになります。

簿記3級のテキストを読みながら、ご自身の貸借対照表や損益計算書を読んでみる、自分の賃貸経営の収支を仕訳してみる、といった勉強を行うと非常に理解が深まります

FP技能検定3級(ファイナンシャルプランナー)

賃貸経営は法人ではなく、個人事業で営んでいる大家さんも多いです。
また、法人であっても、自分個人と法人の2つの視点や総合的に考えてどのような選択が良いのか判断していく必要があり、その「自分個人」の財務状況をより良い状態にしていくためには、様々な制度や税金を理解する必要があります

こちらも資格取得を目指さずに、「自分や家族に活用できるものはないか?」という視点で目を通していくと、大きな収穫を得られる可能性があります。

勉強を継続するためのテクニック

ただ、「1か月以内に読破する!」「3か月以内に合格する!」と意気込んだものの、結局三日坊主になるという方も少なくないのではないでしょうか?
恥ずかしながら私もその一人です。

そんな時、「1日1回はページを開く」ということをゴールにしてみてください
読みたいと思えれば読みたいだけ読んでいただき、読みたくなければ読まなくても結構です。

しかし、疲れている日も、風邪の日も、酔って帰った日も、必ず「1日1回はページを開く」ということだけは徹底してください
それなりに体力のある日であれば、ページを開くと少しは読みたくなります。
つまらないページであれば、興味のあるページから読んでも構いません。

1冊読破や資格合格は、人によっては先の見えないゴールに感じてしまいます。
ゴールが見えなければ、多くの人はいつか心が折れてしまいます。

しかし、先のことは考えずに、「自分に活かせることはないか?」「へぇ!これ活かせるかも!」「そんなことがあったんだ!」と毎日楽しく続けていけば、いつかはゴールに辿り着けます
そして、勉強することが習慣になれば、全く苦にならず、もっと新しい知識が欲しくなってきます。

僕はそのようにして、今では新しい知識の吸収が楽しく、苦にならず習慣化しています。
ぜひ最初の一歩を踏み出して、より良い賃貸経営の実現を目指して取り組んでいきましょう。
ご愛読いただきありがとうございました。

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