民法の中で最も大家さんや賃貸管理会社が知っておきたい分野が「借地借家法」です。
特に、その中の「借家」に関する規定は賃貸経営に直結する法律です。
普通借家(普通建物賃貸借契約)と定期借家(定期建物賃貸借契約)の二つを見比べることで、全体像が非常に理解しやすくなります。
賃貸不動産の仲介や管理に携わる立場としても、改めて整理しておきたい重要な内容を解説します。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している
「借地借家法~借家~」
という動画の内容を、文字で整理したものです。
借地借家法の位置づけ
借地借家法は、民法に定められている賃貸借の規定のうち、特に「借地」および「借家」に関する部分を強化・補完した法律です。
その最大の特徴は、借主を強く保護する点にあります。
この法律は戦前に制定されたものですが、当時は現在のように賃貸住宅が供給されている状況ではありませんでした。
そのため、需要と供給のバランスから大家さん側の強い立場がそのまま通ってしまうケースも多く、社会的に望ましくないと考えられていました。
そのような背景から、
・自らの住まいとして建物を使用する人
・そこで事業を営み、生活の基盤とする人
こうした立場の人々を守る目的で、借地借家法は制定されました。
普通借家契約と定期借家契約の成立経緯
もともと、日本の賃貸借契約は普通借家契約が原則でした。
現在の定期借家契約に近い考え方の契約形態は存在していましたが、解釈が分かれるケースが多く、実務上の混乱が生じていました。
こうした問題を解消するため、2000年4月1日に定期建物賃貸借契約(定期借家契約)に関する法律が施行されました。
これにより、現在の借地借家法のうち「借家」に関する法律は、普通借家契約と定期借家契約という二つの制度を軸とした形に整理されています。
契約期間の違い
普通借家契約では、契約期間は1年以上とする必要があります。
もし、11か月など1年未満の期間を定めた場合、その契約は期間の定めのない契約となってしまい、無期限の契約となってしまう点には注意が必要です。
一方、定期借家契約では、契約期間の制限はありません。
極端な例では、1日だけの契約も可能であり、11か月や半年といった短期契約も有効です。この点は、定期借家契約の大きな特徴の一つです。
契約成立方法の違い
普通借家契約は、一般的な賃貸借と同様に、口約束でも成立する諾成契約です。
一方、定期借家契約は、契約期間満了時に必ず明け渡しが必要となるため、借主にとって非常に重要な影響があります。
そのため、
・書面(または電子契約)による契約
・契約前の事前説明
が法律上、必須とされています。
定期借家契約であること、期間満了までに明け渡す必要があることを、契約前に説明しなければなりません。
この要件を満たしていない場合、その契約は定期借家契約として成立せず、普通借家契約として扱われるおそれがあります。
契約期間満了後の扱い
普通借家契約には「更新」があります。
更新を繰り返しても、契約自体は同一のものとして継続し、10年後、20年後も最初の契約が続いているという考え方になります。
更新の方法には、
・合意更新:当事者の合意により更新される
・自動更新:当事者の合意なく自動的に更新される
があります。
しかし、更新手続きを行わないまま借主が住み続け、大家さん側も異議を述べなかった場合、法定更新となり、期間の定めのない無期限の契約へ移行します。
一方、定期借家契約には、更新という概念が存在しません。
契約期間が満了すれば、その契約関係は終了します。その後も住み続ける場合は、当事者双方の合意のもと、新たな契約を締結する必要があります。これを実務上「再契約」と呼びます。
契約終了と通知のルール
普通借家契約を大家さん側から終了させるには、基本的に契約満了をもって更新せずに退去を要請する更新拒絶が必要です。
その際には、正当事由という非常に高いハードルが課されます。
正当事由は実務上なかなか認められず、これが普通借家契約を終了させにくい最大の理由となっています。正当事由については別の動画・記事で解説します。
一方、定期借家契約では、正当事由は不要で、「終了通知」を行うことで、契約期間満了時に明け渡しを求めることができます。
通知期間
更新拒絶・終了通知のいずれも、契約満了の6か月前から1年前までに行う必要があります。
なお、定期借家契約の場合、契約満了の6か月前までに終了通知を出していなかったら、明け渡しを求められなくなってしまうのでしょうか?
契約満了後に終了通知を出して、その6か月後に明け渡しを認めた裁判例があります。これを類推すると、6か月前までに出していなかった場合でも、終了通知を出してから6か月後に明け渡しを主張できます。
契約違反による解除
なお、家賃滞納、無断転貸、無断譲渡など、契約違反がある場合には、契約解除を主張できる可能性があります。ただし、その違反が解除に値するかどうかは、個別具体的に判断され、その際に大きな要素となるのが「信頼関係の破壊」です。
家賃滞納が発生した場合の流れはこちらの記事で解説しています。
「家賃の滞納から強制執行の流れ」
借主側からの中途解約と特約
賃貸借契約では、普通借家・定期借家いずれの場合も原則として借主側からの中途解約はできません。
1年契約であれば1年、2年契約であれば2年は借り続ける必要があります。
しかし、1か月前や2か月前の予告で解約できるのでは、と感じる方は多いと思います。
実は、これは借主に有利な特約として定められているのです。
おわりに
今回は、借地借家法のうち「借家」について、普通借家契約と定期借家契約を比較しながら解説しました。
制度の違いを理解すると、より「定期借家契約を中心に賃貸経営した方が良いのでは?」と感じる大家さんも多いと思います。
そんな方のために定期借家契約について解説した動画・記事はこちらとなります。
「有料級!定期借家契約のまとめ」
興味がありましたらぜひご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。


