この建物はどのような用途で利用できるのか、既存の建物はなぜそのような形状なのか、建て替えるときにはどのような建物が建築できるのか、それらに深く関わっているのが「建築基準法」です。
しかし、建築基準法は非常に範囲が広く、関係する法律や条例も多々ありますが、大家さんや賃貸管理会社としては必ず押さえておくべき知識があります。
これからは何回かに分けて、建築基準法の内容について触れていきたいと思います。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「建築基準法」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
用途制限
都市計画法で定められた用途地域ごとに、
・この用途の建物は建ててよい
・この用途の建物は建ててはいけない
というルールが細かく定められています。
例えば、閑静な住宅街の中に、大きな音が出る店舗や、不特定多数の人が頻繁に出入りする施設ができてしまうと、住環境は大きく損なわれます。
一方で、完全な工業地帯の中に住宅ばかりが建ってしまうと、都市全体として統一感のない、雑然とした状態になってしまいます。
こうした事態を防ぐために、用途地域ごとに建てられる建物の種類が制限されているのです。
診療所~全ての地域で認められる~
まず、どの用途地域でも認められている代表例が「診療所」です。
閑静な住宅街であっても、工業地帯であっても、病気やけがをする人は必ずいます。そのため、診療所は公共性の高い施設として、幅広い用途地域で設置が認められています。
住宅
また、大家や管理会社にとって最も重要な「住宅」については、工業専用地域を除けば、基本的にどの用途地域でも建築が可能とされています。
この住宅には、当然ながらアパートやマンションといった集合住宅も含まれます。
店舗
次に注意が必要なのが「店舗」です。
一口に店舗といっても、飲食店、物販店、美容室など、業態はさまざまですが、用途地域によって認められる範囲は大きく異なります。
まず、第一種低層住居専用地域(一低層)では、原則として店舗の設置は認められていません。
例えば、戸建住宅を賃貸している大家が、「せっかくだからカフェや小さな店舗として貸せないか」と考えることもありますし、管理会社としても魅力的に感じる場面はあります。しかし、用途地域を確認せずに話を進めてしまうと、後になって「そもそも出店できない」という事態になりかねません。
小規模の一部店舗
例えば、日用品販売や美容室、カフェといった業態で、床面積が150㎡以下、かつ2階建て以下の場合は、第二種低層住居専用地域(二低層)や田園住居地域で建築が認められます。
さらに、上記に加えて、物販店や飲食店であれば、第一種中高層住居専用地域(一中高)でも認められます。
このように、店舗にとって一低層が最も厳しいですが、そこから段々緩和されていくこととなります。
用途地域によって出店できる業態は大きく異なるため、店舗募集を行う場合には、必ず事前に用途地域を確認することが重要です。
建物の規模を左右する容積率と建蔽率
「どのくらいの規模の建物が建てられるのか?」と考えるうえで、最初に調べるべきものが「容積率(ようせきりつ)」と「建蔽率(けんぺいりつ)」です。
容積率とは
「敷地面積に対して、どれくらいの延べ床面積の建物を建てられるか」を示す数値です。
「延べ床面積÷敷地面積」で計算でき、100%や200%、中には1000%という場合もあります。
例えば、敷地が100㎡で、容積率が100%の場合、延べ床面積100㎡までの建物が建築可能となります。
1階50㎡、2階50㎡で合計100㎡、といったイメージです。
なお、共用廊下や共用階段、エレベーターなどは、一定条件のもとで延べ床面積に算入しなくてよいとされています。
前面道路による制限に注意
容積率を考える際、もう一つ重要になるのが「前面道路の幅員」です。
特に、容積率が200%、300%と高く設定されている土地では、前面道路が狭い場合、指定されている容積率をそのまま使えないケースがあります。
そのため、大家から「建て替えるとどれくらいの規模になりますか」と相談を受けた際に、容積率の数字だけで安易に回答してしまうのは危険です。
実際には、建築士にボリュームプランを作成してもらわなければ、自身で調べるのはなかなか難しいです。
建蔽率とは
「敷地面積のうち、どれくらいの面積を建物で覆ってよいか」を示す数値です。
「建築面積÷敷地面積」で計算でき、50%や80%などで、都市計画で定められる数値では80%が最大値です。
例えば、建蔽率50%の土地で敷地が100㎡の場合、建物の建築面積は最大50㎡までとなります。
売買の現場などでは、「建蔽率50%・容積率100%」のことを「ゴットウ」と呼ぶことがあります。ちょっとプロっぽいですよね。
建蔽率の緩和規定
建蔽率には、一定条件下での緩和規定があります。
防火地域内で耐火建築物を建てる場合:+10%
角地の場合:+10%
これらが両方適用されると、合計で20%の緩和を受けることが可能です。そのため、角地の土地は比較的人気が高い傾向にあります。
用途地域の調べ方
用途地域や容積率・建蔽率を調べる際には、各自治体が公開している「用途地域等指定図」を確認します。
例えば、「用途地域 品川区」「用途地域 目黒区」とネットで検索すれば、すぐに確認できます。
おわりに
今回は、建築基準法の中でも、特に大家や管理会社の方に知っておいていただきたい、最初のポイントについて解説しました。
建て替えや新築の検討をする際は、
・用途地域
・容積率
・建蔽率
を把握したうえで、検討を進めていくことが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


