前回と前々回で「約款の独自解説:第1条①」「約款の独自解説:第1条②」ということで、国土交通省のホームページで掲載されている「賃貸住宅標準契約書」を例として、冒頭の第一条の解説を行いました。
不動産業者でも契約約款に記載されている一文がどのような意味で、そのような場面のトラブルを抑止するために記載され、どのような場面で用いられるのかを理解していないケースが非常に多いため、実務をイメージして第二条の解説を行います。
第2条(契約期間及び更新)
賃貸借契約の契約約款では「協議の上、本契約を更新することができる。」と記載されています。では、協議の上で更新しないということもできるのでしょうか?
答えは、一定の条件をクリアすれば更新しないことができる、となります。
ちなみに、貸主から「更新しない」と主張することを「更新の拒絶」といいますが、更新の拒絶が認められるためには「正当事由」が必要となります。
正当事由とは、客観的に見て「それは言ってることは正しいし、当然だよね」と認められる「理由」となりますが、判例を見ていくと容易に認められるものではないことが分かると思います。
しかし、「協議の上」と記載しておくことで、もし何等かの事情で貸主側としては更新したくないと考えた場合、「賃貸借契約書にはこのように書いてあるので、あくまで話し合ってお互いが合意した上で更新するかどうかを決めることができますよね?」と主張できる材料になります。
間違っても「当然に更新できる」などとは記載しないようにしましょう。
更新とは、そもそも何でしょうか? インターネットで検索すると以下のように出てきました。
つまり、契約は期間の満了とともに終了した訳ではなく、あくまで従前の契約を継続するということになります。
この「更新」には2つの種類が存在します。
合意更新(ごういこうしん)
貸主借主双方の合意の上で、契約を更新する。この場合、従前の契約の内容で契約するケースが多く、例えば「2年間」の賃貸借契約を合意更新する際は、更新後も「2年間」の契約となるイメージです。
法定更新(ほうていこうしん)
一番厄介なのは、この「法定更新」です。もし、契約の満了時に合意更新を行わず、契約満了後も借主が賃借し続け、更に貸主側から合意更新の請求をしていなかった場合・・・と固く書いていますが、
簡単に言うと貸主や不動産業者が更新業務を忘れた場合は、「法定更新」となります。法定更新した場合は、期限の定めのない契約へと移行してしまうため、それ以降に「更新」という概念がなくなってしまいます。
「更新」がない、ということは、「更新料」の請求も「更新の拒絶」も行えなくなってしまいますので、絶対に更新だけは漏れがないようにしましょう。
不動産業者に丸投げしていると、業者によっては更新業務が漏れてしまい、法定更新してしまっているケースがあります。借主が良い方であったり、法律に詳しくない方であったりした場合は実務上やり直しが利くかもしれませんが、そうでない場合は貸主側に不利益をもたらす可能性があるため、満期管理くらいは家主自身でも行うことを推奨しています。
1条・2条は「第1条」と分かりやすく記載されていますので、誰でも書面を見ればわかると思います。問題は1項・2項といった「項」です。例文では、「契約期間は、頭書(2)に記載するとおりとする。」は1項となり、「2 甲及び乙は、協議の上、本契約を更新することができる。」が2項となります。
おそらく「1項なんて書いてないじゃん!」「2とは書いてあるけど、2項とは書いてないから分かり辛い・・・」と感じる方もいらっしゃると思いますが、そういうものなので覚えておきましょう。
ちなみに、概念としては「第2条の中の1項」というもので、更に「号」というものも存在します。それは、「第2条の中の2項の中の1号」というように、
条 → 項 → 号
と細分化されていきます。これが分かっていれば、例題の賃貸借契約書で「第7条の1項の3号」と言われたら、「反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。」の部分にパッと行きつけるはずです。
ご愛読いただきありがとうございました。