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賃貸借契約で知っておきたい「無効」と実例

最新更新日 2026年01月20日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

宅建の勉強を始めると、最初に「こういう場合が無効」「こういう場合は取消」と色々な場面で出てきますが、賃貸管理の実務においては、「取消」はほとんど出てきません

しかし、「無効」についてはしっかり理解しておくことが非常に重要です。
今回は特に「無効」に焦点を当てて解説します。

無効と取消の違い

無効とは「最初からなかったことになる」というものです。
例えば、何らかの契約があり、それが実は無効であった場合には、その無効となる事柄については「最初からなかったことになる」ということになります。

「取消」は、賃貸管理においてはほとんど使わないのですが、無効との違いを理解しておくことは重要です。

取消とは、最初は「有効」ですが、後から取消を請求すると、「無効」にすることができる、というものです。

取消の例

取消できる例として、「強迫」があります。
相手に脅しをかけて、相手方は自分の身を守るために、つい本意とは別に「分かりました。契約します。」と言わせるような行為です。
やってはいけない行為ですが、強迫をされて「YES」と言ったことが、全て相手方にとって不利な内容なのかというと、そうではない可能性も否定できません。

例えば、強迫する人自身が不動産の相場を理解しておらず、高くても1億円くらいで売れる物件を保有している方に対して、「お前、この物件1億5,000万で俺に売らないと、分かってんだろうな」と脅しをかけても、売った方は「5,000万円も高く売れた!脅されたのは怖かったけどラッキー!」となる可能性もゼロではありません。

そうなると、確かに脅されたという行為自体は法律に抵触する可能性はありますが、一旦有効であり、「高く売れたけど、そもそも売るつもりはなかった不動産だから取消しよう」と取消請求することも、「まあ高く売れたからそのままにしておこう」と有効のままにしておくこともできます。

無効の例

無効は、賃貸借契約で多く関係してきます。

例①:遅延損害金

家賃滞納に対しては、本来約束していた日(前月末日迄、前月27日迄など)から、実際に支払われた日までの間は、遅延損害金が発生すると記載された契約書が一般的です。

しかし、「1日遅延したら賃料の2倍」「年利100%」というのは、やりすぎです。
法律では「年14.6%」が上限とされており、15%や20%にしてしまうと、14.6%までは有効ですが、この14.6%を超えた部分に関しては無効になります。

したがって、14.6%を超えた請求を行って支払われたとしても、返さなければいけないということになります。
この遅延損害金の上限「14.6%」という数字は非常に重要なので、賃貸に携わる方はぜひ覚えておいてください。

例②:無催告解除

例えば、「家賃を1日でも滞納したら契約解除」という特約は無効です。
無催告に限らず、「家賃を1か月滞納したら契約解除」という特約も無効になる可能性が高いです。

実務上は、3か月滞納してから、「1週間以内に滞納分全額を払わなければ解除します」と催告を行い、それでも支払われない場合は契約解除と明け渡しの訴訟を起こしていくのが一般的です。

「3か月滞納」というのは一般的な慣習であり、細かい事情によっては前倒しになる可能性もありますが、さすがに「1日でも滞納したら契約解除」というのは、明らかに賃借人にとって不利な契約なので、無効になります。

例③ :立退料請求禁止

何らかの事情で大家さん側から「お部屋を明け渡してほしい」と申し出た場合、交渉次第であることと、状況によっては立退料を払わなくてよいケースもありますが、一般的には何かしらの立退料(新居の契約金や引越代等)をお支払いするというのが通例です。

しかし、立退料を一切禁止する特約があっても、その特約は無効になります。

例④:賃料減額禁止

契約期間中に物価や近隣相場の下降や建物の経年劣化、設備故障等により、賃借人から「賃料を減額してほしい」と要望が出る可能性がありますが、この賃料減額を一切禁止というのは、明らかに賃借人の方に対して不利な特約のため無効となります。

しかし、賃料減額については、普通借家契約と定期借家契約では扱いが異なります。
定期借家契約の場合は、2年や3年といった契約期間の満了とともに契約が終了するため、定期借家契約の場合は賃料減額禁止の特約が有効となります。

余談ですが、反対に賃料増額禁止の特約(賃料を上げない特約)は、賃借人にとって有利な特約なのでどちらの場合も有効です。

無効特約の使い方

大家さんから、賃借人に不利な特約を入れて欲しいとご要望をいただくことがあります。

どのような特約が無効になるのかを正しく理解しておくことによって、「それは入れておきましょう」「お気持ちは分かるのですが、無効になってしまうため入れられません」と適切な対応を行うことができます。
ちなみに、一つのテクニックとして、無効であることを理解した上で、実務上はあえて特約を入れておくということもあります。

例えば、立退料の請求禁止特約はその一例です。実際には無効であることを理解していますが、契約書に記載しておくことによって、「書いてありますよね」と主張できるため一定の抑止力が生まれます。
もちろん、弁護士が介入する争いになった場合には、当然無効と言われておしまいですが最初の交渉段階では、「この特約が入っていますので、新居の契約金や引越代など相応の費用はお支払いしますが、それを超えるものについてはお支払いできません」といった交渉を行うための材料にはなります。

また、他社の契約書を拝見すると、「2か月分の滞納があった場合には契約解除」といった条文が入っていることがあります。
初めて2か月分の滞納があったからといって契約解除を主張するのは困難ですが、度々滞納を繰り返している状況が続いた場合等は、滞納額が2か月分溜まった段階で契約解除を主張することもあります。

まとめ

大事なことは、「無効」とは「最初から無かったことになる」ということであり、どのようなものが無効になるのかを正しく理解しておくことです。
そして、それを理解した上で、「ダメ元でこの特約を入れておきましょう」と適切な対応を行うことで、大家さんと管理会社に認識の相違なく適切な判断を行えるようになります。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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