今回は、保証と連帯保証について、後編の解説となります。
前編のブログ記事はこちらとなります。
また、本記事は、当社YouTubeチャンネルで公開している「保証と連帯保証②」という動画の内容を、文字で整理したものです。
まず、保証人と連帯保証人の最も大きな違いについて解説しますが、それらを知るには基本知識が必要になります。
連帯保証には催告の抗弁権&検索の抗弁権がない
まず、催告の抗弁権、検索の抗弁権とは、どのようなものなのでしょうか。
基礎知識①:催告の抗弁権
例えば、連帯保証人に対して、「ご本人が家賃を払ってくれないので、代わりに払ってもらえないでしょうか?」と主張をした時に、連帯保証人が「本人にもっとしつこく催告してくれ」と言える権利を「催告の抗弁権」といいます。
つまり、抗弁権というのは「反抗する権利があるかどうか」というイメージになります。
基礎知識②:検索の抗弁権
連帯保証人に対して、上記と同様に主張をした時に、「いやいや、本人は絶対お金を持っているはずなので、本当に払えない状態なのかどうか、ちゃんと調べてください。」と言える権利を「検索の抗弁権」といいます。
保証と連帯保証の違いには催告&検索の抗弁権がない
保証人の場合はそれらの抗弁権がありますが、連帯保証人にはそれらの抗弁権がありません。
ここが保証と連帯保証の大きな違いです。
普通の保証人にしてしまうと、これを言い続けられてしまうリスクと、どこまで催告・検索を行えばよいか不明確な部分があるため、実務上は「連帯保証」しか使われません。
しかし、実務上は「保証人」と呼ぶ場合でも、実際には「連帯保証人」を指す言葉であることは理解しておいてください。
代位弁済(求償権の取得)
例えば、家賃保証会社に加入しており、本人が家賃を払ってくれない場合は、家賃保証会社さんに「代わりに払ってください」という申請を行います。これを「代位弁済請求」といいます。
そうすると、保証会社によっては、申請から2〜3日で家賃を支払ってくれる会社、当月10日までに申請することで当月末日に支払ってくれる会社と、支払い条件は様々です。
大家さん側からみれば、代位弁済してくれることで家賃滞納は一件落着ですが、保証会社は代わりに支払った分の回収を行います。
この代わりに払った分(立て替えたお金)を払ってもらう権利のことを「求償権」といいます。
ちなみに、保証会社を利用する場合は、初回の賃貸借契約時に、大家さんと保証会社、賃借人と保証会社は契約書を締結します。
書面のタイトルは様々ですが、契約条文を確認すると、大体冒頭の方に「連帯保証契約」といった文言が書いてあり、連帯保証であることが分かります。
極度額設定(個人が連帯保証)
2020年4月1日に施行された民法の大改正では、保証に関しても重大な要件が定められました。
その中の代表的なものが「極度額設定」です。
それ以前の保証というのは「根保証契約」とも呼ばれていて、「あなたは保証人になったのだから、何百万円でも何千万円でも、全部本人の代わりに払いなさい」と主張することができました。
しかし、保証人としては、そんなに大きな責任を問われるとは思わず、軽い気持ちで署名捺印をしている方が非常に多かったのです。
そうなると、「そんなに多額の請求をされるリスクがあるのだったら、そもそも連帯保証人にはならなかった」という気持ちが当然起こります。
このようなトラブルを抑止するため、保証人は「いくらまでは保証します」という、「限度額=極度額」を設定しなければ、その保証契約は無効になる、ということが定められました。
妥当な極度額と記載方法
ただ、極度額をいくらに設定するかの目安は公表されず、施行前には各々が決める必要がありました。
私自身も、当時は弁護士や同業者と意見交換をしながら決めていたのをよく覚えています。
また、記載方法についても注意が必要です。記載方法のパターンは以下のものがあります。
①金額記載
最も確実なのは、「100万円」「200万円」等と金額を定めてしまう方式です。
しかし、月額家賃5万円と50万円のお部屋で、極度額を100万円と定めた場合、5万円の物件なら20か月分に相当しますが、50万円の物件であれば2か月分しか保証されず、心もとないです。
そのため、物件毎に極度額を変更する必要があります。
システムを利用している場合は賃料に応じて自動反映されるようにできると思いますが、もし個別に契約書類を作成している場合、手入力で金額を間違えると大問題に発展するリスクがありますので、次のパターンを採用するケースが多いです。
②〇か月分という記載
実務上、最も多いのが、「何か月分」という記載方式です。
これは敷金や礼金、更新料等でも同様の記載方法を行うため、馴染みのある方法でした。
また、当時弁護士や同業者にヒアリングを行った結果、一番多かったのは「24か月分」という意見でした。実際に、家賃保証会社の保証限度額も24か月が多く、改正後しばらくしてから他社の保証契約を見ると24か月というケースが最も多い印象でした。
しかし、この方式では注意も必要です。
更新料(普通借家)や再契約料(定期借家)のように「新賃料に対して24か月分」と書いてしまうと、無効になる可能性があります。
なぜなら、賃料が将来上がった時には極度額も一緒に上がってしまうことになります。そうなると、「契約締結時点で極度額が確定できていない」という解釈もでき、そこを指摘する弁護士もいます。
そのため、この方式の場合は、「契約締結時点の24か月分」という書き方であれば、問題ないと解されています。
資力等の情報提供義務(個人が連帯保証&事業用)
個人が連帯保証をする場合で、かつ、その賃貸借契約が事業用の場合について、賃借人の資力を連帯保証人に開示しなければいけない、ということが定められました。
例えば、中小企業との法人契約では、代表者が連帯保証人になるケースが非常に多いですが、その代表者本人だけでは心配なので、他の第三者の連帯保証人を求めるケースも考えられます。
その場合、例えば「売上が100億円ある」と聞けば一見安心できますが、借金が200億円ある、毎年の収支は20億円の赤字、といった場合、それを聞いていれば連帯保証人にはならなかった、という人も多いと思います。
特に事業用の賃貸借では、賃料や退去時に掛かる諸費用(内装の解体・撤去費用等)が高額になる傾向があり、保証人に発生し得る金銭的負担が非常に重くなる可能性があります。
したがって、その法人がどういった財務内容の会社なのかということを、連帯保証人になっていただく予定の方へきちんと情報提供した上で、その内容を理解したうえで保証契約を結んでください、というのがこの制度の趣旨なのです。
なお、提供すべき情報は3つあります。
1. 財産や収支の状況
※例:貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書の内容
2. 賃料以外に負担している債務の有無(有の場合はその額や支払い状況)
※例:借金等の有無、残債、返済状況
3. 賃料の担保として、他に提供している、またはしようとしているものの有無(有の場合はその内容)
※例:敷金または保証金の額
定期借家契約の場合の注意点
また、前編で解説しましたが、主たる債務(賃貸借契約)が終了した時点で、保証契約も一緒に終了します。
そうすると、実務上大きな問題となるのが定期借家契約です。
普通借家契約は、初回の契約を「更新」で延長していく概念なので、最初に結んだ契約ずっと続いていくことになり、保証契約は継続します。
その反面、定期借家契約は、例えば2年間という契約を結んだ場合、2年後に契約が終了した時点で、その契約自体がなくなってしまいます。そして、実務上は、契約満了の翌日を始期として新しい定期借家契約を結ぶ(再契約)ことによって、入居を継続させていきます。
そうすると、最初の契約が終わった時点で保証契約も一緒になくなるため、再契約の度に保証契約を結び直していく必要があります。
さいごに
特に連帯保証は、賃貸の実務において非常に多く関わってくるものなので、前編と後編に分けて少し細かく解説しました。
安心して賃貸経営を行うために非常に重要な事項になりますので、ぜひ理解を深めていただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。


