前回解説した「請負」と並び、委任・準委任はいずれも賃貸経営において関わる機会の多い契約形態です。
今回は、この委任と準委任の違いを軸に、実務でどのように使われているのかを整理していきます。
本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している「委任と準委任」という動画の内容を、文字で整理したものです。
委任と準委任の最大の違い
委任と準委任の違いは、非常にシンプルです。
法律行為を行うかどうか、これが最大の判断基準になります。
法律行為を行う事務 → 委任契約
法律行為以外の事務 → 準委任契約
それ以外の点については、両者は非常によく似ており、基本的な考え方は共通しています。
委任の代表例:弁護士への代理依頼(訴訟)
委任契約の代表的な例として、訴訟を行う際の弁護士への依頼があります。
裁判における代理行為は法律行為に該当するため、原則として弁護士以外が代理人になることはできません。
では、この弁護士への代理委任を一つの例として、委任と準委任に共通する民法上の定めと、委任の実務上の取り扱いについて解説します。準委任の実務上の取り扱いは後半で解説します。
原則「無償」だが、実際には「有償」が多数
民法上、委任や準委任による報酬は、原則として無償とされています。
しかし、実際に弁護士へ訴訟を依頼して無償で対応してもらうケースは、ほぼ存在しません。
そのため、実務上はほとんどすべての委任・準委任による業務は有償で行われています。
有償の場合は後払いが原則だが、実際には着手金がある
報酬の支払いについても、民法上は「委任が終了した後に支払う」のが原則です。
しかし、実務では契約時に着手金を支払い、業務終了後に残金や実費を支払う、というケースがほとんどです。
中には、着手金を支払うことができない依頼者がいたとき、勝訴の確立が高いと見込んだ場合は、着手金を定額または無にする代わりに、勝訴後の成果に応じて通常より多めの割合の成功報酬を支払うというケースもあります。
委任契約は双方から解除できる
前回解説した請負契約では、原則として注文者(依頼者)側からは解除できるものの、請負者側からは解除できないとされています。
これに対し、委任契約は当事者双方から解除が可能です。
例えば、弁護士が「今後この依頼者との関係を続けることが難しい」と判断した場合、解除を申し出ることができます。
もっとも、解除が常に無条件で許されるわけではありません。
すでに業務が進んでいる段階で解除された場合には、解除する時点で発生した費用や報酬は支払う必要があります。
また、相手方に不利なタイミングで解除し、その結果として損害が生じた場合には、その損害を賠償する必要があります。
準委任の代表例:管理委託契約、業務委託契約
賃貸経営において、訴訟にまで発展するトラブルはそれほど多くありません。
そのため、大家さんが日常的に関わるのは、委任契約よりも準委任契約であるケースが圧倒的に多いと言えます。
準委任の例①:管理委託契約
管理会社に物件管理を任せる場合、名称はさまざまですが、「管理業務委託契約」を締結します。これは、法律上は準委任契約に該当します。
管理業務は法律と無関係とは言えないものの、民法上の「法律行為」そのものではないため、委任ではなく準委任とされています。
準委任の例②:業務委託契約
不動産業界では、正社員ではなく、フルコミッション(固定給がなく、売上に応じて報酬が支給される完全歩合制)で働く営業マンが少なからずいます。
(私も、弊社を設立する直前まではこのような形態でした)
このような働き方をする場合は、業務委託契約を締結し、売上に対して何割という業務委託報酬を受け取ります。これも準委任契約に該当します。
管理委託契約には「請負」が混在することもある
管理委託契約の中には、実は準委任と請負が混在しているケースがあります。
例えば、家賃集金やクレーム対応等は準委任になりますが、共用部の清掃や修繕を管理業務の一環として行う場合は、その業務は「請負」に該当します。
契約書の名称だけを見ると一つの契約に見えますが、内容ごとに性質が異なる場合があるのです。とはいえ、このことを知らなくても実務上は問題ありません。
さいごに
委任と準委任は、賃貸実務では厳密な線引きを意識しなくても問題になることは少ないですが、専門家と会話する際には知っておいた方が良い知識ではありますので、頭の片隅に入れておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


