「代理」は、賃貸実務において非常に多く登場します。
また、売買の世界でもよく使われるものになりますので、少し細かく解説します。
法定代理
法律上、特定の人に関しては必然的に誰かが代理人と定められており、それを「法定代理」と呼びます。
最も代表的な例としては「未成年者」が挙げられます。
※未成年者=18歳未満=17歳まで
未成年者は、基本的にその「両親」が法定代理人となります。
任意代理
賃貸実務では、そのほとんどが任意代理に基づいて代理権を授与され、誰かが代理人となります。
任意代理で重要なポイントとなるのが「双方代理の禁止」という概念です。
双方代理の禁止
例えば、部屋を貸す側の大家さんと、実際にその部屋を借りて住む賃借人がいる場面で、不動産業者1社がこの双方(大家さん&賃借人)の代理人になる、ということは禁止されています。
その理由は、双方の代理人となることは利益相反の問題があるためです。
基本的に代理人というのは、例えば大家さんから代理委任を受けた場合には、大家さん側の立場に立って取引をしなければなりません。
しかし、同時に借りる側の立場にも立って取引をするとなると、「どちらの利益を優先するのか」という問題が生じてしまいます。
その反面、売買実務では双方代理が許されている場面があり、それは「移転登記」です。
売った人から買った人へ所有権を移転させたことを登記すること、これを「移転登記」といいます。
本人たちが自身で移転登記申請することも可能ですが、司法書士に依頼することが一般的です。
この場合、司法書士は売った方からの代理人でもあり、買った方からの代理人でもあるという状況になります。
しかし、これは例外的に認められています。なぜなら、売買契約が成立し、代金の授受が行われ、実際に所有権が移転した時点で、その事実自体は変わらず、双方代理を行っても不利益が生じないからです。
無権代理と表見代理
代理権を持っていない、本人が代理権を与えていないにもかかわらず、代理人として取引を行う行為を「無権代理」と呼びます。また、本当は賃貸借契約の代理をお願いしていたのに、売却の代理を行おうとすることも、本来は代理権を与えていない行為なので無権代理になります。
また、一見すると代理権を持っているように見せかけて、代理人として取引を行う行為を「表見(ひょうけん)代理」と呼びます。
一例として、偽造した代理委任状を持ってきて、「自分は売主の代理人である」と主張するようなケースです。
この場合、不動産業者から見ると、「確かにこの方は代理人のように見受けられる」という状況ではあるものの、実際には代理権を持っていないというケースがあり得ます。
したがって、「代理権を本当に持っているのか?」ということを確認することが、不動産業者の大きな仕事の一つになります。
その際に一般的にとても重要になるのは、以下の2つです。
① 代理委任状を持っているのか確認する
② 本人に意思確認を行う
ちなみに、もっと細かく言えば、その「本人」とされている人が「本当に本人なのか?」を確認するため、本人確認することも重要です。
いわゆる「地面師」のような事例も、不動産業界では起こり得ます。
代理の実例
では、代理に関して賃貸実務で関わる実例を3つ紹介します。
実例①:貸主代理
賃貸借契約書や重要事項説明書の「取引態様」という記載欄は、「媒介」となっていることが多いですが、「代理」となっている場合には、不動産業者が大家さんの代理人となって契約をしていることになります。
このケースは非常に多く見られますが、弊社は無権代理になってしまうリスクを回避するためなるべく媒介で契約していますが、例外的に2つのパターンでは貸主代理として取引しています。
1. 電子契約
大家さんまたは借主が海外居住者の場合は、電子契約で賃貸借契約を締結することがあります。
海外郵便は書類がきちんと届くか、日数は所定通りに届くか、しっかり返送されてくるか日本国内のように安心できない場合があります。
そこで、海外居住者と契約を行う場合は電子契約を活用しますが、大家さんがご高齢で電子契約の電子署名対応ができない場合や、最近では保証会社の提供するシステムで電子契約できるようになってきていますが、それが海外からのアクセス制限が掛かっていて電子署名できない場合等には弊社が貸主代理で契約しています。
2. 事業用賃貸
事業用の中でも特に店舗系の賃貸募集では、独特な文化や風習、慣習があります。
また、店舗系の中でも特に比較的大型の店舗のテナント募集を行う場合は、店舗専門の不動産業者の力を借りることによって早期成約に繋げられることが少なくありません。
その反面、管理会社としてはリスクを抑えるため契約には関与しておきたい、大家さんとしては信頼している管理会社に窓口になってもらって契約したいという意向もありますが、店舗型の不動産業者は、大家さん側からもしっかりと手数料をもらえないと動いてくれないケースもあります。
この場合、弊社が貸主の代理人となって、弊社から店舗系業者に媒介を出すことで、それらを成立させることができます。
借主代理という取引もあるのか?
反対に、借主代理は実務上ほとんど使われません。
ごく一部、例外的に過去に対応したケースとしては、借りる方は日本語が得意ではない外国籍の方、その配偶者の方はバイリンガルの方という場合です。
その場合には、配偶者の方に代理人になっていただき、説明を行うということがありました。
実例②:親子での代理
大家さんが高齢になったため、そのお子様に窓口(代理人)を依頼するケースが非常に多いです。
この場合は、二人の親子関係を確認することはもちろん、親御様にもその意向を確認しておくことが重要です。
実例③:定期借家契約です
。
定期借家契約で契約するときと、定期借家契約を終了させて明け渡しを求めたいときに、代理を使うことは多いです。
定期借家契約を有効に成立させるための要件の一つとして、「この物件は定期借家契約である」ということ、「期間の満了までに物件を明け渡していただく必要がある」ということを説明しなければなりません。これを「事前説明」と呼びます。
では、これを誰が説明するのかというと、原則は大家さんなのです。
しかし、これを実現しようとすると、不動産業者が重要事項説明を行った後で大家さんに「事前説明」を行ってもらい、今度は不動産業者が賃貸借契約書の説明を行う、というのは不自然です。
実務上は、大家さんから、この定期借家契約の事前説明を行う権利を代理委任していただき、不動産業者が契約書類の説明とセットで行う、ということがほとんどです。
また、物件を明け渡していただきたいとなった場合、契約期間満了の6か月前から1年前までの、この6か月間の間に、「本物件は定期借家契約であり、契約満了で契約が終了するので、それまでに明け渡していただく必要があります」という通知を行います。これを「終了通知」と呼びます。
ちなみに、再契約するつもりの場合は、終了通知の中に「なお、賃貸人としては再契約をする意向があります」といった文言を添えるのが一般的です。
この「終了通知」も、厳密にいえば大家さんから出します。
しかし、実務上は、不動産業者が代理人として通知を行うことが非常に多いです。
■まとめ
賃貸の実務においては、大家さんの代わりに代理人として賃貸借契約を成立させるための手続きを行ったり、賃貸管理・賃貸運営に関する各種窓口対応その他の手続きを、お子さんなどが代理人として行ったりするときに使います。
さらに、定期借家契約を締結する際の事前説明、そして契約を終了させる際の終了通知など、さまざまな場面で「代理」は登場します。
そして、気を付けなければならないポイントも多くありますので、代理については理解を深めておくことが重要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。


