前回紹介したマンションで、賃貸管理会社の変更時には3年間ほど滞納が頻発し、いつも保証会社による立替払い(代位弁済)を行っている世帯がありました。
【管理対応事例】年末年始に排水管が詰まって汚水オーバーフロー
私が管理委託を受託させていただいた賃貸マンション・賃貸アパートでは、なるべく代位弁済を行わず、督促で回収を図るように努めています。
なぜなら以下の理由が挙げられるからです。
・借主が代位弁済に慣れてしまうと家賃滞納が常態化してしまう
・代位弁済履歴が残り、契約解除したくても転居が難航する
・督促を通じて人間関係を構築できる
今回もなるべく代位弁済を行わない方針で進めたかったので、まずは状況の調査から行いました。
過去の滞納督促・対応履歴の確認
オーナー様が前管理会社から聞いた話だと、借主には全く連絡が繋がらないと言われていたそうです。
しかし、電話やメール、手紙など、どのような連絡手段を行っていたかについては不明でした。
保証会社に確認したところ、保証会社も電話は全く繋がらなかったようですが、請求書を郵送するとそのうち振り込まれるとのことでした。
色々と状況調査を行ったところ、定期的に郵送物を取り出していることが分かり、「手紙」であれば連絡が取れると判明しました。
手紙の作成・投函
まずは以下の手紙を作成し、投函しました。
この度、8月1日より〇〇の新管理会社となりました品川目黒不動産管理株式会社の担当:三好と申します。
何かお部屋内外でお困りの際はいつでもご連絡いただければと思いますので、宜しくお願い致します。
まず、大前提として〇〇様には長くお住みいただきたいとともに、なるべく快適に生活をしていただきたいとオーナー様も私も考えておりますので、それを踏まえてのお話しとなることをご承知おきいただければ幸いです。
今回は今後の家賃のお支払い方法に関して相談したく、こちらの手紙を差し上げました。これまでの履歴を拝見すると、今年に関しては〇月分と〇月分以外は〇〇での代位弁済(立替払い)をご利用いただいているようでした。
おそらく何か大きなご事情があってのことと思いますので、オーナー様としては立替払いで家賃をお支払いいただけている以上は特に問題はございません。
その上で、保証会社の立替払いの履歴は残ってしまいますので、近年の賃貸借契約を行う際の保証会社への加入指定率を考えると、今後何等かの事情で〇〇様がお引越しを検討された際、大きな障壁になってしまうのではないかと心配しております。
また、立替払いを行うと1回あたり〇〇円(税込)が掛かっているかと思いますので、それも〇〇様のご負担になってしまっていると感じて心が痛みます。
これまでは旧管理会社の考えに基づいて立替払いで行っておりましたが、私としてはもし何かお力になれることがあり、それにより立替払いを利用せずに済むのであれば、〇〇様のご負担や将来的なリスクも軽減できるのではないかと思っています。
オーナー様にそのお話しをしたところ、そのようなリスクや負担があることを知らなかったため、〇〇様のためになるのであれば、ぜひ相談してほしいとお声をいただいております。
まずは一度お話しやご状況を〇〇様のお話しできる範囲で伺えればと考えており、電話やzoom等のテレビ電話、またはこのコロナ禍ではありますが〇〇様がよろしければ直接お会いしてお話しでも構いません。
日時は平日でも土日祝でも、早朝でも夜間でもなるべく〇〇様のご都合に合わせたいと考えております。
ただ、立替払いの申請期限もありますので、取り急ぎ8月10日(火)までにご一報いただければ幸いです。連絡は私の携帯(〇〇)へお電話いただくか、いずれかのメールアドレス(会社:〇〇、個人:〇〇)にメールをいただいても構いません。
お盆前で大変お忙しくされていると思いますので、大変お手間をお掛けしてしまい申し訳ございませんが、ご連絡をお待ちしております。
何卒ご協力のほど宜しくお願い致します。
そして、締切日までお待ちしていたところ・・・
借主様からの電話連絡
締切日のお昼頃、携帯に着信があり、出てみると・・・手紙をお届けした借主様からでした。とても嬉しかったです。
お話しを聞くと、特に近年はコロナの影響で収入が減少し、月末までに支払えなかったそうですが、いつも保証会社に立替払いを請求されてしまっていたので、仕方なく届いた請求書をもとにお金の準備が出来たら支払っていたとのことでした。
手紙でも記載していたこちら側の意向を改めて伝えました。
加えて、例えば現在の滞納している1か月分を分割して支払うこととし、今月末から月末までにお支払いいただくのはどうかと今後の対応について提案しました。
すると、毎月15日が給料日で、もう少しで追いつけるようになるので、今後もしばらく遅れてしまうかもしれないですが、もう数か月ご了承いただけませんか?と相談があったため、オーナー様へ確認した上で了承しました。
LINEでスムーズに連絡
家賃滞納については一つの目途が立ちましたが、今後何か漏水トラブルなど発生した際、スムーズに連絡が取れないのは避けたいという気持ちもありました。
電話やメール、ショートメールでは連絡が取り辛く、手紙では円滑なやり取りとは言えない、何か良い連絡手段はないだろうか・・・
そうだ!LINEはどうだろうと思い見てみると、僕の携帯番号を登録してくれたのか「知り合いかも?」に出てきたため、試しに連絡したところすぐに返信がありました。
それ以降、無事にLINEでスムーズにやり取りを行えるようになりました。
賃貸管理会社の引き継ぎを行った際、「この人はなかなか連絡が取れない」という情報があった場合も、よくよく調べてみると電話しかしていない、メールしか送っていないというケースが多々あります。
非常に便利になった現代なので、人によって連絡が取りやすい、やり取りしやすいツールは様々です。例えば、以下のような方法が挙げられます。
・電話
・メール
・ショートメール(SMS)
・LINE
・手紙
・訪問
中には留守番電話が入っていた場合だけ折り返すといった方もいるため、色々な連絡手段を試して、賃貸管理を行う側が相手に合わせていく姿勢が必要となります。
無事に滞納が無くなり、物件管理へ協力的に
前記の手紙から3か月ほどは給料日までお待ちする状況が続きましたが、その間も遅れる旨を連絡してくれたり、一部だけ月末までにご入金いただき、残りを給料日にご入金いただいたり、とても誠意ある対応をしてくれました。
また、建物全体を対象とした排水管洗浄や給湯器交換なども積極的に協力してもらい、とても感謝しています。
今回紹介した事例のように、賃貸トラブルは揉めてストレスを抱える状態を生み出してしまうケースもあれば、反対に入居者や借主と良好な関係性を築くキッカケにもなり得ます。
前管理会社では、家賃滞納の督促が相手を攻撃する高圧的な対応だったために、弁護士を使う事態にまで発展してしまったようでした。
そのような経験があったため、今回の対応はオーナー様からもとても感謝していただきました。
今回は一つの手紙がキッカケで良い方向に進みましたが、手紙作成にあたって心掛けたことはこちらの記事で解説しています。
全ての交渉と対応で”結果”を左右する重要なテクニックとは?
誰しも色々な生い立ちや境遇があります。
仮に誰かから暴言を吐かれたとしても、自分がその相手と同じ遺伝子で、同じ生い立ちや境遇にあったとしたら、おそらく自分も同じことをしていたでしょう。
そのような相手への理解と、思いやる気持ちを持って対応を行えば、多くの賃貸トラブルは炎上せずに、かえって良い人間関係を構築し、良好な管理状態を築く礎になっていきます。
ご愛読いただきありがとうございました。