「空室対策」と聞くと「リノベーション?」「無料インターネットの導入?」といった個別の対策案を思い浮かべる方も少なくないと思います。
しかし、それらは空室対策の一要素にすぎません。
私は空室対策には5つの要素があり、それぞれのバランスが重要と考えています。
例えば、スポーツチームを考えたとき、極端に攻撃力が強くても防御力が極端に弱ければ安定して試合に勝つことは難しく、その反対も然りだと思います。
今回は空室対策における五大要素がどのようなものなのか、空室対策の手法をみたときに「これはこの要素の強化だな」と分別できるように、要素の基本的な分類について解説します。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「空室対策の五大要素」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
要素①:費用
賃貸借に関わる費用面について調整することです。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
・賃料をいくらに設定するか
・設定した賃料を管理費とどのように振り分けるか
・敷金・礼金をいくらに設定するか
・フリーレントやADを付けるか
つまり、借りる方が負担する費用面全体をどう設計するかということです。
当然ながら、極端に安ければ決まりやすくなる可能性はあります。
しかし、それでは賃貸経営に悪影響を及ぼす可能性がありますので、安くすればよいということではなく、相場や競合物件、検索時の見え方、借りる方の初期費用負担などを踏まえて、戦略的に設定することです。
要素②:状態
空室中にクリーニングが終わった後、電気を解約してしまい、内見時に室内が真っ暗になっているケースがあります。
しかし、内見時の第一印象は非常に重要です。室内を明るく見せるためにも、通電しておくことは大切です。
また、空室期間が長引くと、キッチン、洗濯機置場、洗面台、浴室などの排水トラップにある封水が干上がり、下水の臭いが室内に充満してしまうことがあります。
さらに、コバエなどの害虫の死骸が室内に散らばっていることもあります。
部屋に入った瞬間、床の上に虫の死骸がたくさんある状態を見て、その部屋に住みたいと思う方は少ないと思います。
このように、室内のコンディションを整えることは、空室対策の基本です。
リフォームも状態改善の一部
リフォームやリノベーションも、この「状態」に含まれます。
ただし、「このようにリノベーションすれば必ず決まる」という単純なものではありません。
大きく費用をかけるリフォームもあれば、最低限の原状回復に少し工夫を加えるだけで、印象が大きく変わることもあります。
大切なのは、その物件にとって必要な状態改善は何かを見極めることです。
要素③:条件
代表的なものでは「用途」の問題があります。
本来その立地では、住居よりも事務所や店舗として貸した方が決まりやすいにもかかわらず、これまで住居だったからという理由だけで、住居としてしか募集していないケースがあります。
その結果、空室が長引いてしまうことがあります。
このような場合、住居だけでなく、事務所や店舗としての可能性も検討することが一つの空室対策になります。
場合によっては、住居と事業用の両方で募集し、早く決まった方で進めるという方法もあります。
受け入れ条件の見直し
例えば、高齢の方に対して漠然とした不安がある場合でも、見守りサービスを活用することで受け入れやすくなることがあります。
外国籍の方についても、安易に断るのではなく、日本語での意思疎通に問題がないか、日本での生活歴があるかなど、実態に応じて考えることが大切です。
もちろん、賃貸オーナーごとに考え方はあると思います。
ただ、受け入れ条件を少し見直すだけで、対象となる借主層が広がり、成約につながりやすくなることがあります。
設備チェックと検索条件
さらに、設備条件のチェックも見落としがちです。
SUUMOなどで借りる方が検索するとき、バス・トイレ別、独立洗面台、室内洗濯機置場など、さまざまな条件を入れます。
実際には条件を満たしているにもかかわらず、募集時にチェック欄を入れ忘れていると、検索結果に出てきません。
これは非常にもったいないことです。
また、反対に、借りる方がどのような条件で検索するかを逆算し、設備や条件を整えていくことも空室対策になります。
要素④:表現
せっかく賃料が適正で、室内の状態も良く、条件も整っているにもかかわらず、写真が一切載っていない場合があります。
また、写真が載っていても、暗くて印象が悪い写真になっていることもあります。これでは物件の魅力が伝わりません。
さらに、写真を撮っただけでは不十分です。募集図面にその写真がしっかり盛り込まれているか、ポータルサイト上で見やすく掲載されているかも重要です。
文字情報だけで、白黒の最低限の図面になっていると、せっかくの物件の魅力が伝わりにくくなります。
間取り図の印象も大切
中には、そもそも間取り図が間違っていることもあります。
軽微な誤りであればまだよいのですが、大きな間違いがあると、借りる方の判断を誤らせてしまいます。
また、間取り図そのものも、少しスタイリッシュに見えるだけで印象が変わります。小さなことではありますが、こうした表現の積み重ねも空室対策の一つです。
要素⑤:営業
どれだけ費用、状態、条件、表現が整っていても、そもそも募集されていなければ決まりません。
実際に、「空室がなかなか決まらない」と相談を受けて調べてみると、そもそも募集されている様子が見当たらないというケースもありました。
これは本来あってはならないことですが、実際には起こり得ます。
募集先と媒体の選び方
どのように募集するかも重要です。
1社に専任で任せて二人三脚で進めるのか、2~3社に依頼して競争してもらうのか、これも空室対策の一つです。
また、掲載媒体も重要です。SUUMOだけに掲載して、業者間には情報を流していないという状態では、紹介の機会が限定されます。
反対に、業者間だけに情報を流し、一般の方が見るポータルサイトに掲載されていない場合も、機会損失になります。
さらに、他社が転載している物件情報では、条件が間違っていることもあります。
そのため、どこに、どのような内容で掲載されているのかを確認することが重要です。
内見対応も営業の一部
現地に鍵を置いて、勝手に見てもらう方法もありますが、募集会社のスタッフが立ち会い、この物件の良いところや家具の配置イメージなどを説明できれば、借りる方の印象は大きく変わります。
ただし、強く営業しすぎると、かえって嫌がられることもあります。
適切な距離感で、物件の魅力を伝えることが大切です。
おわりに
今回は、空室対策の五大要素として、費用、状態、条件、表現、営業についてお伝えしました。
空室対策は、一つだけを強くすればよいものではありません。
費用が適正でも、室内の状態が悪ければ決まりません。
室内がきれいでも、写真が悪ければ魅力が伝わりません。
条件が良くても、そもそも募集されていなければ決まりません。
大切なのは、全体のバランスを見直し、弱い部分を少しずつ改善していくことです。
すでに強い部分をさらに伸ばすことも大切ですが、一部に大きくへこんでいる部分があると、そこが原因で成約につながらないことがあります。
私の体感としては、全体の要素が一定基準を超えたとき、成約率は直線的に上がるというより、ある地点から一気に高まるように感じています。
ぜひ今回の内容を踏まえて、ご自身の物件の空室対策を一度見直していただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


