最近、人気設備ランキングで常にトップに君臨する設備が「インターネット無料」です。
様々な雑誌やインターネット上の記事を拝見すると「周辺相場より家賃が高くても決まる」「入居者が一番欲しい設備!」など多彩な紹介をされていますが、本当に空室対策として有効なものなのでしょうか?
空室対策としての有効性
私の経験上、お部屋探しの際に「決めようか、どうしようか」や「物件Aにしようか、物件Bにしようか」と悩んでいる人に対して、最後のプッシュとしては有効な設備だと思います。
また、問い合わせの際に同じくらいの合計賃料と諸条件の物件があった場合、無料インターネットの有無が問い合わせに関わることもあるかと思います。
しかし、残念ながら「賃料を上げても導入したからといって有効になる訳ではない」というのが本音です。
おそらく賃料を上げても決まった事例の多くは、借主が元々想定していた予算が相場より高かっただけで、無料インターネットがあるから賃料が高くても決めた訳ではないと思います。
お部屋探しをする方のほとんどが「賃料は〇〇まで」と決めて検索しています。
「無料インターネットが付いていれば、実質的に毎月3,000円~4,000円安くなるから、賃料は〇〇までで探してみよう」と検索している人はあまり見かけません。
借主の本音
まず、無料インターネットは借主にとってどのようなメリットがあるのか考えてみましょう。
代表的なものは以下となります。
①導入工事が不要のため、入居してすぐにインターネットが使える
②契約や工事に掛かる費用がない
③インターネットの月額料金が不要になる
④転居する際も解約金などが掛からない
私がこれまで数百組のお客様をご案内してきて、この中でお部屋探し中にお客様の口から出てきたメリットは③だけです。
反対に、「無線より有線で使用したいので個別で契約したい」「インターネットの速度が心配・・・」という不安な声の方が多かったです。
無料インターネットを導入する際の注意点
少なくとも借主にとってメリットのあるものですし、空室対策には有効か否かといったら「有効」であることは間違いないです。
しかし、私がお伝えしたいのは他の記事でも書いているように、「その前に(お金を掛ける前に)できることはないのか?」を考えることが重要です。
また、無料インターネットを導入する方向で検討する際も、費用対効果について考えることが重要です。
例えば、導入費用が合計で50万円掛かり、毎月のランニングコストが2万円掛かると想定した場合、10年間で考えると290万円掛かることになります。
では、290万円の投資に対し、どのくらいの賃料増額や空室損の減少に効果があり、リターンを得られるのかを検証しなければいけません。
無料インターネットを提案された場合に気を付けること
まず、上記の注意点について気を付ける必要がありますので、「空室対策に効果があります!」と提案されても鵜呑みにして導入しないように気を付けましょう。
また、不動産会社が無料インターネットを提案して導入するに至った場合、不動産会社は「紹介料」や「業務委託料」といった名目の金員を受け取れることが一般的です。
中にはそのようなキックバック目当てで提案している場合もあります。
加えて、導入した建物で中途解約するにはインターネット会社の縛りや解約金、入居者からの反発など、様々なリスクも生じます。
最後に
私は様々な収支改善に携わる中で、それなりの導入費用やランニングコストが発生し、もし経営状態が悪化しても縛りがあるサービスに対して、そのリスクを少なからず感じてしまうのが本音です。
もちろん、シェアオフィスやテレワーク対応物件、コミュニティ賃貸といった物件のコンセプトに必要な場合は積極的に導入するべきだと思います。
ただ、空室に困っているから、新築時に空室対策として、といった考えで導入を検討する場合は、慎重に判断する必要があると思います。
ご愛読いただきありがとうございました。