火災は当然ながら発生しないことが理想ですが、万が一発生した場合に周囲への延焼をどこまで防ぐかという観点から、地域ごとに建物の性能に関する規制が設けられています。
そして、その性能を満たすためには、構造はもちろん、構造によっては様々な基準を満たしたものにしなければいけないため、どの地域に建築するのかによって建築費にも大きく影響します。
そのため、細かいルールについては覚えなくて良いと思いますが、建て替えや新築を検討する際には、必ず「どの地域なのか?」を確認してからシミュレーションしていく必要があります。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「防火・準防火地域」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
防火地域とは
防火地域は、延焼リスクが高い都市中心部などに指定されることが多く、建物に対して非常に厳しい耐火性能が求められます。
防火地域では、次のいずれかに該当する建物を建てる場合、「耐火建築物」としなければなりません。
・3階以上の建物
※地階も含みます。地下+地上2階=3層の場合も該当します。
・延べ床面積100㎡超
※100㎡までは耐火建築物でなくて良いですが、100㎡を超える(101㎡など)が対象となります。
耐火建築物とは
代表的な耐火建築物は「鉄筋コンクリート造(RC造)」です。
コンクリートは燃えず、鉄筋と一体化して強固なため、火災時の延焼リスクが低いことから耐火建築物の代表例となっています。
都市部のマンションに多い構造となります。
耐火被覆を施した鉄骨造
鉄は通常強固な素材ですが、火災時には高温で変形します。
そこで、鉄骨の周囲に耐火被覆(もこもこした綿のようなもの)を施すことで、熱から内部の鉄骨を守ることができるようになり、耐火建築物として認められるようになります。
特殊な木造
近年は技術の進歩により、木造でも耐火建築物に適合させることができるようになってきました。
余談ですが、この特殊な木造をはじめ、鉄骨造に耐火被覆を施す施工費は高額になりますので、建て替えを考慮する場合は鉄骨造の方が良いと思いますが、建築費だけでいえばRC造と同じくらい、またはもっと高額になってしまう可能性もあります。
延焼防止建築物
近年、耐火建築物と同等と分類される「延焼防止建築物」というものができました。
建築業界の方は別として、賃貸関係の方はまだ実務で関わる機会が少ないと思いますが、言葉だけは覚えておいた方が良いかもしれません。
小規模建物の場合
防火地域でも、
・平屋または2階建て
・延べ床面積100㎡以下
であれば、準耐火建築物で足りるケースがあります。
準耐火建築物とは
耐火建築物より一段階性能が緩やかな建物です。
細かな仕様を暗記する必要はありませんが、木造建築の場合は準耐火建築物に適合させる必要が出てくる可能性があります。
木造アパートの融資期間
木造の法定耐用年数は22年が基本です。
そのため、金融機関の融資期間もそれを基準に判断されます。
しかし、金融機関によっては「準耐火建築物にすれば融資期間を延ばせる」というケースがあります。
融資の相談をする際には「木造ですが、準耐火建築物にすれば返済期間は耐用年数以上に延ばすことができますか?」と質問すれば、
・NO
・YES
・準耐火建築物でなくても耐用年数以上の返済期間で融資できる
といった金融機関の方針を確認することができます。
そして、返済期間が延ばせればキャッシュフロー(収支)に大きな影響を及ぼしますので、事業計画に直結してきます。
準延焼防止建築物
耐火建築物と同様に準耐火建築物と同等と分類される「準延焼防止建築物」というものもあります。
耐火建築物には延焼防止建築物という同等の耐火性能を持ったものがあり、それぞれ「準」とつくものもある
と覚えておけば良いと思います。
準防火地域
準防火地域では、次のいずれかに該当する建物を建てる場合、耐火建築物にする必要があります。
・4階以上の建物
・延べ床面積1,500㎡超(1,500㎡まではOK)
準耐火建築物で良いケース
次の場合は準耐火建築物でも認められます。
・3階建てで、延べ床面積500㎡超〜1,500㎡以下
中規模アパートや小規模マンションが該当するケースです。
ちなみに、平屋または2階建てで、延べ床面積500㎡以下の場合は、規制がなくなるため、準耐火建築物でなくてもよくなります。
複数地域にまたがる場合の注意点
では、仮に防火地域と準防火地域にまたがる敷地に建築する場合は、どちらの基準に適合させれば良いのでしょうか。
用途地域(建ぺい率・容積率)の場合、敷地が2つの地域にまたがっていれば、面積按分による計算が可能です。
しかし、防火規制の場合は、原則として「厳しい方を適用」させる必要があります。
・防火地域と準防火地域にまたがる→防火地域の規制が適用
・準防火地域と無指定地域にまたがる→準防火地域の規制が適用
防火または準防火地域の調べ方
用途地域と同様に「品川区 用途地域」「目黒区 用途地域」と検索すれば、「用途地域等指定図」といった行政の公開マップが閲覧できます。
その中に、防火地域・準防火地域の表示もありますので、建て替えや新築の相談を受け、どのような建物が建てられそうか検討することになった際には、まずここを確認してください。
おわりに
最後にもう一度お伝えしますが、私は防火地域や準防火地域の規制に関して、多くの大家さんや賃貸管理会社は暗記する必要はないと思っています。
建築基準法はルール変更も比較的多く、その他にも自治体によっての規制もあるため、詳しく検討する際は建築士に相談する必要があります。
しかし、
「この土地は防火地域ではないか?」
「準耐火が必要になるのではないか?」
と気づけるかどうかが、実務では非常に重要です。
賃貸管理や賃貸経営の現場では、頻繁に建て替えがあるわけではありませんが、いざその場面になった際に、事前に規制を意識できるかどうかで、検討の質が大きく変わります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


