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退去時のクリーニング費用は金額の記載がないと請求できない?裁判例と契約書の注意点

最新更新日 2026年08月04日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

賃貸借契約書に「退去時の室内クリーニング費用は借主が負担する」と記載されていても、具体的な金額まで書かれていなければ、その特約は無効になるのでしょうか。

今回は、令和4年10月19日に東京地方裁判所で示された裁判例を基に、退去時のクリーニング費用を借主へ請求するための条件と、契約書へ記載しておきたい内容について解説します。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「退去時クリーニング費用の金額は契約書類に明記しないと無効なのか?」
という動画の内容を、文字で整理したものです。

金額の記載がなくても特約は有効

今回取り上げる事例では、賃貸借契約書に、退去時の室内清掃費用とエアコン清掃費用を借主が負担することは明記されていました。

一方、室内クリーニングがいくらになるのか、エアコン清掃が1台いくらになるのかという具体的な金額までは記載されていませんでした。

退去時に貸主側が敷金から清掃費用などを差し引いたところ、借主は「具体的な金額が記載されていないクリーニング特約は無効である」と主張し、返還を求めました。

しかし、裁判所は借主の請求を認めませんでした。

契約書に具体的な金額が書かれていなかったとしても、退去時のクリーニング費用を借主が負担することが書面上で明確に合意されていれば、金額の記載がないという理由だけで、直ちに特約が無効になるわけではないと判断されたものです。

有効でも退去時の争いを防げるとは限らない

裁判で特約の有効性が認められたとしても、金額の記載がない契約書が望ましいわけではありません。

クリーニング費用が数万円程度であっても、返還をめぐって訴訟になれば、借主と貸主の双方に時間的・金銭的・精神的な負担が生じます。

そのため、裁判になれば認められる可能性があるという考え方ではなく、退去時に疑問や不満を持たれにくい契約内容にしておくことが重要です。

クリーニング費用は単価まで記載する

退去時のトラブルを防ぐためには、借主が負担する清掃費用の目安を契約書へ記載しておくことをおすすめします。

例えば、弊社では以下のように記載しています。
(甲乙は賃貸人・賃借人と置き換え、読みやすいように項目毎に改行しています。)

賃借人の退去時、賃貸人が指定する専門業者による清掃(設備機器清掃及び賃借人の残置物の清掃を含む)を行うこととし、

専有面積1平米あたり税別1,000円(最低金額は28,000円とする)

及びエアコン1台あたり税別10,000円(お掃除機能付の場合は税別15,000円)を賃借人が負担する。

但し、物価・税率変動や汚損状況等により金額が変動する可能性があることを賃借人は容認する。

上記では、清掃の単価に加えて、以下の項目を明記することでトラブルを回避できるようにしています。

残置物となるエアコン(設備機器)の清掃費も負担してもらうこと

通常の特約では「残置物は設備ではないので、その清掃費用は負担できない」と主張される可能性があります。
残置物も清掃対象になることを明記しておく方が好ましいです。

賃貸人の指定業者で行うこと

クリーニングを借主が手配することにより、清掃不足や清掃中に破損させたものがある場合は、責任の所在が曖昧になってしまいます。
清掃業者はオーナーが指定できるように定めておいた方が良いです。

最低金額

室内クリーニングを面積単価で定める場合には、仮に15平米のお部屋を15,000円(税別)で清掃してくれるかといえば、そうではありません。

現地までの移動、資材の準備、作業員の確保などが必要になるため、清掃業者には最低受注金額が設けられていることがほとんどなので、最低金額も記載しておきましょう。

お掃除機能付きエアコンの場合の金額

借主負担で設置していた場合や従前はオーナーやその親族が住んでいた場合、近年では行政のキャンペーンで安く設置できることを目的に設置している場合など、徐々に設置されている例は増えています。

通常のエアコンよりも清掃費は高くなることがほとんどなので、その単価も記載しておいた方がオーナーの負担増加を回避できます。

物価上昇や汚損状態による変更も想定する

契約締結時には妥当な金額であっても、入居期間が長くなれば、物価や人件費の上昇によって清掃料金が変わる可能性があります。

また、通常の汚れを前提とした料金を記載していても、室内の汚損が著しい場合には、通常料金では対応できないことがあります。

ただし、契約書に記載した金額を超えて請求する場合には、増額の理由や作業内容を説明できるようにしておく必要があります。

最も重要なのは借主負担の特約そのもの

具体的な金額を記載することも重要ですが、それ以前に確認しなければならないのが、クリーニング費用を借主が負担するという特約があるかどうかです。

東京では、退去時のクリーニング費用を敷金から差し引くことが一般的に行われています。そのため、クリーニング費用は当然に借主が負担するものと思われることがあります。

しかし、通常損耗に伴う清掃や原状回復に必要な費用は、原則としてオーナーが負担するものです。

本来はオーナーが負担する費用を借主へ負担してもらうためには、賃貸借契約書などに特約を設け、借主と合意しておく必要があります。

室内清掃とエアコン清掃は分けて記載する

契約書に「室内クリーニング費用は借主負担」とだけ記載されている場合、その文言にエアコン内部の清掃費用まで含まれるかが問題になる可能性があります。

古い契約書でそのように記載されている場合は、「室内クリーニングの中にエアコン清掃も含まれる」と対抗する他ないですが、その主張の正当性は低いのが実情です。

新たに契約を締結する場合は、室内クリーニング費用とエアコン清掃費用は分けて記載しましょう。

何を借主が負担するのかを具体的に記載することで、退去時の認識の違いを防ぎやすくなります。

まとめ|金額と負担項目の両方を契約書で明確にする

令和4年の東京地方裁判所の裁判例では、具体的な金額が記載されていなくても、クリーニング費用を借主が負担することについて明確な合意があれば、金額の未記載だけを理由に特約が無効になるわけではないと判断されました。

ただし、実務上は次の内容を契約書へ記載しておくことが重要です。

退去時のクリーニング費用とエアコン清掃を借主が負担すること
面積単価や1台当たりの金額
残置物となるエアコン(設備機器)の清掃費も負担してもらうこと
賃貸人の指定業者で行うこと
室内清掃の最低料金
お掃除機能付きエアコンの場合の金額
物価変動や著しい汚損によって金額が変わる可能性

まずは、現在使用している賃貸借契約書にどのように記載されているのか、一度確認してみることをおすすめします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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