賃貸トラブルで最も重要な「具体的な説明と小まめな報告」とは?

最新更新日 2023年12月22日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

賃貸経営を行っていると様々な賃貸トラブルが発生します。
もちろん未然防止することが理想的ですが、それでも発生してしまったトラブルに対してどのように対応するかによって、揉めるかどうか、その後の入居者との関係性の良し悪しなど、結果が大きく変わってきます

賃貸トラブルを対応する上では大事なことは色々とありますが、その中でも私が最も重要と考えているのは「具体的な説明と小まめな報告」です。

賃貸トラブルの対応で炎上するよくあるパターン

賃貸トラブルが発生し、早急に一次対応を行うのは基本中の基本です。
例えば、漏水が発生したのであれば、給水管なら元栓を閉める、排水管であれば排水をストップしてもらう、雨漏りであれば漏ってきた水を一か所に集めるように養生するなど、状況によって臨機応変に対応します。

私の経験上では、早急に一次対応を行って揉めることはあまりありません。
すぐに解決すればそれで良いですが、状況によっては修繕工事に数日から数週間など、時間が掛かってしまうケースもあります。
賃貸トラブルが炎上してしまうのは、そういった「解決までに時間が掛かるケース」での対応方法に原因があるパターンが多いです。

その代表例が、「抽象的な説明」「報告不足」です。

抽象的な説明は炎上の元

賃貸トラブル発生時に抽象的な説明を行ってしまうと、高確率で「認識の相違」が発生してしまいます。
例えば、「なるべく早く」という言葉はその代表例です。

あなたにとっての「なるべく早く」はどのくらいでしょうか?
状況や人によって、数秒、数分、数時間、翌日、数日と様々ですが、賃貸トラブルの当事者は「なるべく早く」という言葉を聞くと、かなり早いスピード感をイメージします。

賃貸トラブルを対応する担当者は、耳障りの悪い言葉を避けるため、「なるべく早く対応します」といった抽象的な言葉を発してしまうことが多いです。
そして、担当者は数日をイメージしていたのに、翌日に「どうなってるんだ!こっちは困ってるんだ!」と炎上して連絡が来てしまいます。

人はなぜ待っているか分からないとイライラする

絶対に覚えていただきたいことなのですが、人は「待つこと」よりも「何故待っているかが分からないこと」に大きなストレスを感じます

例えば、「渋滞」で車が全然進まないとイライラしますよね?
しかし、その原因がトラックと乗用車の激しい衝突事故が原因だったと知ったら、「乗っていた人は大丈夫かな・・・」とストレスの多くは心配に変わります。

メールを送って3日間返信がなく「ったく、返事くらいよこせよ・・・」とイライラしていたのに、実はその相手が交通事故で入院していたと知ったら、さっきまでのイライラはどうなるでしょうか?

これは反対に、自分の気持ちを落ち着かせるためにも大事なことです。
家賃滞納が発生すると、「家賃ぐらい払えよ!」という苛立った気持ちで督促する人が多く、結果的に督促から喧嘩に発展し、調停や裁判に至るケースもあります。

しかし、好き好んで家賃滞納する人は滅多にいません。
忙しくてうっかりしてしまったのか、病気になって払えなかったのか、身内の借金を肩代わりして大変な状況になってしまったのかなど、何か事情があったのかもしれないと考えるだけで、心は落ち着きます。

つまり、「理由や原因を知ること」はお互いにとって大事なことなのです。
(嫌がらせが原因だったら知らない方が良いかもしれませんが…)

具体的な説明と小まめな報告が重要

では、賃貸トラブルが発生し、トラブル解消までに時間が掛かってしまう場合は、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか?
それは、「具体的な説明」「小まめな報告」です。

具体的な説明とは?

例えば、「なるべく早く」ではなく、
「1時間以内に訪問します」
「本日中に工事業者から連絡を入れさせるようにします」
「明日までには今後の方針について検討して報告します」

といった具合に、いつまでに次のアクションを行うか具体的に説明します。

また、「この漏水を直すために業者へ連絡しましたので、3日後に工事を行います」ではなく、

「今回は上階のお湯の給湯管から漏水しているようで、排水管ではなかったのでひとまずはご安心ください。
お付き合いしている水道業者や工事業者を何社も当たってみたのですが、すぐに訪問できる業者が見当たらず、必要な資材を仕入れて何とか最短で職人が訪問できるのが3日後になってしまいました。
何とか3日後に修理して漏水を止められるように努めますので、ご迷惑をお掛けしてしまっており大変申し訳ございません」

と、「原因」や「実際に起こしたアクション」、「事情」などを具体的に説明することで、入居者のストレスは大幅に軽減されます。

小まめな報告とは?

例えば、漏水トラブルが発生して、以下のような対応を行ったとします。

■初日:漏水現場を訪問し、工事業者に連絡
■翌日:工事業者から見積もりが到着し、オーナーに確認して発注
■2日後:工事業者が職人を手配するもなかなか見つからず
■3日後:職人が見つかり、職人が問屋に資材を注文
■4日後:土曜のため問屋が休み
■5日後:日曜のため問屋が休み
■6日後:問屋から資材が発送
■7日後:資材が到着したので、入居者に工事日の連絡

上記の対応自体は悪いと思いませんが、7日間も入居者に報告を入れていなかった場合は「どうなってるんだ!」と、どこかでクレームが来る可能性が高いです。
担当者としては「こっちも急いで手配しているつもりなのに、工事業者の都合もあるんだから仕方ないだろ!」という気持ちかもしれませんが、前述した通り「なぜ1週間も待たされているのか」が分からないからストレスが募ってしまったのです。

以下のように入居者に報告を行っていれば、そのようなクレームが来る可能性は低かったでしょう。

■初日:「明日までに見積もりを取得し、オーナー様の了解を得ますので、明日にまた状況を報告させてください」
■翌日:「オーナー様の了承を得ましたので、工事業者に発注しました。修理してもらう職人が手配でき次第報告させていただきます。」
■2日後:「申し訳ありません。職人がなかなか捕まらず、何とか急いで工事してもらえるよう依頼していますので、明日にまた状況を報告します」
■3日後:「何とか職人が手配できたので、これから資材を問屋さんに注文するのですが、土日は問屋さんが休みで資材が手に入らないので、週明けにまた報告します」
■6日後:「明日に資材が届く予定なので、明日に工事日の調整でまた連絡を入れさせていただきます」
■7日後:「資材が到着しましたので、工事日の調整なのですが・・・」

上記の報告は1回あたり1分も掛かりませんので、合計数分の報告時間を割くかどうかで、入居者の心象はまるで異なります
報告は少なければ問題になりますが、多くても問題になることはありません。むしろ「丁寧にありがとうございます」と感謝や入居満足度にも繋がります。

ちなみに、上記の対応はベストではありません
私であれば、初日に現場を訪問した際に工事業者へ連絡し、「(状況を説明し)施工するにはざっくりで構わないので、金額はいくらぐらいですか?」とヒアリングし、
家主には「(状況を説明し)工事業者によるとざっくり〇万円ぐらいで直せるようで、工事の状況によっては多少前後する可能性がありますが、修理を依頼してもよろしいでしょうか?」
と、現場で全て手配を行います。ただし、すぐに家主が判断できる金額でない場合は、少しその場を離れた方が無難です。

そうすれば、土日を挟まず2~3日で対応が完了できた可能性があります。

まとめ

今回の内容は「当たり前じゃない?」と感じる方も多いと思いますが、意外と賃貸トラブルの対応でその当たり前が出来ていないケースが多々あります。

また、具体的な説明では、以下の「5W1H」を意識すると分かりやすいです。

・When:いつ
・Where:どこで
・Who:だれが
・What:何を
・Why:なぜ
・How:どのように

そして、定期的に状況報告をすることで、入居者としては安心感が生まれ、状況を理解することでストレスが軽減され、かえって入居者との関係性が良好になるきっかけにもなっていきます。

何か賃貸トラブルの対応があった際、面倒かもしれませんが、担当者に「1日に1回は入居者さんに報告を入れるようにしてくれませんか?」と依頼することも検討しましょう。
ご愛読いただきありがとうございました。

PREV
NEXT