【重点対応エリア】不動前(西五反田・下目黒・小山台・小山)

債務引受とは?〜法人化の場面で登場する重要な仕組み〜

最新更新日 2026年01月30日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

賃貸で債務引受に関わる機会はほとんどありませんが、賃貸管理を通じてコンサルティングを行っていると、時折関わるのが「法人化」です。
また、宅建の学習で「債務引受」を学ぶ際も、書いてあることは理解できても、「これって、どういうシチュエーション?」とイメージが全く湧かないと思います。

今回は、代表例と私が関わった事例も交えて「債務引受」について解説します。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している「債務引受」という動画の内容を、文字で整理したものです。

併存的(重畳的)債務引受

併存的(へいぞんてき)債務引受は、重畳的(ちょうじょうてき)債務引受とも呼ばれます

賃貸の実務で関わることはほとんどありませんが、主に使われる場面は、いわゆる「法人成り」です。

法人成り

例えば、個人事業主として事業を行っており、その後、会社を設立して法人に移行するケースです。
個人事業主時代に金融機関から借入れをしており、その事業を法人へ引き継ぐ場合に、この債務引受が関係してきます。

私自身も個人事業主から法人を設立した経験がありますが、実際にはこの重畳的債務引受を利用したことはありません。ただし、仕組みとして理解しておくことは重要です。

この形では、もともと債務を負っていた個人事業主の債務を残したまま、法人にも新たに債務を引き受けさせることになります。つまり、個人と法人の両方が債務を負う状態です。

これは、個人と法人との関係性が非常に近く、万が一の際には個人にも責任を求める必要があると金融機関が判断するため、このような方法を採用するケースが多くなっています。

免責的債務引受

免責的(めんせきてき)債務引受は、大家さんにとって関係してくる可能性が高いものです。

大家業を営んでいると、最初は個人でアパートやマンションを所有していても、賃料収入によっては税金の問題が浮上します。
日本の税制では、個人の所得が増えれば増えるほど税率も上がり、最終的には収入の半分以上を税金として納めるケースもあります。

こうした状況から、一定の収入になった段階、または今後の収支を見直す段階で、法人化を検討される大家さんは非常に多くいらっしゃいます。

債務引受に関わる当事者

ここで、債務引受に関わる当事者を整理します。

債権者

お金を貸している金融機関です。

債務者

もともと借入れをしていた個人の大家さん、または個人事業主です。

引受人

法人化によって新たに設立された法人が該当します。

免責的債務引受の実務上の考え方

債務引受とは、本来、個人が負っていた返済義務を法人に引き受けさせ、今後は法人が返済を行っていく仕組みです。

免責的債務引受では、もともと債務を負っていた個人は免責され、返済義務から解放されます。実務上は、金融機関から連帯保証人になることを求められるケースも多いですが、債務の主体は法人へ移行します。

一方、重畳的債務引受では、個人と法人の両方が債務を負い続けます。この違いが、2つの債務引受を分ける大きなポイントです。

担保権(抵当権)の移転

金融機関は通常、不動産に対して抵当権や根抵当権を設定していますので、大家さんの場合は、個人を免責しても問題ないと判断されるケースが多くなります。

この際、抵当権の移転とともに登場するのが「設定者の承諾」です。
法人の代表者と不動産の所有者が同一人物であれば問題はありませんが、土地を親が所有し、建物を子が代表に就任している法人で所有するといったケースでは、関係者が複数に分かれることもあります。

そのため、債務引受を行う際には、関係する全当事者の承諾を得ることが不可欠となります。

建物のみを法人へ移転するケース

実務では、土地と建物の両方を法人へ移転するのは難しいケースが多く、土地は個人所有のまま、建物のみを法人へ売買で移転する方法が一般的です。この場合、法人は土地を所有する個人に地代を払う形になります。

ちなみに、ここで大きく関係するのが「借地権」です。
少し寄り道して解説しますが、一旦読み飛ばしてもらっても構いません。

借地権

借地権を設定する際には本来、権利金が必要です。

土地の価値は、土地の上を活用(例:建物を建てて使用する)することに価値があります。
つまり、建物を建てるために土地を借りた場合は、その土地の上に建物を建てられる権利、つまり「借地権」を設定するという概念が生まれます

借地権を設定した後、地主が土地を売る場合、更地よりも大幅に売買価格は下がってしまいます。
なぜなら、土地には誰かが建物を建てている(これから建てる)ため、自由に使えず、価値が大幅に下がってしまうからです。

では、「更地価格-大幅に価格が下がった分」の差額はどこへ行ってしまったのでしょうか?
それは、借地権に価値が移っている、つまり、土地を借りている人が価値を持っていることになります。

無償返還の届出

ということは、地代(土地の賃借料)は別として、借地人は借地契約(土地の賃貸借契約)のときに権利金を払い、解約するときには地主が借地権を買い取るのが通常となりますので、これを無償で行ってしまうと贈与とみなされ、多額の贈与税を求められるリスクがあります。

しかし、「無償返還の届出」といって、税務署に「権利金は無償で土地を借りるので、返すときも無償で良い」という届出を提出することによって、そのリスクを回避することが可能となります。
なお、正式名称は「土地の無償返還に関する届出」といいます。

債務引受を使った法人化の実例

例えば、借入残高が1億円で、建物の価値も1億円の場合を想定します。

まず、建物を1億円で個人から法人に売却します。
本来なら、法人から個人に1億円を支払う必要がありますが、一緒に1億円の債務(借金)を引き受けてもらうことで、売買代金1億円と借金1億円を相殺させることができ、現金決済と同様の効果を得ることができます。

ただし、実際の不動産価値がそれ以上ある場合、評価を誤ると贈与税が発生するリスクがあります。
そのため、不動産鑑定士による鑑定評価を行い、適正な価格で取引を進めることが重要です。

このようにして手続きを進めると、登記簿の所有権移転の原因部分には「免責的債務引受」といった記載がなされることになります。

さいごに

債務引受は、賃貸実務では頻繁に登場するものではありませんが、法人化という重要な局面で現れる非常に実務的な制度です。
また、宅建の勉強でも仕組みと登場場面をイメージできるようになるだけでも、理解は格段に深まります。

いざ当事者になった際に慌てないためにも、今回の内容はぜひ頭の片隅に置いておいていただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

PREV
NEXT