突然ですが、質問です。
客付業者がお客様を案内する際の内見方法にはどんな方法がありますか?
大丈夫です。「え?客付業者?」「内見方法に種類なんてあるの?」という大家さんがほとんどなのでご安心ください。
これは非常に重要なお話しなので、ぜひ最後まで読んでいただき、お付き合いしている不動産会社がどのような対応を行っているか知る機会にしていただければ幸いです。
元付業者と客付業者
仲介業者には業界用語で「元付業者」と「客付業者」に分類されます。
まず、大家さんが空室の入居者募集を依頼している業者のことを、「元付業者(もとづけぎょうしゃ)」と呼びます。
また、その元付業者にお部屋を借りたいという人が直接問い合わせして契約に至るケースもありますが、別の不動産業者に「何かいいお部屋ありませんか?」と相談し、その別業者から元付業者に問い合わせて契約に至るケースもあります。
その借主側の業者を「客付業者(きゃくづけぎょうしゃ)」を呼びます。
つまり、大家さんが空室募集を依頼している業者が「元付業者」、借主がお部屋探しを依頼した業者が「客付業者」ということですね。
ただし、借主が元付業者に直接問い合わせて契約した場合は、客付業者は存在しないことになります。
客付業者が内見のご案内をするには?
では、例えばお部屋探しをしているAさんが、自分の住みたい街の不動産屋(客付業者)に飛び込み、「こんな条件で探しているのですが、何か良い物件ありませんか?」と相談したとします。
客付業者は一般的に「レインズ」という不動産業者間の流通サイトを使って、Aさんの希望に合いそうな物件を調べます。
そして、Aさんに「こんな物件はいかがですか?」と提案して、Aさんが「この物件を見てみたいです」と伝えると、客付業者は元付業者に連絡して以下のようなやり取りを行います。
■客付:お世話になっております。品川目黒不動産管理株式会社の三好と申します。物件確認お願いします。
■元付:どうぞ。
■客付:東京レジデンス、301号室、賃料100,000円、ご紹介可能でしょうか?
■元付:現地対応で可能です。
■客付:ありがとうございます。ご紹介頑張ります。失礼致します。(終話)
上記のように物件の空き状況の確認することを「物件確認」や「物確(ぶっかく)」と呼びます。
そして、客付業者は元付業者にFAX等で内見依頼書を送り、内見方法をヒアリングして、Aさんをご案内します。
最近は自動音声で物件確認が出来たり、インターネット上で物件確認や内見依頼が行えたり、技術が進歩して便利になってきています。
ちなみに、上記のやり取りを見て「現地対応ってなに?」となった方も多いと思います。
これが今回のテーマである「3種の内見方法」の1つです。
3種の内見方法と問題点
では、内見方法にはどのような種類があるのでしょうか?
答えは、「現地対応」「鍵取り」「立会」の3種類となります。一つずつ見ていきましょう。
現地対応とは?
物件の雨どいやフェンス、パイプスペース内の配管などにキーボックスを設置し、その中に鍵を入れておいて、内見依頼が入ったらキーボックスの解除番号を客付業者に教えるというものです。
中には郵便ポストに鍵を入れて、内見依頼が入ったら郵便ポストの解除番号を教えるケースや、パイプスペースの水道メーターのカバー下に直置きしているケースもあります。
現地対応の問題点は、元付業者は内見者がどのような人なのか見ることがないため、入居してみたらトラブルメーカーだったという可能性があり、書面上だけでは人柄の判断を行うことはできません。
入居後に住民同士の賃貸トラブルが発生する場合は、この現地対応で内見して入居したケースが非常に多いです。
また、業界内では内見者がキーボックスの解除番号や水道メーターに直置きされていることを知り、気が付いたら勝手に住み着いていたというトラブルも発生しています。
鍵取り(かぎとり)とは?
元付業者に鍵を借りにきてもらうという方法です。
元付業者が物件の遠方にある場合は、物件の近隣業者に鍵を預けて、近隣業者に鍵を借りにきてもらうケースもあります。
鍵取りの場合は現地対応のように勝手に知らない人が住み着いてしまうリスクは大幅に削減しますが、やはり内見者がどのような人か見ることはないため、入居後に賃貸トラブルになるケースは多々あります。
また、「現地対応」と「鍵取り」の大きな問題は、元付業者が空室物件を巡回点検しない限り、室内の異常に気付くことができなくなってしまうことです。
例えば、夏場などはキッチンやトイレ、洗面台、お風呂などの封水(トラップの水)が無くなってしまい、下水の臭いがお部屋中に充満し、内見した際に大きな不快感を与えてしまうケースは空室期間の長い物件に多く見られるパターンです。
中にはハエやゴキブリの死骸が大量に発生しているケースは最悪です。
次に大きな問題は、内見者の感想や反応を確認して、空室の本当の原因を探ることができないことです。
空室には「内見者が見送った理由」が存在します。それを内見者の反応を見たり、率直な感想を聞いたりしながら、改善できることはしていくことが空室対策には非常に重要です。
それらの問題点を解消できるのが、3つめの内見方法である「立会」です。
立会とは?
これは元付業者が内見時間に現地へ行き、鍵を解錠して内見に立ち会う方法です。
定期的にお部屋内をチェックする機会になるため、その都度排水口に水を流したり、窓を開けて換気したりすることで、空室の維持管理を行うことができます。
また、真夏はお部屋内が蒸し風呂のように暑くなっている場合が多いので、内見予定時間の10~15分前には物件に到着して、換気して冷房をつけ、ある程度冷やしてから内見のご案内をするだけで、お部屋に対する印象が向上するため成約率も高くなります。
中には鍵を解錠した後は入口で待っている元付業者もいますが、その物件の魅力を一番知っているのは「大家さん」と「元付業者」です。
物件の魅力を一番知っている一人である元付業者が積極的に物件の魅力や、地域の魅力を伝えることで、成約率の向上が期待できます。
ただし、決めようとゴリゴリ営業してしまうとかえってマイナス効果になる場合もあるため注意が必要です。
そのような案内を通して、見た目や話し方、立ち振る舞いなどを見ることは大きな審査材料になります。
家賃は保証会社に入ってもらえれば滞納リスクは大幅に抑えられるため、最も注意すべきは「人柄」です。人柄が悪ければ賃貸トラブル発生の可能性が高くなり、反対に人柄が良ければ賃貸トラブルも極端に少なく快適な賃貸経営が実現できます。
入居審査のチェックポイントはこちらの記事で紹介しています。
まとめ
今回は3種の内見方法について解説しましたが、ご自身が依頼する不動産会社にどの内見方法で対応してもらいたいかは一目瞭然ですよね。
私は原則として全件立会でご案内を行っていますが、不動産業者の多くは現地対応か鍵取りで対応しているのが実情です。また、立会で行っていても、ただ鍵の開錠をして入口で待っているだけという不動産業者も少なくありません。
私は成約率の向上と賃貸トラブル予防の観点から、「立会」に勝る内見方法はないのではないかと考えています。
しかし、将来はアバターが現地にいて、自分の代わりに案内してくれる、意のままに動くドローンと音声が中継されて遠隔で案内できる、そのような立会同様の新たな内見方法が生まれる日が来るのかもしれませんね。
ぜひ空室や賃貸トラブルでお困りの大家さんは、任せている不動産業者の内見方法を知ることから始めてみてください。
ご愛読いただきありがとうございました。