漏水トラブルは、原因の特定や応急対応は重要ですが、発生しないことが一番です。
特に、築年数が経過したマンションやアパートでは、給水管・給湯管の老朽化、排水管の腐食、屋上防水やシーリングの劣化などによって、漏水のリスクが徐々に高くなっていきます。
また、建物内部へ長期間水が入り込めば、鉄筋の腐食、木部の腐朽、カビ、内装材の劣化などを引き起こし、建物そのものの寿命にも影響します。
近年は建築費や解体費も高騰しており、建物を解体して建て替えるには、多額の費用が必要です。
そのため、既存の建物をできるだけ健全な状態で長く使用していくという考え方は、今後の賃貸経営において、ますます重要になると思います。
漏水を未然に防ぐために確認したいのは、大きく次の3つです。
給水管・給湯管・追い焚き管
排水管
屋上・外壁などからの雨漏り
今回は、この3つを中心に、漏水トラブルを予防するための考え方について解説します。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「賃貸物件の漏水を防ぐには?給水管・排水管・雨漏り対策」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
漏水予防①:給水管・給湯管・追い焚き管を確認する
まず確認したいのが、水やお湯を室内へ供給するための配管です。
具体的には、以下の3つです。
給水管
給湯管
追い焚き管
特に給水管と給湯管の内部に常時水圧がかかっているため、劣化した部分に穴が開くことや、接続部分から継続的に水が噴き出してしまうことがあります。
ポリエチレン管であれば長寿命が期待できる
現在の住宅では、これらの管に「ポリエチレン管」が広く使用されています。現場では「ポリ管」と呼びます。
床下などを確認すると、青色や赤色の柔軟性のある配管が使用されていることがあります。
青色:給水
赤色:給湯
として使い分けられていることが多いですが、見分けるためにカバーの色が異なるだけで、内部の管は同じです。
ポリエチレン管は、腐食しにくく、紫外線を浴びなければ、100年以上使用できるという見解もあります。(一般論としては40~60年)
そのため、建物内の給水管や給湯管をポリエチレン管へ更新していくことが、漏水リスクを大きく下げられる方法となります。
築25~30年頃から配管更新を検討する
当社では、一つの目安として、築25年から30年程度が経過した頃から、給水管や給湯管の更新を検討していくことを推奨しています。
もちろん、「築30年になったため必ず交換しなければならない」という意味ではありません。
実際には、長期間使用できている例も少なくありませんが、漏水が発生してしまう例も少なくありません。
一度漏水が発生した後に修理するよりも、空室になったタイミングなどを利用して、古い配管をポリエチレン管へ徐々に更新していく方が、安心して賃貸できます。
硬い配管と柔軟性のある配管の違い
鉄管や銅管、塩ビ管などは、基本的に硬い配管です。
建物は一見すると動いていないように見えますが、実際には地震、風、大型車両の通行、温度変化などによって、わずかに振動したり伸縮したりします。
そこへ長年にわたって水圧が加わることで、配管や接続部分へ負担が蓄積します。
一方、ポリエチレン管は、ある程度の柔軟性があります。
現場には丸められた状態で搬入され、それを伸ばしながら配管します。
完全に自由に曲がるわけではありませんが、金属管などと比べると柔軟性があるため、建物のわずかな動きにも追従しやすいという特徴があります。
こうした点からも、古い給水管や給湯管を更新する場合には、ポリエチレン管が有力な選択肢になります。
漏水予防②:排水管を確認する
次に重要なのが排水管です。
給水管や給湯管は水圧によって水を送りますが、排水管は基本的に重力を利用して水を流すので、一定の勾配が必要です。
この違いが、排水管の更新工事を難しくする大きな理由でもあります。
排水管の材質によってリスクが異なる
排水管には、主に次のような材質があります。
塩ビ管
耐火二層管
鉄管

鉄筋コンクリート造や鉄骨造などでは、塩ビ管の外側を耐火性のある材料で覆った「耐火二層管(トミジ管)」が使われていることがあります。
こうした塩ビ系の排水管は、金属製の排水管と比較すると、さびによる腐食が発生しにくいというメリットがあります。
そのため、排水管が塩ビ管や耐火二層管であり、漏水や著しい劣化などが確認されていなければ、築60年くらいは問題なく使用できる場合が多いと感じます。
注意したいのは鉄製の排水管
一方、特に注意したいのが鉄管です。
鉄製の排水管では、長期間使用することで内部や外部に腐食が進み、最終的に穴が開いて漏水することがあります。
一度穴が開くほど劣化している場合、同じ時期に施工された周辺の配管も同程度に老朽化している可能性があります。
そのため、部分的な補修だけを繰り返すのではなく、建物全体として今後どのように排水管を維持していくのかを検討する必要があります。
排水管の「更新」と「更生」の違い
古くなった排水管への対策には、大きく分けて2つの方法があります。
管更新
管更新とは、既存の排水管を撤去し、新しい配管へ交換する方法です。
ただし、排水管は勾配が必要なこと、配管の径が太いことから、配管ルートを自由に決めらません。
そのため、給水管よりも工事が大掛かりになりやすいという問題があります。
管更生
そこで次の選択肢になるのが「管更生」です。
管更生とは、既存の配管を撤去するのではなく、内部を清掃したうえで、特殊な材料によって管の内側に新たな層を形成するなどして、既存管を再利用する方法です。
既存の床や壁を大規模に解体せずに施工できるため、全面的な管更新が難しい建物では、有力な選択肢になることがあります。
ただし、管の状態や材質、配管形状などによって、そもそも更生工事ができない場合もあるので、専門業者に調査してもらったうえで判断する必要があります。
排水管洗浄を定期的に行う
分譲マンションでは、排水管洗浄を毎年実施しているケースが多くあります。
一方で、賃貸マンションやアパートでは、築20~30年と経過しているにもかかわらず、一度も排水管洗浄を行っていない建物は珍しくありません。
その結果、キッチンや洗面、浴室などから流れた汚れが少しずつ排水管内部へ蓄積し、排水管が完全に詰まると、排水口から逆流したり、別の住戸へ汚水があふれたりして大きなトラブルに発展します。
排水管洗浄は何年毎の実施がよいのか
私は、3~5年毎の実施を推奨しています。
しかし、
排水管の勾配が緩い
過去に詰まりを繰り返している
飲食店などが入居している
排水設備に特殊な事情がある
といった建物であれば、毎年行うことも検討が必要です。
少なくとも、一度も洗浄を行ったことがない建物では、一度専門業者へ相談してみることをおすすめします。
古い鉄管は高圧洗浄に注意する
ただし、排水管が古い鉄管の場合には注意が必要です。
配管の腐食が進んでいる状態で強い圧力をかけて高圧洗浄を行うと、それをきっかけとして劣化部分に穴が開き、漏水する可能性があります。
そのため、築年数が古く、鉄製排水管が使用されている建物では、配管の材質や劣化状況を確認し、必要に応じてカメラ調査なども行ったうえで、洗浄するかどうかを専門業者と判断することが重要です。
漏水予防③:雨漏りを防ぐには大規模修繕が重要
給排水管と並んで、漏水トラブルの大きな原因になるのが雨漏りです。
雨漏りを防ぐためには、
屋上防水
外壁
シーリング
窓やサッシ周辺
屋根
などを適切に維持していく必要があります。
陸屋根は特に雨漏りへ注意する
屋根には、傾斜がある勾配屋根と、平らな陸屋根があります。
勾配屋根の場合、雨水は基本的に上から下へ流れるので、屋根材や棟部分、ビス穴、接合部分などに問題がなければ、漏水リスクは極めて低いです。
一方、マンションなどで多い陸屋根は、緩やかな勾配しかないため水が滞留しやすく、防水層が劣化すると、雨水が建物内部へ入り込む可能性が高くなります。
密着工法には注意する
密着工法とは、下地にそのまま塗装・接着することです。
既存の防水層にウレタン塗装やシート接着を行った場合、内部に水分が入っていると、その水分(湿気)が逃げ場を探して、ウレタンの塗膜やシートを押し上げてしまい、結果的に膨れや断裂に繋がってしまいます。
また、一度密着したウレタンやシートは容易に剥がすことができず、その改修に多額に費用が発生する可能性があります。
そのため、改修工事の場合にはウレタン塗装の場合は通気緩衝工法、シート防水の場合は機械固定工法など、内部の湿気が逃げられるような工法を採用する必要があります。
その分、密着工法よりは費用が増えてしまいますが、長期的なことを考えるとその方が良い場合が多いです。
シーリングの劣化も雨漏りの大きな原因
雨漏り対策では、屋上防水だけでなく、外壁やサッシ周辺のシーリングも重要です。
シーリングとは、外壁材同士の継ぎ目や、窓枠の周囲などに施工されているゴム状の材料です。
新しいシーリングには弾力があり、指で押すと多少へこみ、その後元に戻ります。
しかし、年数が経過すると、
表面が硬くなる
弾力がなくなる
ひび割れが発生する
外壁との間に隙間ができる
表面がしわ状になる
欠落する
などの症状が現れます。
シーリングが外壁から剥がれ、その隙間へ雨水が入ると、雨漏りや建物の劣化に繋がります。
そのため、サッシ周辺や外壁の目地などは、定期的に確認することをおすすめします。
大規模修繕は12~15年程度を一つの目安にする
それでは、これらの防水工事やシーリング工事をどのくらいの頻度で実施する必要があるのでしょうか。
私は、最長でも15年程度を一つの目安として考え、可能であれば12~13年程度の時点で建物の状態を確認し、必要な工事を検討しておく方法がよいと考えています。
漏水予防は「壊れてから直す」だけではない
賃貸経営では、「壊れたら修理する」という考え方になりがちです。
しかし、漏水については、一度発生すると修理費だけでは済まないことがあります。
例えば、上階の配管から漏水すれば、
下階の天井やクロスの張り替え
床材の交換
家具や家電への補償
入居者のホテル代
営業中の店舗であれば休業損害
漏水原因の調査費用
などが必要になる可能性があります。
さらに、漏水が繰り返されれば、入居者から建物や管理会社への信頼を失うことにもつながります。
そのため、「まだ漏れていないから何もしない」ではなく、築年数や配管の材質を確認しながら、計画的に予防修繕を行うことが重要です。
漏水を防ぐために確認したいポイント
築年数が経過した建物では、次のような点を一度整理してみてください。
【給水・給湯関係】
給水管は何の材質か
給湯管は何の材質か
ポリエチレン管へ更新済みか
過去に漏水した場所はあるか
築25~30年以上経過していないか
【排水関係】
排水管が鉄管か塩ビ管か
過去に腐食や漏水が発生していないか
排水詰まりを繰り返していないか
排水管洗浄を最後にいつ行ったか
管更新・管更生を検討したことがあるか
【雨漏り関係】
大規模修繕を最後にいつ実施したか
屋上防水の種類と施工時期
シーリングの施工時期
屋上に水たまりができていないか
外壁やシーリングにひび割れがないか
過去に雨漏りした場所がないか
このような情報を整理しておくだけでも、今後どの部分から修繕を行うべきか判断しやすくなります。
まとめ|水に関する予防修繕が建物の長寿命化につながる
漏水トラブルを未然に防ぐためには、大きく分けて次の3つを管理することが重要です。
1つ目は、給水管・給湯管・追い焚き管です。
築年数が経過した建物で金属管などが使用されている場合には、築25年から30年程度を一つの目安として、ポリエチレン管への更新を検討する方法があります。
2つ目は排水管です。
塩ビ管や耐火二層管であれば、状態が良ければ長期間使用できる可能性があります。一方、鉄製の排水管は腐食に注意し、必要に応じて管更新や管更生を検討します。
また、排水詰まりを防ぐために、建物の状況に応じて定期的な排水管洗浄を行うことも重要です。
3つ目は雨漏り対策です。
屋上防水、外壁、シーリングなどを定期的に確認し、大規模修繕についても12~15年程度を一つの目安として、早めに計画を立てていくことをおすすめします。
漏水トラブルは、発生してから迅速に対応することも大切です。
しかし、最も理想的なのは、漏水そのものが発生しない建物を維持していくことです。
配管、防水、シーリングなどを計画的に維持し、漏水の可能性をできるだけ減らしていくことは、入居者さんに安心して暮らしていただくことだけでなく、建物そのものを長く使用し、賃貸経営を安定させることにもつながります。
築年数が経過した物件を所有している場合には、一度、給排水管の材質、過去の修繕履歴、大規模修繕や防水工事の実施時期などを整理し、今後の修繕計画を検討してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


