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賃貸借契約書の面積より狭かった場合、賃料は減額しなければならない?

最新更新日 2026年09月22日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

賃貸借契約書には、基本的に物件の専有面積が記載されています。

では、契約後に実際の面積を測ってみたところ、契約書に記載されている面積より狭かった場合、オーナーは足りなかった面積の分だけ賃料を減額したり、過去に受け取った賃料の一部を返還したりする必要があるのでしょうか。

裁判例では、契約書記載の面積と実際の面積が異なるという理由だけで、当然に賃料を減額しなければならないわけではないと判断されています。

ただし、契約内容や面積の重要性、契約前の内見の有無などによって判断が変わる可能性があります。

今回は、この裁判例を基に、賃貸借契約書の面積が実際と異なっていた場合の考え方と、オーナーや管理会社が注意したいポイントについて解説します。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「契約書の面積より狭かった場合は賃料減額? 」
という動画の内容を、文字で整理したものです。

契約書は35坪、実際には28坪だった事例

今回紹介する令和2年の東京地方裁判所の事例では、賃貸借契約書に物件の面積が「35坪」と記載されていました。

ところが、実際の面積は約28坪でした。

しかも、この28坪には駐車スペースも含まれていました。

契約書記載の35坪との差は約7坪で、平米数に換算すると約23㎡にもなります。

単なる測定誤差というには、かなり大きな違いです。

そこで借主は、「35坪あると思って契約したのに、実際には28坪しかなかった。面積差に相当する賃料を払い過ぎていた」として、過去に支払った賃料の一部返還などを求めました。

借主は「錯誤」を主張した

借主側の主張の一つが、契約時の「錯誤」です。

つまり、「35坪あると信じて契約したが、実際には違っていた。前提となる認識に誤りがあった」という主張です。

しかし、裁判所はこの主張を認めませんでした。

理由の一つとして、借主が契約前に実際の物件を内見していたことがあります。

さらに、契約後も長期間にわたってその物件を使用しており、その間、面積について特に異議を申し立てていませんでした。

実際に物件を確認し、長期間使用していたという事情から、錯誤を理由とする主張は認められませんでした。

「実際の面積を隠された」という主張も認められなかった

借主はさらに、オーナー側に説明義務違反があったとも主張しました。

契約書に35坪と記載しておきながら、実際には28坪しかないことを隠していたため、損害が発生したという主張です。

しかし、この点についても、契約書の面積表示に問題があったとしても、オーナーが実際の面積を意図的に隠していたと認めるに足りる事情まではなく、具体的な損害についても認められないと判断されました。

その結果、借主が求めた賃料の返還は認められませんでした。

面積が違っても当然に賃料減額になるわけではない

この裁判例からも分かるように、「契約書記載面積より実際の面積が狭い=その割合だけ賃料も減額される」という訳ではありません。

一般的な賃貸借契約では、「この物件を月額○万円で貸す」という形で賃料を決めますので、その面積に相違があったとしても、使用上の問題がなければ減額の必要はないとされています。

一方で、「数量指示賃貸借」という特殊な賃貸借も存在します。

例えば、「1坪当たり月額1万円」という定めをもとに、「この店舗は35坪なので、月額賃料は35万円です」と、明確に坪(平米)数と、坪(平米)単価を基準として賃料を決めた場合です。

この場合、実際には28坪しかなかったのであれば、その分だけ減額や過払い分の賃料返還が必要になると考えられます。

面積の相違が別の損害につながる場合には注意

賃料そのものの減額や返還が認められなかったとしても、面積の誤表示が別の損害につながる場合には注意が必要です。

いくつか考えられるケースを紹介します。

法人の社宅規程に面積条件がある場合

法人契約では、「○㎡以上の物件であること」という条件が社宅規程に設けられている場合があります。

また、面積によって住宅補助の上限額が変わる会社もあります。

例えば、契約書では40㎡と記載されていたため社宅として認められたものの、実際には35㎡しかなかった場合、法人側で社宅基準を満たさなくなる可能性があります。

その結果、社員の住宅補助額に影響が生じれば、単なる賃料差とは別の問題に発展する可能性があります。

許認可に必要な面積を満たさない場合

店舗や事務所では、事業内容によって一定以上の面積が許認可などの要件になっていることがあります。

契約書上の面積では基準を満たしているにもかかわらず、実測すると不足していた場合には、予定していた事業を行えない可能性があります。

この場合には、借主に具体的な損害が生じる可能性があるため、住居の賃貸借以上に慎重な対応が必要です。

契約前に内見しているかどうかも重要

今回の裁判では、借主が契約前に内見していたことも判断要素の一つとなりました。

実際に室内を確認したうえで契約し、その後長期間使用していたという事情があります。

反対に、契約前に一度も室内を見ていない場合には、事情が変わる可能性があります。

例えば、遠方からの転居などで内見をせず、「40㎡と書かれているので、この家具も入るだろう」と考えて契約したにもかかわらず、入居後に実測すると大幅に狭かったという場合です。

さらに、入居直後に面積の違いを指摘し、契約書の表示を信頼したことで具体的な不利益が発生しているのであれば、今回の裁判例と同じ結論になるとは限りません。

管理会社を変更した後に空室募集する際は面積を再確認する

実務上、特に注意したいのが、空室募集や管理を引き継いだ場合です。

前所有者や前管理会社が作成した資料に記載された面積を、そのまま新しい募集図面や契約書へ転記しているケースがあります。

しかし、その数字が必ず正しいとは限りません。

・そもそも面積が大幅に異なっている
・パイプスペースやバルコニー等の共用部分を含んでいる
・駐車スペースなどが含まれている

ということもあります。

そのため、新たに管理を引き継いだ際には、一度面積の根拠を確認することをおすすめします。

図面がなければ実測する

建築図面が残っているのであれば、まず図面で面積を確認します。

一方、古い建物などで図面がない場合には、少なくとも室内寸法を測り、おおよその面積を確認しておくことが重要です。

契約書に記載する以上、「なぜこの面積なのか」を説明できる合理的な根拠があることが望ましいです。

内法面積なのか、壁芯面積なのかなど、計算方法によって多少の違いが生じることはあります。

しかし、今回の裁判例のように7坪、約23㎡も違うとなれば、単なる計算方法の違いでは済まない可能性があります。

まとめ|面積が違っても当然に賃料減額ではないが、正確な表示が重要

賃貸借契約書に記載された面積より実際の面積が狭かったとしても、その事実だけで当然に賃料を減額したり、過去の賃料を返還したりしなければならないわけではありません

実際に、契約書上35坪だった物件が実際には約28坪しかなかったにもかかわらず、借主からの賃料返還請求などが認められなかった東京地方裁判所の裁判例を紹介しました。

一方で、

面積を基準として賃料を算定している
契約前に内見していない
法人の社宅規程や許認可の面積要件を満たさなくなる
面積の誤表示によって具体的な損害が発生した

といった事情があれば、別の判断になる可能性があります。

そのため、「面積が違っていても賃料減額にならないから大丈夫」と考えるのではなく、そもそも契約書へ正確な面積を記載することが重要です。

新たに物件や管理を引き継いだ場合には、過去の募集資料をそのまま信用せず、図面や実測によって面積を一度確認してから募集・契約を行うことをおすすめします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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