今回から「大家のための定期借家講座」として、制度の基本から実務での活用方法まで解説していきます。
定期借家契約の最大の特徴は、適切な手続きと要件を満たしていれば、正当事由を必要とせず、契約期間の満了によって終了することです。双方が合意すれば、再契約して住み続けることもできます。
この仕組みは、入居トラブルへの対応や、将来の契約条件の見直しに役立ちます。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「【第1回】最大の特徴と魅力~定期借家講座~」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
新規契約の85%以上で定期借家を活用
なぜ今回の企画に至ったのか、理由について少し触れたいと思います。
弊社の2025年の新規契約を調べたところ、新規契約(再契約を除く)の85%以上が定期借家契約でした。
普通借家契約となったのは、2つのパターンだけです。
① 大手法人の社宅契約で普通借家に変更
② 事業用(主に店舗)の契約
居住用については、例外を除き、全て定期借家契約で募集しています。
私自身、この方針で10年以上、募集、新規契約、再契約、明渡しまで、さまざまな場面に携わってきました。
この講座では、普通借家契約との制度上の違いだけでなく、実際の募集や管理でどのように使うのか、かなりニッチな領域まで経験を交えてお伝えします。
普通借家契約との最大の違いは「正当事由」
普通借家契約では、例えば2年間の契約期間が終わっても、大家さんが「次は更新しません」と伝えるだけで終了できるわけではありません。大家側からの更新拒絶には、正当事由が必要です。
正当事由は、大家さんが更新したくないと考える理由だけで認められるものではありません。借主側の事情なども考慮されるため、契約終了のハードルは高くなります。
定期借家は、期間満了を区切りにできる
定期借家契約には、そもそも「更新」という概念がなく、期間満了によって終了します。引き続き貸す場合は、双方の合意により新たな契約を結びます。これが「再契約」です。
契約関係を続けるかどうかを、期間満了時に改めて検討できることが、私の考える最大の魅力です。
定期借家契約を賃貸経営に活きる3つの魅力
では、どのような場合に定期借家契約であることのメリットが発揮されるのでしょうか。
①迷惑行為が改善しない場合の合法的対処
入居者が近隣へ大きな迷惑をかけ、注意しても改善しない場合、定期借家契約であれば、期間満了後は再契約しないという判断ができます。
②トラブルの未然防止
定期借家を条件とする場合、そもそも自分が明け渡しを求められる可能性があることを踏まえて契約はしません。
そのような方の申込が入り辛くなることによって、入居後のトラブル発生率が減少する傾向にあります。
③賃料条件の見直し
最近では、修繕費をはじめとする諸物価や固定資産税等の上昇が凄まじく、周辺相場も高騰してきていますので、賃料を見直したい場面が増えています。
もちろん、大家さんの希望額を一方的に押し付けるのはモラルに反するため、やめていただきたいです。
一方で、根拠が明確であり、借主にも配慮した提案をしているにも関わらず、「1円たりとも増額には応じない!」と不合理な対応をしてきた場合には、再契約または契約終了に基づく明け渡しを求めることが可能になります。
活用する前に押さえたい注意点
定期借家契約では、法定の方式による契約締結に加え、更新がなく期間満了で終了することについて、契約前の所定の説明が必要です。手続きに不備があると、更新がないという定めの効力が認められない場合があります。
また、定期借家というだけの説明では、家探し人は「長く住めないのではないか」と不安を感じることもあります。説明が不十分なまま導入すると、募集に悪影響する可能性があります。
更新がないこと、再契約には双方の合意が必要なこと、どのような方針で運用するのかを、誤解なく伝えることが大切です。
定期借家の魅力は、理解と適切な運用があってこそ
定期借家契約は、正当事由を必要とせず、期間満了を契約関係の区切りにできる制度です。入居トラブルへの対応や再契約条件の見直しなど、賃貸経営の選択肢を広げられます。
その利点を生かすには、法的な要件、募集時の説明、満了までの期限管理を理解する必要があります。
次回【第2回】は、定期借家契約についてよく挙げられる欠点と、実務での実態を解説します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


