前回は「賃貸管理会社にお願いできる業務内容」についてお伝えしましたが、その代表的な業務が「集金代行」です。
家賃の集金管理を賃貸管理会社に任せて安心してしまい、トラブルに発展したケースも様々見てきました。
今回はトラブル事例とその予防策について解説したいと思います。
2つのトラブル事例と対応、予防策
では、私が過去に相談を受けた案件や実際に家主から聞いた2つの事例をもとに、どのような対応や予防策が適切なのかお伝えします。
①不動産会社から半年分の家賃が振り込まれていない
今回の家主は隣県に一戸建てを所有し、親の代からお願いしていた不動産会社に賃貸管理を任せていました。
親が亡くなって相続し、ご自身も一戸建てから入る家賃収入は手を付けていなかったため、特に家賃について気にすることもありませんでした。
ある日、半年間ぶりに通帳を記帳してみると賃貸管理会社から半年間も家賃が振り込まれていないことが発覚しました。
すぐに管理会社の担当者に電話するも繋がらず、やっと繋がったと思ったら「後日計算して振り込みます」と言われたまま連絡がありません。
「これからどうするのがいいか・・・」と相談を受けました。
家賃振込先と管理会社を変更
まずは入居者に直接連絡を取ってもらい、事情を説明していただきました。
次に日当だけもらって私が地元の優良な管理会社探しを行いました。
地元の管理会社5社と面談するために現地へ行ったついでに、家賃の振込先変更通知書を持参して入居者にもご挨拶し、振込先変更はご快諾いただきました。
無事に良い管理会社が見つかったため、管理委託契約は家主と直接やり取りしていただくよう案内しました。
搾取された家賃や管理委託解除については法律の専門家を紹介しましたが、最終的には回収に掛かる費用の方が高くなりそうで、その他の手間やストレスも考えて泣き寝入りすることになったそうです。
家賃の支払予定日の翌日には必ず入金を確認する
実は、このように不動産会社が集金した家賃を搾取してしまうケースはこれに限りません。
中には不動産会社が倒産して、払えなくなってしまうこともあります。
必ず家賃の支払予定日の翌日には入金を確認し、万が一入っていない場合はすぐに連絡を取りましょう。
特段の事情があれば別ですが、もしもいい加減な対応だった場合は、賃貸管理会社を変えることを検討した方がいいかもしれません。
人の大切なお金に対して対応がお粗末な場合は、借主や入居者に対しての対応はもっと悲惨な場合が多いです。
②「家賃滞納がひどく弁護士に依頼してもらえないか」と相談が来た
ある家主は賃貸管理会社から「借主が家賃を半年分も払ってくれず、自分たちでは手に負えないので弁護士に依頼してもいいか?」と相談があったそうです。
弁護士に依頼して和解成立
賃貸管理会社のお願い通り弁護士に依頼して借主と交渉してもらい、新居の契約金や引越し代を家主が負担することで和解が成立し、明け渡してもらったそうです。
これにより、家賃滞納期間の空室損、新居の契約金や引越し代といった立退料、弁護士費用などで多額の損失が発生してしまいました。
集金管理の報告と家賃保証会社の利用
まず、賃貸管理会社が半年間も続く滞納状態を報告していなかったことが問題です。
このケースでも家主は該当世帯分の入金の確認を怠っていたのですが、もし滞納者がいる場合は小まめに連絡をもらうようにしないと、被害が大きくなってから初めて知る可能性があります。
また、連帯保証人が付いていても払ってくれないケースは多々あり、中には連帯保証人の親が亡くなって、財産がなかったために相続放棄されてしまい、無保証状態になっていたというケースもあります。
現在は「家賃保証会社」の加入が一般的になってきているため、借主による家賃滞納であれば家賃保証会社が代わりに家賃を払ってくれます。
滞納が続いた場合の明け渡し訴訟に掛かる費用も負担してくれる場合が多いため、今後は「家賃保証会社への加入」を契約条件としましょう。
しかし、家賃保証会社ならどこでも良いという訳ではありません。
なぜなら家賃保証会社も一企業なので、倒産してしまうリスクもあります。過去に「リプラス」が倒産したときは、無保証になってしまった契約が多数発生しました。
三大保証会社と呼ばれる「全保連」「日本セーフティー」「日本賃貸保証(JID)」などであればそのリスクは極めて低そうですが、念のため不動産会社が使用している家賃保証会社を教えてもらい、その家賃保証会社について調べておきましょう。
賃貸管理会社の督促業務の限界
最初に紹介した賃貸管理会社が家賃を搾取していたケースは論外ですが、悪質な賃借人の場合は思うように家賃回収ができない場合もあります。
もちろん督促方法で回収率も圧倒的に変わりますが、賃貸管理会社にできるのは滞納者に振り込まれていないことを伝えたり、払ってもらうようお願いしたりすることに留まります。
弁護士や弁護士法人以外の者が強制的に支払わせたり、強引に法的効力のある書面(合意書や公正証書など)を取り交わさせたりするのは、「非弁行為(ひべんこうい)」と呼ばれる弁護士法違反になります。
そのため、賃貸管理会社が家賃滞納している借主に対して「管理会社の立場」として督促したにも関わらず払ってもらえず、連帯保証人も払ってくれない場合は、家主自ら対応するか、弁護士などの専門家に依頼しなければいけません。
その煩わしさから解放されるためにも家賃保証会社の加入は必ず行っていきましょう。
集金管理だけ自分で行うこともできるの?
賃貸管理会社によりますが、合意が得られれば自分で家賃の入金確認を行い、滞納時だけ賃貸管理会社に督促してもらうことは可能です。
また、家賃保証会社の多くは口座振替で家賃を引き落としできるようになっていますので、引き落としした家賃を家主に直接送金してもらうこともできます。そうなると賃貸管理会社に集金管理を任せる必要がなくなります。
その分、管理料を安くしてもらえないか相談するのも選択肢の一つです。
最後に
世の中の多くの賃貸管理会社は集金管理や適切な督促業務、家主への送金をしっかり行っていますが、中には悪質な業者がいるのも確かです。
何かあってからでは遅いので、家主自身も任せたから安心ではなく、最低限の確認と管理は行っていかなければいけません。
ご愛読いただきありがとうございました。