無事に空室が埋まると「満室になったので一安心」と肩をなでおろす不動産オーナー様が多いと思います。
しかし、仮に全く同じマンションがあったとしても、家主Aと家主Bでは「手取り額(利益)」が全く異なる可能性があります。
その大きな要因となるのが「支出」です。例えば「エレベーターの保守契約」だけで月額約7万円安かったとしたら、物件によっては一部屋分の賃料に該当します。
ということは、仮に1部屋空室になったとしても、以前の満室時と同じ手残りになることもあります。これがエレベーターではなく、様々な支出で削減することができれば、それは大きな結果となって手残りに影響します。
収支改善には、文字通り「収入を増やす」か「支出を減らす」の2種類しかありません。
前回は「収入を増やす」に注目してこちらの記事を紹介しました。
今回は「支出削減」の中でも最も取り掛かりやすい「保守管理・保守点検」に注目してお伝えしたいと思います。
保守管理・保守点検の種類
保守管理契約や保守点検などには、マンションで必要なものとテナントビルで必要なものが多少異なりますが、代表的な項目を紹介します。
ただ、どのマンションも全てを実施しなければいけない訳ではなく、建物の規模や用途によって点検の要否は変わります。
また、中には法律や条例によって実施しなければいけないものもありますが、特に法的な強制力はなく任意のものもあります。
①エレベーターの保守管理・保守点検
エレベーター(昇降機)には法令点検が義務付けられていますので、「定期検査報告」が必要となります。また、日常的にトラブルが発生した際の対応や普段の点検には保守管理契約が必要となります。
②消防設備等点検
いわゆる「消防点検」のことです。
③防火対象物点検
消防点検に似たような点検ではありますが、こちらでは管理体制や避難訓練といったソフト面も点検対象です。
④給排水設備点検
給水に伴う「増圧ポンプ」や湧水などの「汲み上げポンプ」の点検です。
「受水槽・高架水槽(タンク)」があればタンク内の清掃や水質検査が義務の場合がありますが、義務ではなくても衛生的に実施することが推奨されています。
⑤建築設備定期検査
共用部分の非常用照明器具や避難誘導灯などの点検です。
⑥特定建築物定期調査
建物全体の老朽化や共用設備の不備などの点検です。
⑦機械式駐車場の保守管理・保守点検
機械式駐車場や車用のエレベーターが付いている場合はその設備の保守管理・点検です。
⑧電気保安点検
キュービクルが付いている場合はその点検です。
また、上記のような点検ではありませんが、ランニングコストとして掛かるものとして「日常清掃・定期清掃」などがあります。
これだけ費用の掛かる点検が色々あると、賃貸経営が嫌になりますよね。
保守管理費用や点検費用を安くするには?
大事なことは、
①本当にその点検は必要なのか調べる
②法律や条例によって強制されているもの→なるべくコストを下げる
③強制されていないもの→未実施or自身で行うor賃貸管理会社にやってもらう
と、選別していくことです。
本当にその点検は必要なのか調べる
例えば、「消防用設備等点検」は小規模なマンションなどで必要がない場合であっても実施しているケースが見受けられます。
反対に、実施しなければいけないのに実施していないケースもあります。
さらに、「機械式駐車場の保守点検」は法定点検ではありませんが、万が一の事故を防ぐために実施しなければいけない項目なので、建物毎に適切な判断をしていく必要があります。
法令点検のコストを下げる
では、法令や条例で実施が必須な場合、費用を下げるためには基本的な視点が2つあります。
ちなみに、エレベーターは少し特殊なのでこちらの記事で詳しく解説しています。
①業者を変えて安くできないか?
業者によって金額は異なりますので、安く実施してくれる業者を探します。
ただ、安くても品質が悪い業者は避けましょう。賃貸管理会社から紹介された業者の場合は紹介料が加算されている可能性があるので相見積もりを推奨します。
②抱き合わせ・セットで安くできないか?
例えば、「消防用設備等点検」と「防火対象物点検」は同じ業者で対応していることが多いです。
「両方とも御社で発注したいので、安くしてくれませんか?」と相談すれば割引してもらえる可能性があります。
また、ご自身で複数棟所有している場合や、知人の家主がいれば「複数棟まとめて御社に依頼するので、割引してもらえませんか?」と相談することも可能です。
テナントビルの場合は「防火対象物点検」をテナント毎に手配している場合がありますので、全テナントと共同で発注することで、18万円から3万円に減額できた事例もあります。
実施しない、または自ら実施する
例えば、「消防用設備等点検」が必要のない小規模マンションの場合、いくつかの選択肢が挙げられます。
①実施しない
②毎年ではなく、数年に1回に頻度を減らす
③必要な点検だけ自身で行う
④必要な点検だけ管理会社に実施してもらう
自身で行う場合は「消火器」だけ点検し、入退去の度に室内の火災報知器や避難器具のチェックを行えば十分な場合があります。
事例の紹介
あるテナントビルでは、「定期清掃」「給水設備点検」「消防設備等点検」「防火対象物点検」「駐車装置保守点検」「エレベーター保守点検」「24時間機械監視」の7つを見直し、年間82万円(月間約6.8万円)の支出を削減できました。
あるマンションでは、エレベーターの保守管理会社と契約形態を切り替えて年間81.84万円の支出を削減できました。
固定費は見直すときだけ手間を掛ければそれ以降ずっと削減した分だけの利益を享受し続けられます。
月額1万円でも、年間で12万円、10年間で120万円です。
安かろう悪かろうとなってはいけませんが、一つずつ見直していくことで将来大きな効果となって賃貸経営を助けてくれます。
ご愛読いただきありがとうございました。