マイソクとも呼ばれる「募集図面」ですが、これは不動産業者用流通サイト「レインズ」で最も威力を発揮します。なぜなら、不動産業者がお部屋探しのための情報を集める際に多用されるのが「レインズ」ですが、条件を入力して検索した際、何十件、何百件という数の中から良さそうな物件をピックアップしていきます。
一件ずつ綿密に目を通すのは手間が掛かるので、サッと目を通していってピンと来た物件をピックアップするケースが多く見られますが、その時に省かれてしまったら内見に繋がりません。
また、内見時にお部屋探しをされる方はいくつかの物件の募集図面を渡されますが、そのインパクトによって物件に対する期待値が変わり、内見に至るかどうかに影響します。更に、複数件の内見をすると物件の様子を少しずつ忘れていってしまいますので、募集図面を見て物件のイメージを思い出そうとします。その時、募集図面が魅力的だと内見時の良いイメージが浮かび上がり、最終的に選ばれる可能性が高くなります。
つまり、募集図面は「物件の詳細が分かれば良い」のではなく、「他の募集図面と見比べていかに魅力を感じるか」を念頭に置いて作成する必要があるのです。
では、まずは良くある募集図面がどんなものか見ていきましょう。
よくあるタイプの募集図面ですが、賃料が相場に比べて格段に安い場合を除いて、この図面によって「この物件良さそう!」とはあまり感じないと思います。また、左側の空白が気になり、バランスが悪く感じてしまいます。
バランスは良くなりましたが、やはり写真がないとイメージが湧かないですね。
写真は追加されましたが、ほとんどの募集図面が「横」によっているので、縦だと図面を見る方も大変です。せめて横向きで作成した方が良いと感じます。
横向きのより一般的なタイプの募集図面となりました。しかし、お部屋内の写真がないとイメージが湧かないです。
お部屋内の写真が追加されて、ずいぶん募集図面としては雰囲気が良くなりました。ちなみに、原点に戻ると「1DK」は見れば分かりますし、「賃貸コーポ」大きく書いてあっても何か魅力を感じる訳ではありません。また、「3口コンロ」はキッチンの写真を見れば分かりますし、「室内洗濯機置き場」は検索条件に入れる方が多いため入居者募集サイトに記載すれば問題なく、間取りを見ても判別することができます。
それらを踏まえた上で募集図面を作成するポイントとなるのは、
①良い写真を多く盛り込む
②上記①のために文字の記載欄は少なくする
③全体のバランスを整える
の3つとなります。
私の使用している募集図面の書式は以下のものです。
印象は全く変わると思いますし、もし今までお見せした6件の中で内見に繋がりやすいのはどの物件かと言われれば、多くの方は同じ考えに至ると思います。
今現在でも最初の例のような募集図面が使用されているのは、インターネットが普及する前からの名残です。今では入居者募集サイトを見れば大体の情報が記載されていますが、まだインターネットが普及する前は募集図面に文字で情報を多く盛り込み、FAXや郵送、手渡しなどで情報を伝達することが最も効率的でした。また、デジタルカメラではなくフィルムカメラが主流だったため、写真データを募集図面に取り込むのは今ほど楽ではありませんでした。
現代では物件に関する情報はパソコンやスマートフォンの画面を見れば分かるようになりましたので、大事なことは「人気のカウンターキッチン!」「バストイレ別!」という言葉より、それらが写し出されている”映像”なのです。
映像を伝えるには、写真や動画、パノラマ画像、VRなど、様々な媒体がありますが、私は「写真」が最も訴求力があると考えています。テレビ撮影のような動画であれば写真に勝るかもしれませんが、掛かる手間とコストを考えると現実的ではありません。パノラマ画像やVRは「凄い!」とインパクトはあるものの、それは物件ではなくその技術に対してのものなので、物件そのものの魅力を伝えることかできません。
数多くの物件の中から直観的に「見に行きたい!」と感じていただくためには、募集条件の調整だけでなく、物件が魅力的にアピールできる努力を積み重ねていかなければいけません。
ご愛読いただきありがとうございました。