不動産業者、特に営業マンとしては、成果を求めることは大事な姿勢ですが、成果を重視するあまり借主に対して良いことばかり伝え、入居後にトラブルへ発展するケースが多々見受けられます。
例えば、上階に小さなお子様のいるファミリー世帯が住んでいるため足音が響いてくること、給湯器のコントローラーに「自動お湯張り」のスイッチがあるもののユニットバスが対応しておらず自動お湯張りは使用できないこと、湿気がこもりやすくカビが生えやすいことなど多岐に渡ります。
そして、入居後に発覚して「音がうるさい」「自動お湯張りが使えない」「カビが生えやすい」とクレームに繋がり、様々なトラブルに発展することがあります。私は、内見のご案内時や申込時には、後のトラブルになりそうなことを借主に対して伝えるようにしています。なぜなら、入居してからトラブルになった際の労力やストレス、万が一発生する費用を考えると、未然に防ぐことの方が重要だからです。
更に、内見のご案内時には、最初に
と悪い部分を伝えてからご案内することで、実は成約率も向上します。理由は2つあり、「安心感」と「感情の動き」です。
冒頭でお伝えした通り、世の中の営業マンは良いことばかり言い、悪いことは聞かれなければ言わない、あるいは聞かれてもあえて言わないというイメージが強いです。そこで、事前に悪いことを伝えると「この人は信用できるかも」と安心感が生まれ、良い部分を説明した際も疑いなく伝わり、成約率の向上に繋がります。
また、良い部分を伝えた後で内見者が悪い部分を見つけてしまうと、上がっていた気持ちが下がり成約率も下がります。先に悪い部分を伝えてから良い部分を見つけていくと、下がった気持ちが上がっていくので、最終的にお申込みとなる確率が高まります。
イメージとして、素行の悪い不良少年が子供を助けている姿を見ると好感度が急上昇するのに対し、優等生な少年が実は隠れて子供をイジメていたことが発覚した場合、好感度が一気に下がりますよね。
仮にその少年を紹介する際も「彼は一見不良で普段の素行は悪いけど、実は子供を助ける良いところもあるんだよね」と紹介されると「本当は良い子なのかも?」と感じますが、「彼は優等生なんだけど裏では素行が悪いんだよね」と紹介されると、「すごく嫌な奴だな」となってしまいます。
これは物件でも同じことが言えますので、将来のトラブル防止や成約率の向上を考えると先に悪い部分を伝えることは非常にメリットがあるのです。
しかし、不動産オーナー様としては不動産業者がどのように内見の対応を行っているか分からないのが実情です。
私がオススメするのは、物件の注意点や悪い部分から始まり、物件の魅力や良い部分、地域のことなどを記した1枚の紙を用意して現地に置き、「内見時にはまずこちらをお客様に見せてもらえませんか?」と依頼することです。
そのような不動産オーナー様の配慮はお客様にも伝わりますので、成約率の向上にも繋がります。
ご愛読いただきありがとうございました。