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用途変更による募集戦略とは?~空室対策を根本から見直す実務的アプローチ~

最新更新日 2026年05月22日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

「空室対策」として様々な取り組みを行っているケースは少なからず目にしますが、実はそれ以前の前提から考え直すことで思わぬ成果に繋がることがあります。

今まで住居として賃貸してきていると、住居としての募集以外は想像もしないケースがほとんどです。
不動産会社も住居以外の賃貸には不慣れなケースも少なくないため、相談してもあまり協力が得られないケースもあります。

しかし、弊社では過去に住居物件を他の用途で募集することにより、相場に比べて高賃料で成約したケース、不人気な間取りの物件が人気物件に変身したケース、ただの空きスペースの賃貸など、様々な成功事例があります。

今回は、それらの経験を通じた空室対策の手法を解説します。

本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「用途変更による募集戦略」
という動画の内容を、文字で整理したものです。

住居専用

冒頭で触れたように、この記事でテーマにしているのは住居専用の物件です。
住居専用の物件のみ保有していると、あまり考える機会がないのが「消費税」です。

消費税の課税

住居専用の賃貸に伴い発生する賃料は非課税ですが、事務所や店舗など事業用の場合は賃料が課税対象になります。

そのため、募集条件は以下のように整理する必要があります。
・賃料:本体+消費税
・敷金:本体ベースか税込ベースか明確化
・更新料・礼金:本体+消費税

この整理が曖昧なまま募集すると、後々トラブルにつながる可能性があります。

契約条件も変わる

用途が変わることで、付随する条件も大きく変化します。

保証会社:事業用プランへ変更
火災保険:事業用保険へ変更
契約内容:原状回復や用途制限の詳細化

そのため、事業用物件の取り扱いにある程度慣れている業者と進めることが重要です。

建築確認(用途変更)の考え方

当初、住居専用として建築された建物は、「住宅」や「共同住宅」として登録されています。
建物全体のうち200㎡以内の用途を変更する場合は手続き不要ですが、200㎡超の場合は原則として用途変更による確認申請が必要となります。
ただし、自治体ごとの運用差がある場合、特殊用途(飲食等)による制限がある場合もありますので、このように大きな区画を用途変更する場合は一級建築士等と相談しながら進めるのが安全です。

では、それらの基礎知識を踏まえて、具体的な用途変更の例を紹介していきます。

SOHO・事務所利用

住居との親和性が高く、最も現実的な選択肢です。

ワンルーム物件で、玄関を開けると室内が丸見えなのに対し、他の1Kと広さは同じにすると賃料が高く決まりづらかったケースがありました。
しかし、事務所併用で募集したところ、短期間で成約しました。

現在は、他住戸より高い賃料設定にできていることに加えて、退去しても比較的早期に成約して安定稼働する結果となりました。

これによるメリットは、
・来客が少ない業種が多い
・夜間の騒音リスクが低い
・土日休みで住人と生活リズムがずれる
ということで、既存入居者とのトラブルが起きにくい点が特徴です。

店舗

事務所ではなく、店舗として募集することも有益な方法となる場合がありますが、テナントの選定が重要になります。
では、親和性の高いものを紹介します。

サロン系

例えば、以下のようなサロンが挙げられます。
・エステ
・整体
・ネイル

実例としては、賃貸併用住宅で1階の一部を賃貸したいという要望がありました。
元々は住居専用で募集していたようですが、立地としては店舗ニーズも充分ありそうと感じました。

そして、住居と店舗、事務所を同時募集したところ、住居での反響はほぼ無かったのですが、サロン利用での問い合わせが多数あり、サロン関係の用途で成約しました。

注意点:設備との相性

しかし、サロンの内容によっては、使用するオイルを排水することで排水詰まりのリスクが生じることがあります。
そのため、「どのような業種か」を必ず事前確認して、必要に応じて契約で制限を設けることが必須です。

レンタルスペース

不特定多数が出入りするのであまり推奨する用途ではありませんが、レンタルスペース目的での賃貸で安定稼働しているケースもあります。

エレベーター無の5階建てで、4階までは店舗仕様でしたが、5階だけ住居になっていました。
しかし、立地も繁華街なので住居としては不利な条件でした。

そこで、この部屋も店舗利用可として募集したところ、レンタルスペースとしての利用目的で契約することができ、現在も安定稼働している成功事例です。

倉庫

住居や事務所として貸すにはリフォームが必要、店舗のように多数の出入りが生じる用途では貸したくない、といった状況に最適なのが「倉庫」です。
例えば、資材置場や在庫保管場所、倉庫兼本店所在地といった用途での賃貸です。

キッチンやトイレといった水回りの設備がなく、ただの物置になっていた管理人室がありました。
そこで、倉庫としての用途に加えて倉庫兼事務所として募集を行ったところ、ちょうど倉庫兼法人の所在地として登記したい事業者から問い合わせがあり、無事に契約に至りトラブルなく現在も稼働中です。

注意点:保管物の制限

倉庫用途で賃貸する場合は、最も重要なのは保管する物の「中身」です。

例えば、可燃物や危険物、強い臭気物といった物件に悪影響を及ぼすものや危険性のあるものを保管する目的の場合は注意が必要です。
反対に、衣類や書類、カタログといった物であれば問題ないケースがほとんどです。

見落としがちなリスク

しかし、倉庫とする場合に注意が必要なのが「湿気」です。
湿気が生じやすい部屋を賃貸した後、その旨を告げずに保管したものがカビで被害にあった場合、損害賠償の対象となる可能性があります。

このリスクを踏まえ、事前確認と契約条項の整備が必要です。
換気や脱湿設備の新設が必要な場合もありますが、いずれにしても湿気によりカビが生えて被害が発生しても免責する条文または特約を設けておくのが安全です。

他用途で募集する際の重要チェックポイント

今回は、住居専用の物件を他用途で募集する一例を紹介しました。
場合によっては、すでに事務所や店舗として募集している物件に関しても流用できる知識もあったと思います。

しかし、安易に「何でもOK」にするとトラブルになります。
トラブルを未然防止するために、以下は必ず確認すべき項目です。

①不特定多数の出入り

不特定多数の出入りが多い業種には気を付けましょう
他テナントとのトラブルやセキュリティ低下により被害が発生する可能性があります。

②オートロックとの相性

外部者を入れたくない建物や分譲マンションでは、オートロックがあるにも関わらず不特定多数の出入りや特定されていても多数の出入りが生じる場合は問題が生じる可能性があります。
特に分譲マンションでは規約で制限されている可能性がありますので注意が必要です。

③音の問題

音楽関係や運動系(足音が響くもの)、重機使用等があると、他の入居者とトラブルが生じる可能性に加えて、空いたときの募集でも告知事項になってしまう可能性があり、悪影響を及ぼすリスクがあります。

④インボイス制度

オーナーが免税事業者で、テナントが本則課税業者の場合、「消費税分をどうする?」という問題が生じます。
状況によってはオーナーも課税業者になってインボイスを取得する方法もありますが、免税業者のままで問題ない場合は課税業者に変更するメリットがないことがほとんどです。
募集の段階からのその旨を告知しておき、契約前には改めて事前合意を取り、重要事項説明書や賃貸借契約書でそれを明示しておくことが重要となります。

⑤用途地域

例えば、第一種低層住居専用地域の場合は、出店できる店舗に制限があります。
また、契約後に近隣からクレームが来る場合や行政指導が入る恐れもありますので、店舗系で募集を検討する場合は必ず事前確認を行う必要があります。

おわりに

今回お伝えした内容は、「物件の特性に合った使い方を見つけること」です。

物件ごとにポテンシャルは異なりますので、
・立地
・間取り
・建物構造

を踏まえ、「この物件なら何に使えるか」という視点で見直していただくことで、思いがけない効果が得られる場合があります。

用途変更は、収益改善にも直結する非常に有効な手法なので、ご所有物件で検討してみていただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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